99年3月19日
(財)岐阜県産業経済研究センター
99年1〜3月期実績
99年4〜6月期見通し
概況:来期への期待感高まる景況マインド
- 年明け1−3月期の岐阜県景況は、昨年10―12月期の大幅な改善後ほぼ同水準を維持した。景気が[悪化]するとみる企業が徐々に減少するなど、景気がこれ以上悪化するものではないというコンセンサスが強まっている。業種別には、製造業で前期より改善、非製造業では建設業などで悪化した。
- 先行き4−6月期に対する景況感は製造業、非製造業ともに再度大幅改善している。生産量、受注についても大幅な回復が期待されている。この流れから判断すれば、昨年10―12月期に大幅な改善を示した景況感が引続き維持されており、1−3月期はその過程での踊り場的な状況であったといえよう。
- 売上高は1―3月期に前期と比べ悪化したものの、4−6月期には3年振りにプラスに転じる見込み。
- 資金繰り、借入難易度ともに依然厳しいが、資金繰りの改善傾向が鮮明。
- 設備投資は冷え込んだ状態が続いている。先行き雇用[不足]とみる企業が製造業でついにゼロとなり、雇用環境は製造業で厳しい。
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I.景況:期待感高まる景気回復
- 99年1−3月期の岐阜県景況DIは、マイナス56.2と98年10−12月期のマイナス56.9に比べて小幅改善に止まった。 また、今回1−3月期の実績マイナス56.2は、昨年10−12月期時点での同期見通しマイナス43.5に比べると景気に対する見方は弱まった姿となり、期待ほどには回復が進まなかったことを示唆してる。しかし、基調的には、前回98年10−12月期のDIが昨年秋口にかけて示していた最悪の景況感から大幅改善した流れを継承しており、さらなる景気底割れは回避された姿となっている。
- 景気が[好転]するとした企業の割合は、昨年10−12月期の10.5から1−3月期には4.2に減少した。しかし、[悪化]するとした企業の割合も、10−12月期の67.4から本年1−3月期には60.4に減少、2四半期連続の減少傾向にある。98年の4−6月期から7−9月期にかけて[悪化]と答える企業の割合が8割を超えていたことからすると、景気の現状は急速な好転とみるには早いが、着実に回復への底固めを示している姿が見られる。
- 業種別に見ると、99年1−3月期の製造業DIは、マイナス58.7と98年10−12月期のマイナス64.4から改善している。一方、非製造業DIはマイナス51.5で10−12月期のマイナス40.8からは悪化しており、製造業とは異なる動きとなった。これは非製造業で[好転]したと答えたものが昨年10−12月期には14.8であったものが、1−3月期には3.0まで減少し、景況[変わらず]とみた企業が増えたことによるものである。これは公共工事の発注が昨年末の見通しより遅れていることなどを反映しているとみられる。
- 先行き4−6月期については、景況DIはマイナス24.5と1−3月期に比べ31.7ポイントの大幅改善を見込んでいる。これは景気が[好転]するとみる企業も増えているが、それ以上に[悪化]すると答える企業が1−3月期に比べて22.6ポイントと大きく減少していることによるものである。
- 業種別には、製造業で4−6月期見通しはマイナス31.7で現時点より27ポイント改善、非製造業ではマイナス10.0で現時点より41.5ポイントの大幅改善となっている。製造業、非製造業ともに[悪化]するとみる企業の減少が大きいが、非製造業においては同時に[好転]するとみている企業の割合が増加している。
- 今回1−3月期の景況DI実績が、10−12月時点での見通しを下回ったように、大幅改善を示している4−6月期見通しが実績では下方修正される可能性はある。現在の景気認識が回復期待感に引きずられている側面が見うけられるためである。この状況は、後述のように製造業では1−3月期の生産・受注といった実績が、前期よりも悪化しているにもかかわらず、景況感というマインドの面では前期より改善という結果が出ていることなどに象徴されている。このような回復期待感に支えられている状況でも、景気が[悪化]すると答える企業の割合が着実に減少し、景気がこれ以上悪化するものではないという形での景気認識はコンセンサスとなり始めている。この意味で、今回調査も98年10−12月時点での大幅な景況変化の流れを継承するものといえよう。
II.売上高:今期は非製造業での悪化が目立ち、来期への期待膨らむ
- 99年1−3月期の売上高DIはマイナス54.6と、10−12月期に比べ10.9ポイント悪化した。売上が[増加]したとするものが減り、[減少]したとするものが増えたためである。昨年10−12月期時点での見通しでも本年1−3月期の売上DIはほぼ横這い程度とみていたにもかかわらず、その見通しも下回ったことになる。
- 業種別にみると、製造業は売上が[増加]したと答えた企業が3四半期連続増加基調を示した反面、1−3月期は[減少]したと判断した企業が見通しを上回って増加した。非製造業では本年1−3月期の売上に対し昨年10−12月期より悪化すると見込んではいたものの、売上が[増加]したと答えた企業が1桁に落ち込むなど、昨年10−12月期に比べ27.9ポイントの大幅悪化を示している。非製造業においては、元々、10−12月期時点で1−3月の見通しは10−12月期の実績を下回るものであったため、企業の側にも10−12月期の売上の増加がある程度は特殊のものとする見方はあったともいえる。しかし、1−3月期の実績は、その見通しをも下回るものとなった。
- 一方、先行き4−6月期は一転して96年10−12月期以来初めてプラスの売上高DIが見込まれている。大幅改善は、製造業、非製造業ともにみられ、製造業はマイナス53.1からマイナス4.7へ、非製造業はマイナス57.6から約3年振りにプラスの15.6となっている。 4−6月期の非製造業の売上増には、遅れている公共工事の発注に期待する建設業の売上高増が織り込まれているといえよう。
- 売上高DIのうち輸出向けも、1−3月期は10−12月期に比べ若干悪化した。増加したとする企業の割合が減少したことによる。しかし、先行きについては売上高が増加すると答える企業の割合が再び増加し、DIの大幅な改善が見込まれている。アジア経済の底打ち期待や円安への基調修正などが背後にあるものとみられる。
III.生産量・受注量:来期への生産増の期待が大きい製造業、今期の生産・受注減厳しく、来期への期待高まる建設業
- 99年1−3月期の生産量DIはマイナス48.6と10−12月期に比べ8.6ポイント悪化した。主に非製造業(建設業)の悪化が響いている。
- 業種別にみると、製造業が1−3月期マイナス47.6と前期に比べ7.0ポイントの悪化を示したが、非製造業(建設業)は1−3月期マイナス57.1と前期に対し23.8ポイントの大幅悪化となった。10−12月時点での見通しと比較しても、製造業はほぼ予想どおりであったのに対して、非製造業(建設業)は見通しをも大幅に下回った。非製造業(建設業)においては、1−3月期に生産量が増加したとするものはゼロとなり、DIを大きく押し下げている。これには、期待された公共投資が十分出て来なかったということが考えられる。
- 生産量の先行きは、製造業でDIが今期のマイナス47.6から来期マイナス4.9へと大幅改善が見込まれている。製造業は1−3月期実績で前期を下回ったが、生産が[増加]したとする企業の割合は着実に増えており、10−12月期の大幅改善した基調は継続しているといえよう。
- 1−3月期の受注高DIは、マイナス51.1と10−12月期に比べ9.7ポイント悪化した。これも生産量DI同様、非製造業(建設業)の不振によるところが大きい。業種別には、製造業がマイナス50.8と前期より5.8ポイント悪化、非製造業(建設業)がマイナス51.5と前期より18.1ポイント大幅に悪化した。
- しかし、先行きについては受注高DIが2.2と2年ぶりにプラスに転じる見通しとなっている。製造業が今期マイナス50.8から来期マイナス1.7へ、非製造業(建設業)については今期マイナス51.5から来期プラス9.4への大幅改善である。非製造業(建設業)は、公共投資への期待感が反映されたものといえる。

W.在庫量・価格・採算:販売価格の下げ止まり期待の中、来期の採算改善、在庫積み増し期待が強い
- 在庫量DIは、1−3月期マイナス23.5と前期に比べマイナス幅は7.1ポイント拡大した。98年4−6月期以来、二桁台のマイナス幅が続いており、在庫調整は進展している。
注目されるのは、4−6月期見通しで、在庫量DIがマイナス1.2と大幅に縮小していることである。在庫を[増加]するとした企業の割合が増え、[減少]するとした企業の割合が減った動きは、製造業の受注高DIで来期[増加]すると見込むものの割合が増えたことや製品販売価格の下落期待が薄らぐことなどと合わせると、意図した在庫積み増しの動きと読みとれる。
- 製品販売価格DIは、1−3月期マイナス49.4と10−12月期に比べ4.1ポイント縮小した。製品販売価格DIは、依然マイナス幅は大きいが、98年4−6月期をピークにマイナス幅を縮小させている。販売価格が[上昇]するとみるものはほとんどいないが、[下降]するとみるものの割合は徐々に減ってきている。さらに4−6月期の見通しについては、DIがマイナス29.0と今期実績から20.4ポイント縮小している。10−12月時点での1−3月期見通しに続いて、[下降]すると予想したものの割合が3割にまで低下してきている。
- 原材料仕入価格DIは、1−3月期マイナス30.5と10−12月期にくらべわずかにマイナス幅が拡大した。依然仕入価格が[下降]すると答えるものの割合が高く、商品市況の低迷を映し出している。4−6月期の見通しでは、DIがマイナス12.0とマイナス幅縮小が予想されている。
- 採算DIは、1−3月期マイナス59.4であった。10−12月期からはマイナス幅が4.2ポイント悪化した。しかし、採算DI最悪期の98年7−9月の水準に対し今年1−3月期は10.4ポイント改善している水準にあり、98年10−12月期以降、採算は最悪の状況を脱した状態が継続している。製品販売価格が[下降]したとみるものの割合が徐々に減少し、仕入価格は依然[下降]したとする企業の割合が比較的高いという価格面の状況も反映した動きとなっている。 先行き4−6月期の採算DIをみると、1−3月期に対し37.3ポイントの改善を示しており、採算DIが回復に転じた98年10−12月期の改善幅をも大幅に上回るものとなっている。
V.設備投資:依然冷え込みが続く
- 設備投資意欲DIは、1−3月期マイナス55.2と前期に比べマイナス幅は1.8ポイントとわずかに縮小した。依然DIのマイナス幅は大きく、設備投資意欲が[下降]したとするものの割合も6割程度あり、総じて設備投資は冷え込んでいるとみなければならない。しかし、98年10−12月期以降、 [下降]したと答えたものの割合も8割程度から6割程度に減少し、[変わらず]としたものが増えたという流れは続いており、結果として DIのマイナス幅が50ポイント台にまで縮小してきている。
- しかし、設備投資実施の結果では、1−3月期に設備投資実施を[なし]とした企業は74.2%であった。この傾向は98年1−3月期より続いており、別段の変化はない。これは投資意欲が [下降]から[変わらず]に変化を示しているものの、設備投資が実施される状況ではないことを示しており、設備投資については厳しい情勢が継続している。
VI.資金繰り・借入難易度:ともに厳しいながら資金繰り改善期待
- 資金繰りDIは、1−3月期マイナス37.1であった。マイナス幅は10−12月期とほとんど変わらず、2期連続してマイナス30台を維持した。98年1−3月期以降、3四半期連続でマイナス40を超える厳しい状況が続いていたことからすると、資金繰りもやや改善がみられているといえよう。4−6月期の先行きについては、マイナス25.3とさらに環境は改善するとの見方が出ている。
- 同様に、借入難易度DIもマイナス18.1と昨年10−12月期に続いて借入難易感がやや緩和したとの傾向が示されている。信用協会の保証枠拡大の影響も出ているとみられる。先行きについても、4−6月期はマイナス19.6と現状程度の状況という見方が示されている。
- 資金繰り、借入れともに最悪期からは脱している姿がみられるが、資金繰りが先行きに大幅な改善の方向がみられるのに対し、借入れは改善テンポに足踏みの状態が見受けられる。
VII.雇用:製造業は根強い過剰感、非製造業は1年振りにわずかな改善
- 雇用DIは、99年1−3月期17.7であった。 10−12月期からは5.5ポイント改善した。しかし、水準的には依然高く、最悪期からは脱しているものの依然厳しい状況は続いているとみなければなるまい。実際、中身をみても[不足]としたものの割合は1割を切りほとんど変化はなく、[過剰]としたものの割合が最悪期より減じ、[変わらず]としたものが増えているという状況である。さらに悪化しているということではないが、依然厳しいとみなければならない。
- 業種別には、製造業が1−3月期28.6と前期から5.3ポイント改善した。非製造業は雇用[過剰]とする企業が18.2%へ増加する一方、[不足]と答えた企業が21.3%へと増えるという形で1−3月期マイナス3.1と前期より3.1ポイント改善、1年振りにDIがマイナスを記録した。 非製造業において、雇用が[不足]したとするものが増加した背景には、卸小売等での値下げ販売強化の過程でパート労働者の需要不足が生じたことが推測される。
- 雇用情勢は製造業において非製造業よりも依然雇用過剰感が根強い。製造業において昨年10−12月期低水準ながらも1−3月期[不足]と見込んだ企業が増加したが、結果的には見通しを下回りわずか1.6%にとどまった。他方、雇用[過剰]とみる企業は減少傾向にあるものの、依然としてその割合は3割を超えている。
- 先行き4−6月期については、雇用DIは16.1とさらに1.6ポイント改善するとの見方が出ている。これは[過剰]とするものの割合が減り、[変わらず]が増えることによる。製造業では24.6と4.0ポイント改善が見込まれているが、来期は[不足]とする企業の割合がついにゼロとなり、雇用過剰感が強い状態はまだまだ続くとする見方が妥当であろう。非製造業では雇用[過剰]とする企業が1−3月期に引き続き増加し、[不足]とする企業が減少するという形で低水準ながら雇用環境の若干の悪化が見込まれている。
- 雇用環境については、製造業を中心に依然厳しい情勢が続いている。
(参考)99年3月調査 計数表
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