<参考>

 以下は今回の調査にあたり、飛騨木工連合会会員の企業経営者及び東京の大手家具小売店(専門店、百貨店数社)などを中心にインタビューを行った結果の概要を整理したものである。どうしてもインタビューには限界があり、これが飛騨の家具を取り巻く現状と動向や家具の販売状況の全てを示すものではない。
 当センターにて、項目毎に整理し、掲載したものであり、このインタビュー結果ついての一切の責任は当センターにある。
 インタビューは平成11年9月より平成12年3月までの間に行った。


<飛騨の家具メーカーに対するヒアリング結果(要旨)>

●現在の業況について
・対前年比20%の落ち込みとなっている。これは損益分岐点を割り込む状況で大変厳しい業況が続いている。
・業界の中でも、勝ち組と負け組がでてきており、その格差が広がりつつある。勝ち組の中で少し業況が回復してきたと回答する企業でも、価格面が厳しい。注文が取れても価格は前回よりもさらに一段と厳しい状況になってきている。
・回復基調は感じられない。ここ2年ばかりは右肩下がりの状態。
・業績は平成3年と比較すると約半分で、その原因は消費の低迷と外国製品の輸入増加による。
・昨年、売上高が2〜3割ダウンし、今年の売上高は対前年比95%程度を見込んでいる。
・大型家具の需要が縮小傾向にあり、法人需要も事務所を移転しても家具は従来の物をそのまま使うケースが多く、市場は縮小傾向にある。
・家具業界は苦戦を強いられているのが、現状で、まだ景気が底を打った実感はない。
・不況の中でも独創的で個性的な家具は高額でも堅調な売れ行きとなっているが、ミドルクラスの家具の落ち込みは著しい。
・当社の状況はバブル期も伸びていないが、堅実に推移してきている。その理由は7〜8割が注文を受けてから作っているからで利益は薄いが着実に右肩上がりである。

●住宅新築動向との関連性について
・住宅業界が動き出しているので、その波及効果があるだろうとの見方をしていたが、住宅産業の動きに即連動する傾向はほとんど見られない。将来に対する不安から新規に家具までも買い替えようとする人が少ないように思われる。
・住宅メーカーは堅調のようであるが、家具までは消費が回ってこない状況。
・昨年春先は、住宅新築、買い替え需要で販売面が好調であった。
●販売体系について
・今後は流通改革・販売体系の再編成をやっていかなければならない。旧来の問屋・小売体系を打破し、デザイナーと組んで独自の商品を開発し、それを首都圏・主要都市の自社ショップで直接販売する方式に切り替えていかなければならない。
・直販体制が中心で、問屋の存在意義が薄れてきている。当社も東京に1名担当者を置き、直販の業務に当たらせている。ただ、問屋制度には利点もあり、問屋会社には多くの営業社員がおり、多くの小売商に売り込める利点はある。
●消費者ニーズのくみ取り方
・当社も今年の4月から○○市を皮切りに直販体制を始めている。今後は、個人ニーズを直接つかむためにも、こうしたショップを順次展開していく方針。
・小売店からの生の消費者の声を収集し、市場の情報をつかむようにしている。また、大都市圏などにある自社のショールームへ訪れる小売商からも収集している。
・東京のデザイナーショップで販売してもらい、そこから消費者志向をつかんでいる。
・自社ショップの展開は考えていない。付き合いのある小売店を刺激することになりかねない。
・問屋に頼っていた消費者ニーズであるが、その消費者ニーズのフィードバックが遅い。
・消費者ニーズは展示会や雑誌などから得ている。
●飛騨木工連合会が進める「飛騨デザイン」について
・確固たる飛騨デザインの定義はないが、飛騨ブランドのイメージは良いと考えている。
・見本市でのアンケート結果では、飛騨家具はダントツの1位で好評を博した。
・飛騨家具はヨーロッパ家具を見本として、出発しており、それで終わらず、飛騨ならではの飛騨デザインを起こす必要があると考えている。
・飛騨デザインは良質な品質と高い水準でデザインしたもので、世界へ輸出してもデザイン的に耐えられるものと定義できよう。
●飛騨の家具の輸出について
・輸出は必要であるが、飛騨の家具は価格が高めのため、輸出に耐えられるかが課題である。輸出を促進する方法として中国などで製造し、欧米へ輸出することも考えられるが、その前に流通経路の調査が必要となろう。
・海外見本市へ出展して、海外進出の困難さがわかった。
・海外見本市に出展してかなりの感触を得たが、海外の流通機構も良くわからないので二の足を踏んでいる。マーケットの勉強をすることとした。
●今後の飛騨の家具の進路について
・国内では消費者からのオーダーメイドの手作り「オンリー・ユー」製品を中心としなければならない。また、消費者がデザインしたものをメーカーが製造することも出てこよう。
・付加価値の高いものを製造販売する方針である。
・ハウジングメーカーとの協調体制を進めることも必要。
●県への要望について
・ 高山市内での展示会は商談成立率も良く、ビジネス効果は大きく、今後、高山での展示会は拡大していきたい。そのため、産地展示会への補助金の継続をお願いしたい。
<東京の大手家具小売業(専門店、百貨店数社)へのインタビュー結果>

● 現在の家具市場の景況感について
・ バブル時期にはどんな家具でも売れる感があった。現在はそれが本来の姿に戻ったと見ている。販売額に落ち込みはなく、当社として特別に不況感はない。
・ 99年度の販売額は前年度比プラス約5%増の見込み。ここ2年はプラスで推移し、売れ行きは悪くない
・ バブル時に現在の水準からすると2〜3倍という無理な価格政策をとったメーカー、卸、小売業者が生き残れなかったのではないか。当社には必ずしもバブル時の反動が起きているとは思わない。品質の良いものから売れている。
● 消費者の家具購入における態度の変化について
・ 日本の消費者は家具に対しては特に「ブランド」ものに弱い。ヨーロッパでは一部の高所得層、上流階級しか滅多に利用しない家具を一般の消費者が購入しようとする。そのため、原産地表示だけで判断して、質の良いアジア諸国の家具より、それほどでもないイタリア中級品を購入する傾向を否定できない。
・ つい二十年前まで、日本の家庭の大半が和風の暮らしをしていた。ちゃぶ台に和箪笥の生活に慣れてきた。そのため、洋風の脚物家具等についてはまだ選択眼がない。これから家具について商品選択の経験を積んでいく発展途上にあると思う。
● 飛騨地域で製造される家具製品の評価と提言
・ 飛騨の大手有名メーカーは高級家具として価格設定も非常に良心的であり、消費者も品質の良さから安心して購入していると感じる。当社でも飛騨の大手有名メーカーの家具は前年比20%以上の売上を実現している。
・ 飛騨地区の家具は独特の「手造り感」で消費者のあこがれになっている。ある程度、高い価格でも売れており、消費者に産地ブランドは浸透している。ただ大手数社のイメージ先行で中小の製造業者のことはわからない。
・ 飛騨にある大手家具メーカーの担当者によく言っているのは、テイスト(デザイン)面ではまだまだ向上の余地が大きく、目の肥えた消費者ならすぐに改善点を指摘できるだろう、ということである。
・ 飛騨には大手有力メーカーを中心に製造機能が集積している。その産地ブランドには具体的なイメージが弱い。一部の製品について、各社で協力して世界的なデザイナーを雇いオリジナルデザイン物を企画するなどの行動力が欲しい。
・ 飛騨の高級家具ならイタリア、フランス等へ輸出の可能性は十分にある。例えばフランスでは日本ブームで箸やふすまの利用が流行になっているなど、消費者の嗜好も飛騨の家具に合致するのではないか。
・ これからは消費者に生活環境をトータルで提案する時代にある。消費者も、必ずしも同じメーカーの家具に揃える必要はない。したがって飛騨地域の家具メーカーが脚物に偏りすぎているのではないかという印象を持っている。
・ 一般に産地の家具メーカーは積極的に小売業に直接納品すべきだと思うが、小売業の選別が面倒なので産地問屋に頼ってしまっている感が強い。飛騨地域の家具メーカーにもそのきらいがある。産地問屋経由では消費者の実態がわからないと思う。

以上


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