ベンチャービジネスに学ぶ創造性開発の実践


 

 日本経済を覆う閉鎖感を打破する原動力としてベンチャー・ビジネスが注目されている。
ベンチャー企業の集積としては、アメリカのシリコンバレーが有名であるが、岐阜県においても創造的エネルギーをもった中小企業が数多く集積している。こうした県内の企業に活力を持ってもらうことが重要である。
 今号の特集では、ベンチャービジネスで成功した企業経営者から、成功はどんな発想や着眼点にあったのかなど、事例を交えながら紹介する。

 この特集は、去る平成8年10月30日に岐阜グランドホテルで開催された「岐阜県創造性開発講座」(岐阜県、(財)岐阜県産業経済研究センター主催)の講演、ディスカッションをまとめたものです。

 

講演「21世紀に向けての展望と創造的事業戦略」

山内英二郎(やまうちえいじろう)

スタンフォード大学経済学部を卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールに おいて経営学修士 (MBA)を修得。
(株)ボストン・コンサルティング・グループに入社。食品、アパレル、精密機械、建設機械、化学薬品等の分野で経営コンサルティングを行う。特に、多角化、事業開発、経営戦略、マーケティング戦略、財務戦略の立案を行う。
(株)日本コカ・コーラに入社。日本コカ・コーラの多角化に参画。数種類に及ぶ商品、事業を開発。事業開発マネージャー、ジョージアのブランドマネージャーを務める。
(株)テンポラリーセンター入社。事業開発部長として事業の開発・育成そして買収等 を行う。(株)ジャパン・インキュベーション・キャピタルでベンチャーキャピタリストとしてベンチャー企業の評価、投資、育成を行う。その後、日本で初めての企業内保育運営代行会社、(株)チャイルドケアー・インターナショナルを創業する。そして、給与計算代行会社、(株)ベイロールジャパンを創業し、経営を行う。その後、経営コンサルティング会社、(株)ヘッドクォーターを設立、企業家育成、創業の支援及び経営コンサルティングを行う。

 

ディスカッション「ベンチャーで成功する秘訣とは」

百瀬武文(ももせたけふみ)

長野県出身。高校卒業後、国際電気(株)に就職し半導体の設計技師として活躍。1971年松下電器産業製のテレビを中心とした不買運動が起こり、翌72年にはドル・ショックに日本中が震かんし、その結果カラーテレビやICが売れなくなり半導体の生産量は急速に落ち込む。
120億円あった所属部署の売上は30億円に落ち込み、それを受け部門全体が子会社へ出向という合理化が行われ、5人の部下とともに脱サラを決意し、73年5月包装機に関する機械器具及び熱処理炉の設計製造販売を事業目的としたワイエイシイ(株)を設立。
半導体、ディスク関連機器、クリーニング包装・オゾン関連機器、POSシステム、SOUP(光造形)システムなど、オリジナリティの高い産業用自動化・省力化機器の開発に力を注ぎ、94年6月22日には株式の店頭公開を果たす。
ワイエイシイ(株)、ワイエイシイサービスエンジニアリング(株)、ヤックシステム(株)代表取締役。HYAC Corporation、DESITECH PTE LED.取締役会長。

 

川合 歩(かわいあゆむ)

社会的価値観と自己の価値観との葛藤の末高校中退後、幾多のアルバイト生活を経て、コンピュータ商社に就職、その後若干21歳で(株)イーディコントライブを設立する。
同社は、パソコンソフトウェアの製造受託及びISDNなどの通信端末機器開発を行う研究開発型ベンチャー企業で、世界初のフロッピーディスク高速転送装置DIX(ディックス)の発明や高速ディプリケータ、フリーダムなど独自コンセプトに基づく技術力を確立する。また、新規事業としてMNS「コペルネット」を事業化し96年サービス開始予定。
現在、PD制度と呼ばれる社内自己実現システムによって一切の評価・査定を撤廃、また役員を立候補制にする等、ユニークな企業形態をとり社員の意識改革を行っている。
(社)関西ニュービジネス協議会「NBK大賞」、(社)ニュービジネス協議会「ヤングアントレプレナー大賞」、日経ベンチャー「ベンチャー・オブ・ザイヤー ハイテク部門賞」等受賞。