8 経済・労働・雇用

地方財政システムの再構築
――地方交付税・地方税・自治体決算・予算システムの包括的改革プラン――


小西砂千夫
(関西学院大学大学院経済学研究科・産業研究所教授)


1. 地方財政危機の原因
  自治省出身で内閣官房副長官を長く務めた石原信雄氏は、 1999年5月3日の 『日本経済新聞』 で財政危機の課題を明確に表現している。 「地方自治の基本的な仕組みが崩れている。 地方自治というからには、 住民のさまざまなニーズをその団体でまかなっていくということになりますが、 その財源はよそからもらうのが当たり前だという意識になっている。 地方交付税が地方の歳入の25%をしめるなんておかしい。 制度ができた時は13%程度でした。」 「相変わらず、 必要なカネは東京から持ってくるというアピールが幅を利かす。 そこで役人のOBを (首長の) 候補者に担いだりする。」 「ある程度、 地域格差をなだらかにする制度はあっていい。 だが日本の場合はやりすぎです。 個人の場合だって格差はあるでしょう。 自治体には格差はあってはいけないということにはならない。 交付税の配り方にしても、 格差はいけないというヒューマニズムみたいなものがありすぎる。」 「標準税率なんかやめて歳出に応じた税率を自治体ごとに決めるようにすべきです。 自分たちで負担するとなったらおかしな買い物はできませんよ。」
  自治省OBで 『地方財政調整制度論』 という著作がある地方財政のプロが、 地方交付税は制度の本来の趣旨をはずれているという。 地方財政平衡交付金を交付税制度に転換させたときの財政課長であった柴田護氏も同様に、 交付税制度は財政力がきわめて乏しい時期の過渡的なもので、 永続すべきものではないという趣旨のことをかつて発言している。 いまや交付税を守ろうとするのは、 自治省の現役と、 いうまでもなく全国3,000の地方公共団体である。 一部には交付税縮小の正論を言う首長もいるだろうが、 大半はいまだに交付税率を引き上げるべきだという意見であろう。 石原氏のように、 標準税率を取っ払って、 住民に地方税という形で負担を求める形にしてほしいと言い切れる首長が、 いまの日本にどれくらいいるだろうか。 ましてや、 本音ではともかく、 自治体間で公共サービスに格差があっていいと公言できる首長がいるだろうか。
  現在、 地方財政ではきわめておかしなことが起きている。 経済力があり財政力の豊かなはずの東京都、 神奈川県、 大阪府が危機的な状況に陥っているのだ。 財政力が豊かということは、 貧しい地方団体より行政サービスの供給水準が高いか、 財政調整基金などの制度を用いて、 余剰財源を金庫に積み上げているはずである。 歳出削減の余裕度は高いはずだ。 府県税は事業税等の法人関係諸税が主役であって、 昨今の不況で税収が過去に経験しないほどに落ち込んでいることは理解できる。 それでも交付税制度があるのだから、 減収分は普通交付税である程度財源保障されるか、 すくなくとも基準財政需要額以上の収入額は確保されている。 その自治体でなぜ予算が組めないほどの事態になるのか。 いいかえれば、 なぜ歳入にあわせて機動的に歳出を切り下げることができないのか。
  根本的な原因は、 個々の行政サービスの供給水準に対して、 ここまでが最低限の行政サービスであり、 それを超えた部分は財源の余裕がある範囲で行うという節度が、 役所のなかで完全に失われていることである。 その背後には、 石原氏の指摘するように、 財源は自分たちの身近な住民の税が負担したものではなく、 東京から引いてくるものとの意識があるかもしれない。 組織的には役所のなかが恐ろしく縦割りになっていて、 全体を考えて個々の財政支出の整合性を図る仕組みがないことにも原因がある。 予算を消化する現局の立場では、 やるべきこと、 やりたいことは無限にある。 それが政治的なさまざまな利害関係や、 役所の内部での貸し借り関係で、 財政危機とは関係なしに予算化が容認されるという構図があると思われる。
  人が多すぎるのが根本問題であり、 人員削減をすべきであるという意見がある。 しかし財政的に問題なのは人件費よりも、 むしろ事業費である。 事業量を下げることが本来の財政削減になる。 しかし実態的には、 人がそのセクションにいる以上、 一定の事業量をつけなければ仕事が回らないということもありうる。 だとすれば、 人を切ることが戦略的な意味で財政支出の削減になる。 本来は、 小さい政府の趣旨からすれば、 事業を実施することから、 民間企業を監視する方向へ行政サービスの内容は変化させなければならない。 監視行政には人が必要だ。 人員の削減ではなく転換こそがあるべき姿である。
  収入にあわせて支出を切ることは、 家庭ならば当然のことだ。 お父さんの給料が会社の業績不振で減ったにもかかわらず、 お父さんが借金してでも贅沢な趣味をやめないでいたら家庭不和になる。 ところが自治体関係者からは、 「いくら財政難でもやらなければならないことはありますから」 という言葉がよく出てくる。 確かに、 財政の本来の姿は 「量出制入」 であり、 財政必要額を調達することであるから、 歳入にあわせて歳出を切るべきではない。 それでは、 「財政難でもやらなければならないこと」 とは、 住民に増税を求めてでもやるべきことなのか。 そうでないとすれば、 その言葉はずいぶん住民をバカにした表現だ。 財源はいずれ国に頼んで何とかするからという、 根拠のない楽観論も見え隠れする。 もし本当に増税してでもすべきことだとすれば、 わが国の地方財政システムが、 根本的に間違っていることになる。 この点を掘り下げることで、 地方財政制度の改革の方向が見えてくる。

2. 地方財政制度改革のデザイン
  国民として最低限の公共サービス水準をナショナル・ミニマム、 それを地方自治に当てはめたものをシビル・ミニマムなどということがある。 義務教育や保健サービス、 生活保護や介護サービスなど、 まずこれくらいは最低限、 国民の権利として主張できる行政サービス水準を、 本論では 「最低限の行政サービス」 と呼ぶとしよう。 最低限の行政サービスを供給するコストを客観的に計測できるかという技術的問題は確かにあるが、 ここでは一応それは可能であるとして論を進めよう。
  あるべき地方財政制度とは、 石原氏の指摘を待つまでもなく次のように定義できる。

  どんなに財政力の貧しい地方団体であっても、 最低限の行政サービスを財政調整制度で保障しつつ、 それを超える行政サービスを供給する場合には、 地方税を賦課 (増税) することによって徴収する方向で、 財政調整制度と地方税制度を改革する。

言い替えれば、 現行の地方財政制度は、 地方税にせよ地方交付税にせよ、 この方向をはずれたことによって、 さまざまな問題を引き起こしている。
  地方交付税制度は普通交付税と特別交付税からなる。 普通交付税は自治省が定めた算式に基づいて行政費目ごとに積み上げた基準財政需要額 (標準的な行政サービスを提供するに必要な費用と説明されている) から、 標準的な地方税収の一定割合と交付金等を合計した基準財政収入額を引いたものとして、 交付額の基本が算定される。 特別交付税は、 基準財政需要額の算定方法では勘案できない財政需要を考慮して算定するとある。 しかし、 そうした説明では看過される問題は多い。
  特別交付税は言うなれば 「つかみがね」 にすぎない。 その交付については陳情から告知に至るまで、 やる方もやられる方もばからしいと思いつつも、 やめられない一連のアホげな儀式がある。 普通交付税についてはさらに罪が深い。 地方交付税は一部の国税の一定割合とされているので総額が決まっている。 それを一定の算定方法で配分するのは、 標準的な行政サービスを提供するのに必要な普通交付税額が、 常に一部の国税の税収の一定割合に一致するという論理が必要になる。 その辻褄合わせが地方財政計画である。 いうならば普通交付税といえども、 実態は補助金を配分する手続きにすぎない。 普通交付税の算定方式はいかにも客観的なスタイルをとることで、 無用な陳情を許さない仕組みだという点で、 補助金に比べて巧妙であるわけだ。
  普通交付税がうまく機能したのは、 かつてのように地方財政が本当に貧しく、 義務教育や保健など基本的な行政サービスを提供するにも、 地方財政全体で十分な財源が用意できない時代であった。 金がないのはわかるが、 ともかくこれで勘弁してくれと国が地方に説得するのには有効だ。 ところが、 経済成長が続き地方財政が潤ってくると、 次第に単なる財源のバラマキになり、 痛みなく収入を確保するだけの甘えの源泉としての悪い側面が強調される。 実際に、 基準財政需要額の内容は、 時代を経るごとに膨れており、 標準的な行政サービスの解釈の幅も大きくなってきている。 交付税の財源総額に見合う財政需要を作り出さねばならないからだ。 実は交付税こそが量入制出であるわけだ。 石原氏が地方歳入に占める交付税の割合が高すぎると批判するのも当然だ。 交付税の改革はしたがって、 基準財政需要額の中身を最低限の行政サービスに切り下げること以外にない。 その結果、 交付税の財源が浮いてくるので、 これを国税の減税財源に充てる。 そうすることで、 国民負担率を今よりも引き上げることなく、 地方税を増税する余地が出てくる。
  筆者らが関西財界で作ったシンクタンクである21世紀の関西で考える会で行った調査で、 現行の基準財政需要額はどこまで引き下げられるかという試算を行ったところ、 総額で18兆円という結果が出た。 詳細は吉田(1998)でも紹介されている。 どこまでが財政調整制度で確保すべき行政サービスかという研究は、 今後もっと必要であると思われる。
  国税を引き下げ地方税を引き上げると、 現行のままでは、 地方団体間の財政力格差はいま以上に広がることになる。 そこで地方税改革が必要になる。 21世紀の関西を考える会では、 一種の逆交付税という考え方を導入した。 つまり、 原則としてすべての税収は地方税とした上で、 富裕団体で財源が一定基準以上ある場合には、 国は地方団体に対して課税を行う (つまりは地方税収を国税として召し上げる)。 その結果、 現在は非常に貧しいとされている団体においても、 その地域で負担されている国税が地方税に振り替わることで、 基準財政需要額を引き下げていることもあって、 ほとんど地方交付税に頼らなくてもよいという結果となった。
  地方税改革のもう一つの方向は、 住民税を所得税・法人税と合体して共同税とし、 納税者ごとの納税額のうち、 一定額を超えた部分のみを国税収入とするという方法がある。 一定額を超えなければ、 その納税者は地方税だけを払うことになる。 これでいけば、 平均所得水準が低い地域や企業規模が小さな地域では、 税収がほとんどその地域に残ることになり、 豊かな地域ほど国税を拠出する割合が高くなる。 その効果は逆交付税の導入と同じとなる。
いずれにしても、 貧しい団体もそれなりに財源が確保でき、 豊かな団体は今以上に税収が増えないという方向で地方税を改革しておかなければ、 交付税の削減で浮いた財源を地方税の増税に回すことができない。 この点が、 国と地方の財政関係をあるべき方向に改革する上での必要条件となる。
  さらに、 地方財政制度改革を行う前段階で、 地方団体の規模の適正化を実施しなければならない。 行政サービスの供給コストは地方団体の規模によって変わり、 一般に人口規模が小さければ割高になる。 あるべき地方団体の規模を市町村合併等を通じて実現することが、 地方財政システムの改革には必要条件となる。 ただし、 あるべき規模とは財源を効率的に使うという意味ではない。 通勤圏や生活圏の実態から導かれたまちづくりのあるべき圏域という視点で、 地方団体の区画の整理を行う必要がある (詳しくは小西(1999c)を参照いただきたい)。

3. 地方団体における予算・決算制度の改革
マクロの地方財政制度改革とあわせて必要なのは、 地方団体の財政制度、 特に予算・決算制度という意味でのミクロの制度改革である。 財政とは受益に対する負担の合意といいかえることができる。 その公共サービスに対して負担してもよいと納税者に判断してもらうために、 さまざまな材料を公開し、 議会の予算審議の場を始めとするさまざまな場で民主主義的な意思決定を積み上げていくことが必要になる。 すなわち、 ミクロの財政改革の焦点は、

  財政支出の合理化のためには、 財政情報の公開を通じて民主主義を機能させることが重要である。 具体的には、 予算・決算システムのドラスティックな制度改革を通じて、 受益と負担の合意を形成するような仕掛けを包括的に構築していくことが必要になる。

ということができる。 以下ではそのことを掘り下げて考えたい。
  財政支出を効率化するための手段として、 いま事業評価が注目されている。 経済学では早くから費用=便益 (あるいは有効度) 分析が議論されてきた。 公共サービスの場合には、 民間企業のように売り上げといった形でアウトプットが表れることはない。 しかし、 だからといって国民経済計算のように費用=便益と定義したのでは、 あらゆるサービスは正当化されてしまう。 財政支出の効率化のためには、 公共サービスの便益を評価する道具立てを考えることが重要となる。
  この点は確かに正しい。 しかし一方で、 公共サービスに対して客観性のある評価ができると考えるのは、 ある意味で科学万能主義の落とし穴にはまっている。 財政支出の合理化のためには、 さまざまな情報を公開した上で民主主義的意思決定を機能させるしかない。 事業評価とはその際に行政から提示されるべき情報のひとつではあるが、 それで判断できるという尺度にはなり得ない。
  ところで、 費用=便益分析では、 便益の評価に客観的な指標が難しいことは問題になるが、 費用の把握は自明のことと理解されがちである。 しかし、 現実の地方行政では、 費用の包括的な把握は相当難しい課題である。 民間企業でも原価計算というが、 現実には正確に行うのは容易でないことと同じだ。 ひとつの行政サービスを提供するコストは、 いわゆる予算に 「○○費」 と計上される事業費だけではない。 まず、 サービスの提供には人件費が必要である。 しかし地方団体の予算では、 地方自治法上の規定に従った予算書や決算書だけを作成している限り、 一般人件費は一括して別のところに記載されていて、 事業別に分割されない。 費用=便益分析などと高級なことを考える以前に必要となる、 見えないコストを把握し公開するという財政accountabilityの基本は、 常に忘れられがちだ。
  一般に役所は合規性という観点には敏感であるが、 あるべき姿から制度のあり様を考えるという思考方法は薄い。 人件費を一括して記載する予算書は合規的だが、 それでは役に立たないので改正すべきだという声は、 残念ながら地方団体からはあがってこない。 これが地方分権が一気に進んだときに、 行政能力の低下が起こりうるもっとも大きな懸念材料である。
  見えないコストで忘れられがちなものとしては、 人件費以外にサービス提供のためのストックに関する情報がある。 どれだけのストックがあり、 そこから経常的にどれほどの費用が発生しているかを把握しなければならない。 ストックに伴って発生する費用とは、 いわゆる施設のランニング=コストも含まれるが、 その太宗は施設を建設し維持管理するコストである。 これを現金主義的に把握するならば、 建設時の費用と起債した場合の元利償還金である。 発生主義的に考えるならば、 地方債の支払利子と減価償却費ということになる。
  減価償却についてさらに突っ込んだ議論をするならば、 毎年の費用相当額を正確に計測するには、 施設の価値を時価で評価し、 耐用年数 (あるいは供用予定期間年数) で割るという作業が必要になる。 もっとも、 事業用資産の時価評価は、 現行の企業会計制度でも視野にない。 企業会計制度は株主に企業の収益性を開示するものであり、 事業用資産のキャピタルゲインを考える必要はないからだ。 しかし、 財政accountabilityを誠実に果たすという観点からは、 ときには民間会計基準を超えた範囲での費用計算が必要になる。 納税者に負担を求めるという観点からは、 発生した費用の把握が企業会計よりも厳密になるのはむしろ当然だ。 ところが現実の予算書は減価償却という発想がないだけでなく、 人件費同様に公債費は別立であり、 サービス提供のコストを予算書で開示するという発想はまったくない。
  自治体関係者の方は、 一度、 自分の団体の議会で公表している予算書や決算書を手にとって、 そこでどれだけの情報が開示されているかを見ていただきたい。 あるいは日毎の仕事のなかで、 予算と決算がまったく切り離されていて、 決算を見ながらその結果を予算にフィードバックするという予算循環の議論が、 財政学の教科書のなかだけの空論であることに思いを寄せてほしい。 決算書は現金出納簿、 予算書はその予定表であり、 そこには限られた財源を効率的に使うという発想がまったくない。 事務事業の評価は大切だが、 それが足下の現実からかけ離れているのは明らかであろう。
  さらに、 事業評価の場合に大切なことは、 事業の単位をどのように整理するかという問題である。 最近では、 総合計画と個別具体の事務事業がどのような体系になっているかを整理して、 総合計画の進捗状況を捕捉しながら、 個別事業の事業費を決定するという予算建てをしている地方団体も増えてきた。 しかし、 それはまだ一部の先進的自治体だけだろう。 事業体系を整理して事業別の予算を合計すると全体の予算と数値が合う、 財政accountabilityを貫くための、 ごく初歩的な改革から始めなければならない地方団体がほとんどではないか。
  なぜ長年そのような財政システムに甘んじてきたのであろうか。 それはわが国における役所の性格づけと関連性が強い。 日本の役所はけっして不誠実ではない。 さまざまな不祥事があったが、 私腹を肥やしたというケースは少ない。 地方行政に問題があるのは、 役所のなかで仕事を抱え込んでしまうことだ。 議会や住民が意思決定の主役で、 役所はお膳立てをするだけというのは建前であって、 本音は 「無知なる民にはしらしむべからず」 である。 いまはその建て前を本音に合わせるように役所の仕事のやり方を変えていくときだ。 そのためには予算・決算制度の改革はその中心的政策課題となる (その詳しい内容は、 小西(1998a)(1999a)を参照いただきたい)。
  東京都知事選で新知事は、 財務諸表を作ろうと訴えた。 政府の経済戦略会議でも同じことが話題となった。 別紙は、 三重県の依頼で筆者が作った発生主義による県の財務諸表である。 その表をじっくり見てそこからはほとんど何も新しい情報が得られないことに気づいてほしい。 三重県の表は普通会計の決算書 (地方財政決算状況調) を加工し、 そこにほんの少しのデータを加えてできている。 ということは、 普通会計の決算書の方がデータ量が多いということだ。 財務諸表はこれまで開示してきた情報の要約版にすぎない (筆者は自治体関係者にこの表の作成方法を無償で公開している)。 財務諸表は地方債の格付けなどとの関連性も議論されているが、 これも実際に表を作成していない方の過大評価であることも付言しておく (詳しくは、 小西(1998b)(1999b)を参照いただきたい)。

経常会計
費用(歳出)収益(歳入)
平成7年度 平成8年度 平成9年度
人件費 225,325,999 230,317,598 237,096,122
  職員給 168,736,035 174,280,368 179,126,935
  退職金 15,488,288 14,076,733 14,162,215
  退職給与引当金 1,660,095 902,593 2,038,384
  その他 39,441,580 41,057,904 41,768,588
物件費 23,666,966 25,262,253 26,682,717
維持補修費 5,410,121 5,361,666 5,165,553
扶助費 15,999,349 15,890,985 16,170,289
補助費等 68,150,837 70,685,272 86,326,331
  市町村等への補助金 51,362,527 56,303,129 68,790,931
  税収関連交付金 16,788,310 14,382,143 17,535,400
減税による歳出相当分 1,201,637 1,200,854 1,312,760
貸倒引当金繰入 0 0 0
未収地方税償却 299,297 873,205 573,384
公債費(支払利子分) 24,293,310 26,269,220 26,911,269
減価償却分 69,562,449 73,302,594 79,958,212
低利子貸付利子補給相当分 126,267 106,292 112,432
繰出金 2,772,835 2,593,709 2,751,535
前年度繰上充用金 0 0 0
災害復旧事業費 10,171,952 1,936,019 4,363,605
失業対策費 416,887 0 0
用地補償費 7,648,407 7,677,549 8,972,230
小計 455,046,312 461,477,215 496,396,438
当年度利益金 24,556,448 45,128,315 105,391,839
  建設会計への繰出金 109,738,033 113,565,328 109,466,663
  経常余剰 -85,181,585 -68,437,013 -4,074,824
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
合計 479,602,760 506,605,530 601,788,277
平成7年度 平成8年度 平成9年度
地方税(調定額) 202,541,013 210,936,714 220,766,711
  現年課税収入済額 194,781,539 203,962,809 216,650,907
  現年課税未収分 6,557,837 5,773,051 2,803,044
  政策減税分 1,201,637 1,200,854 1,312,760
    地方税法分 - - -
    県単独分 1,201,637 1,200,854 1,312,760
地方譲与税(経常分) 12,147,351 12,980,945 4,711,095
  消費譲与税 12,147,351 12,980,945 4,711,095
地方消費税清算金 - - 8,876,058
地方交付税 151,097,397 162,423,550 160,972,910
  普通交付税 148,334,943 159,673,677 158,210,663
  特別交付税 2,762,454 2,749,873 2,762,247
交通安全対策特別交付金 729,232 761,135 779,904
分担金及び負担金(経常分) 3,888,233 3,664,770 3,659,490
使用料 8,144,749 8,151,185 8,017,116
手数料 4,562,856 4,624,434 3,934,055
国庫支出金(経常分) 77,938,004 73,842,540 78,037,576
  義務教育費負担金  45,177,416 45,791,249 47,529,241
  生活保護費負担金 2,806,136 2,572,979 2,693,045
  児童保護費負担金 4,060,319 4,318,522 4,384,818
  結核医療費負担金 274,491 99,332 101,345
  精神保護費負担金 593,861 423,523 129,704
  老人保護費負担金 0 167,174 180,843
  災害復旧事業費支出金 7,091,592 1,313,966 2,762,897
  失業対策事業費支出金 82,423 0 0
  委託金 2,523,154 2,072,669 1,136,617
    災害復旧事業 122,756 0 0
    その他 2,400,398 2,072,669 1,136,617
  財政補給金 22,232 9,842 0
  その他の国庫支出金 15,306,380 17,073,284 19,119,066
国有提供施設等所在市町村助成交付金 0 0 0
財産収入(財産売払分を除く) 2,907,878 1,584,134 1,603,074
寄付金 814,973 75,565 34,282
繰入金 19,088,713 14,301,117 28,515,291
繰越金 14,853,558 17,881,870 19,547,516
諸収入(回収元金を除く) 11,654,374 17,157,939 12,390,135
低利融資による利子補給相当分 126,267 106,292 112,432
特別区財政調整納付金 0 0 0
資産評価益 -30,891,838 -21,886,660 49,830,633
  建物施設分 -19,459,664 -11,356,700 44,711,876
  土地分 -11,432,173 -10,529,960 5,118,757
       
合計 479,602,760 506,605,530 601,788,277


建設会計
費用(歳出)収益(歳入)
平成7年度 平成8年度 平成9年度
普通建設事業費(除く補償費) 239,738,222 249,691,173 227,789,312
未払金(繰越金等) 7,703,298 2,835,901 2,813,497
未払金(債務負担行為) 19,154,785 6,344,532 11,423,080
地方債償還金 23,005,945 30,837,261 42,754,681
積立金 7,056,456 4,729,549 4,311,784
投資及び出資金 9,783,261 10,507,962 7,575,536
貸付金 58,694,867 63,427,292 60,377,451
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
合計 365,136,834 368,373,670 357,045,341
平成7年度 平成8年度 平成9年度
地方譲与税(建設分) 2,247,116 2,494,812 2,449,718
  地方道路譲与税 1,983,879 2,219,373 2,183,566
  石油ガス譲与税 263,237 275,439 266,152
  航空機燃料譲与税 0 0 0
国庫支出金(建設分) 72,752,295 66,059,277 61,072,926
  普通建設事業費支出金 71,106,710 63,573,842 58,763,271
  委託金(普通建設補助) 322,118 622,632 755,951
  電源立地促進対策等交付金 1,077,301 1,613,664 1,314,963
  石油貯蔵施設立地対策等交付金 246,166 249,139 238,741
未収特定財源(繰越金等) 2,714,784 -2,464,203 -1,022,930
未収特定財源(債務負担行為) 740,224 1,208,526 4,924,061
分担金及び負担金(建設分) 12,403,803 11,328,275 10,272,094
財産収入(資産売却分) 3,067,789 1,160,137 1,574,291
地方債 105,159,965 112,374,350 103,726,884
貸付金等の回収金 56,312,825 62,647,168 64,581,634
       
小計 255,398,801 254,808,342 247,578,678
       
経常会計からの繰入金 109,738,033 113,565,328 109,466,663
       
合計 365,136,834 368,373,670 357,045,341


経常会計
<資産>
平成7年度末 平成8年度末 平成9年度末
流動資産 225,244,799 220,611,422 208,199,633
  現金・預金 169,470,060 161,752,252 153,286,596
    出納上の現金残高 8,011,690 15,247,541 24,311,033
    基金分 161,458,370 146,504,711 128,975,563
  信託(基金) 11,009,040 11,009,040 5,916,440
  有価証券(基金) 302,151 181,311 130,472
  その他の流動資産 2,521,933 8,135,095 8,729,178
  未収地方税 10,686,853 9,534,639 6,236,731
  未収特定財源(繰越金等) 15,625,554 13,161,351 12,138,421
  未収特定財源(債務負担行為) 15,629,208 16,837,734 21,761,795
  貸倒引当金 0 0 0
固定資産(社会資本・土地) 3,643,056,289 3,847,153,631 4,090,559,372
  建物・構築物等 2,383,255,329 2,593,759,225 2,762,732,046
  減価償却積立金 217,632,970 249,615,979 283,246,493
  土地(普通会計) 885,165,658 890,721,343 907,371,152
    昭和50年度以降 273,044,653 287,787,895 304,437,704
    昭和49年度以前 612,121,005 602,933,448 602,933,448
  土地(土地開発基金) 0 2,622,602 2,622,602
  建設仮勘定 157,002,332 110,434,483 134,587,080
    建物・構築物 147,581,595 102,109,578 125,679,734
    土地 9,420,737 8,324,905 8,907,346
投資等 151,181,861 159,480,825 162,329,006
  出資金 54,097,291 63,876,953 71,462,989
  貸付金 97,084,570 95,603,872 90,866,017
  貸倒引当金 0 0 0
       
       
       
       
       
       
資産合計 4,019,482,949 4,227,245,878 4,461,088,011
<負債>
平成7年度末 平成8年度末 平成9年度末
流動負債 136,406,159 157,191,379 181,058,826
  未払金(繰越金等) 36,237,800 39,073,701 41,887,198
  未払金(債務負担行為) 69,222,787 75,567,319 86,990,399
  翌年度繰上充当金 0 0 0
  1年内返済予定地方債 30,945,572 42,550,359 52,181,229
固定負債 589,667,375 660,502,269 713,881,986
  1年超返済予定地方債 558,257,829 628,190,131 679,531,464
  退職給与引当金 31,409,546 32,312,138 34,350,522
       
負債合計  726,073,534  817,693,648  894,940,812

<資本>
資本剰余金 887,668,447 940,298,749 982,177,696
  国庫支出金 873,764,337 931,248,632 969,115,432
    建物・構築物等 742,430,514 792,575,188 826,766,115
    土地 131,333,823 138,673,443 142,349,317
  分担金・負担金・寄付金 13,904,110 9,050,117 13,062,263
    建物・構築物等 7,151,011 2,398,378 6,410,524
    土地 6,753,099 6,651,739 6,651,739
自己資本金 2,405,740,969 2,469,253,481 2,583,969,503
  利益剰余金 1,160,143,251 1,236,024,138 1,371,786,726
    減価償却基金 942,510,281 986,408,160 1,088,540,233
    減価償却積立金 217,632,970 249,615,979 283,246,493
  基金 175,291,494 168,452,759 146,374,255
  過年度経常余剰 41,167,300 -44,014,284 -112,451,298
  当年度経常余剰 -85,181,585 -68,437,013 -4,074,824
  県民持ち分 1,114,320,508 1,177,227,882 1,182,334,643
       
資本合計 3,293,409,416 3,409,552,230 3,566,147,198

資本負債合計      . 4,019,482,949 4,227,245,878 4,461,088,011

  大切なことは、 財務諸表や事務事業の評価などというマスコミ受けする目新しいシステムではなく、 地方自治の基本である住民自治という観点で、 いかに財政情報を公開し、 役所が意思決定の主役の座を降りるためのシステムを考えることである。 川崎市の財政問題検討委員会が最近まとめた報告書には、 アクションプランとして財政支出削減の数値目標も人員削減の数値も盛り込まれていない。 あるのは、 財政危機の脱却のためには情報公開が必要だが、 実は情報公開自体が目標であるという哲学である。 そこには、 行政体を公共価値について自ら総意・工夫・努力する事業担当者の組織体に転換する、 さまざまな段階・局面における説明責任の遂行や議論の共有基礎資料を提供する、 しっかりとした情報共有に基づく良質の議論展開が公共価値のより高い政策案を生み出す競い合いをもたらし、 また、 公共性を鍛え上げる、 といった内容が記載されている。 つまり情報公開によって政策論議が生産的・創造的になれば、 財政支出の適正化などはいうにおよばず、 公共価値の創出が可能になるというのだ。 まことに豊かな時代の行財政システムといえるではないか。 この川崎市のプランを最終目標に、 全国の自治体が財政情報をいかに開示するかの前向きの議論を積み重ねていってほしい。

―― 参考文献 ――
石原 信雄 (1984) 『地方財政調整制度論』 ぎょうせい。
小西砂千夫(1998a) 「自治体のディスクロ革命を−情報公開が財政危機を救う」 『週刊東洋経済』 5497号。
小西砂千夫(1998b) 「財政危機と地方債の信用度との本当の関係」 『地方債月報』 233号。
小西砂千夫(1999a) 「自治体予算・決算システム改革の方向と三重県の試み」 『TOMMOROW』 (あまがさき未来協会) 13巻4号。
小西砂千夫(1999b) 「地方財政危機は格付けでは表せない−地方債格付けは自治体 「破綻」 時代への警告」 『週刊東洋経済』 5552号。
小西砂千夫(1999c) 「市町村合併と住民自治の促進をどのように両立させるか−広域化のもとでの狭域化の必要性とその具体的方法について」、 NIRA研究報告書 『地方政府のガバナンスに関する研究』 総合研究開発機構。
吉田 和男(1998) 『地方分権のための地方財政改革』 有斐閣。


■小西 砂千夫 (こにし・さちお)
  1960年大阪市生まれ。 1983年関西学院大学経済学部卒業。 1988年関西学院大学大学院経済学研究科博士課程修了、 博士 (経済学)。 現在、 関西学院大学大学院経済学研究科/産業研究所教授、 学長補佐。 専攻は財政学、 地域経済論。 主著に 『日本の税制改革』 (有斐閣、 1997年)、 『転換期の財政投融資』 (共著、 有斐閣、 1996年)、 『淡路島の地域おこし』 (共著、 お茶の水書房、 1993年) などがある。 自治省 「地方行財政ビジョン委員会」 委員、 自治省 「市町村合併研究会」 委員。


情報誌「岐阜を考える」1999年記念号
岐阜県産業経済研究センター

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