(3) 県内主要企業経営者等ヒアリング結果(概要)
以下は、県内中小企業経営者等のヒアリングを通じて、最近の産業別景気動向や企業経営の特徴的な新たな取り組みを中心に整理したものである。もとより本ヒアリングには限りがあり、これが産業全体の動向を示すものではない。
なお、ヒアリングは個別聴取方式により十数名程度の中小企業経営者等を対象に、平成10年12月1日〜12月16日に実施した。
1 電機機械製造業
- 親会社の内製化の方針もあり、当社もつらい立場にたたされている。だから当社の電機工場ではニッチのモーターを作っている。それは大型送風機などで、あまり量が出ないで、特殊モーターで、なるべく手が掛かるものだ。
2 土木建設業
- 公共事業の発注は現実には予算額ほど潤沢に発注はされていない。用地の問題が解決されていないものは発注が止まったりのびているような状況だ。
- 民間からの受注は冷え込んでいる。一時はマンション建設がよく出たが、足が鈍ってきている。発注条件についてもシビアになってきた。
- この業界は技術力の勝負の世界なので、やはり技術立社として技術で立ちむかえれる小さいけれどピリッと光るものがあるというような技術開発を目指している。
- コストダウンについては、例えば建築でもよく一概に海外に比べると日本の建設費が高いといわれるが、成約条件が例えばアメリカの建築基準法と日本の建築基準法と一緒に同じレベルで判断している。法整備というか規制緩和への配慮が必要だ。
- 公共事業が大変増えたとう印象はない。公共事業で補正が付いたものは年が明けてからではと思っている。
- カナダ産のプレハブ住宅の事業をしている。向こうの企業は契約の際、経営内容を重視する。利益率が重視される国際標準の取引の仕方だ。
- ISOというのは企業イメージにプラスに働くので、9001か9002どちらかを取得するつもり。国際規格に合わせるという意味もある。
- 建設業界も今後技術に立脚したビジネスがウェートを占めるようになると思う。係長以上は年俸制を採用している。若い人には今まで通り給料制を取っている。儲けた分は社員に還元するという方針である。
3 建設関連産業(エレベーター製造)
- ホームエレベーターについては、設置率が徐々に上昇しているので、住宅着工件数を気にするよりも、設置率を伸ばすことに努力しようとしている。価格は、毎年7〜8%のデフレが続いていて、10年前は1台700万円であったのが最近は200万程度まで落ちている。
- ビル用の小型エレベーターについては、最も良かった1991年当時の65%にまで落ちている。価格も下がっており、量の減と価格の低下のダブルパンチとなっている。
- エレベーターのような大きくて加工度の集積が低いものは、需要の中心に立地するのが一番いいのである。ここ(美濃市)は高速道路の繋がりも計算して選んだのだが、非常に良かったと思っている。
4 化学工業
- 主力製品は、塗料やペンキ・建具等の住宅関連の工業用製品を製造している。住宅着工戸数が落ち込んでいるので、今年度は、数量的に前年比15−6%、売上金額で12−3%減の落ち込みとなる。
- 主力製品の落ち込む中、ウェイトは小さいが、食品や医薬の部門は景気の影響が少ない。
- 設備投資については、量を期待してのまたは生産能力を上げるための投資はない。生産性を上げるためまたは、省力化のためや性能のいいものを作るための投資を行っている。
- 景気は量的な回復は望めない。それにあった事業内容を考えないといけない。自分の得意分野に資源を集中して競争に勝たねばならない。そのために意識的に仕事を選別して収益性の悪いものは切り捨てている。
- 内陸県の岐阜に立地しているので、何十万トンといった大規模のものはできな い。それゆえ、ある程度付加価値の高いものを追求している。そうすることで、大規模生産を行っているところと棲み分けができ、海外との競合も少ないと思う。
5 重機等製造業(産業機械、航空機製造)
- 当社の景気は世間とは反対であり、今期は売り上げも利益も過去最高となっている。工作機械も航空機も運がよかったが、これから悪くなると思う。
- 航空機は、若干落ちてくると予想されるが、国家レベルで進めているプロジェクトであることから、悪い時期もそれほど長くないと思う。
- 当社のものづくりの哲学としては、ものは1個づつ作るというものである。その意識を徹底するための環境やノウハウを、長期間かけて整備してきた。その結果想像を絶する高い経常利益が出た。100個作っても1個づつ作っても、1個あたりの利益は同じにした。また、全品検査体制も可能になっている。
- 工作機械の競争力の強みは、下請けとか周辺機器メーカーがきちんとしていることである。関連メーカーのすべてのレベルが高いのである。
- 機械の音など微妙な違いがわかるような技術の継承が課題である。今後徹底して技術の基礎教育を行なう予定である。
- 工作機械業界では、日本市場よりも海外市場の方が売上が多い。日本市場は全体の売上の25%から30%ぐらいで、残りをアメリカ、ヨーロッパ市場等が半分ずつを占める。
- 最近の工作機械業界の市場動向を見ると、日本市場の低迷、欧米市場を中心とした海外市場の好調という構図があり、トータルとしてはプラスであったが、今年8月以降のアメリカ市場の悪化、ヨーロッパ市場でもイギリスに一時の勢いがなくなってきている。このような中、本質的には日本、東南アジア、欧米等の市場で均等に受注があるのが望ましい。
- 日本はこの業界では、技術的にもシェア的にもトップクラスであり、その要素としては、品質やメカ的、電気的な高速加工への取組が挙げられる。
- 設備投資は、フル生産の時ではなく生産が下がった景気が悪い時にやるべきだと思う。現在は生産のピークである昨年から若干落ちている。
- 独創性のある人、新しいものを考え出す人、ひらめきのある人が必要になってきており、そういった人材を育てることが重要である。但し、これはあくまでも過去の経験等ノウハウの蓄積があってのことである。
6 卸売業
- ギフト市場は、2兆円ぐらいで、そのうち当社のような企業向けイベントギフトの市場規模は、2000億円。当社のような100億円に満たない規模の会社は、不景気だから売上が下がるとか言えない立場。伸ばそうと思えばいくらでも伸ばす余地はある。
- 現在の景気は異常だとは思わない。企業の体質改善が不可欠。本質的に経営の考え方やあり方など、見直しが必要。そうでないと生き残れない。
7 小売業(食品スーパー、百貨店、コンビニエンスストア)
- 店舗の新規、増築、改装、増床等で、売上はダウンすることはない。
- 生鮮食品を扱うのは難しく、各店の担当者が仕入れから販売まで管理している。
- 地方スーパーは、その地域の要望に早めに対応ができ、その地域で売れるものを集中的に売ることができるのが大手スーパーと比べて利点である。
- 郊外型の大型店はコミニュケーションの場所に過ぎず、生鮮食料品を扱っているほうから見ると関心は薄く、品揃え・鮮度管理や価格設定等でレベルアップを図っていけば、十分競争可能である。
- 従来の零細な八百屋等は消費者の要望を満たすには厳しいものがあり、後継者不足で廃業していくところが多い。
- 個食化や高齢化の進展で量販的な販売からきめ細かく販売していかなくてはならない。
- 地域の景況感は、今年8月くらいから一段と悪くなった感じで、岐阜地域4百貨店の売上も9月、10月と前年割れが続いている。但し、今後の見通しとしては、平成10年度がどん底で、来年度はこれ以上悪くなることはないと思う。
- 当社の取扱品目では、アパレル関連、特に紳士服、子供服の動きが良くない。但し婦人服は悪くない。また、購買客数は減ってはいないが、購買単価は下がっており、値頃感が重要になってきている。
- 百貨店は、郊外型ショッピングセンターに売上を食われている。特に、岐阜は車中心の社会であり、土・日は車で郊外のショッピングセンターへという流れになっている。
- 雇用面では、平成6年度以降、正社員は採用していない。今後についても、社員数を減らしていく。というのは、ものが売れなくなってきたことに加え、消費者が自分の判断で商品を買うようになってきたからで、大きな流れとしては、今までの百貨店の特徴である対面販売の良さまではいらなくなるだろう。
- 流通面では、産学協同はほとんど期待できない。一方、近代化の一例としては全国百貨店共通商品券があり好評であるが、課題もある。
- 百貨店とスーパーは、問屋の力で仕入商品が違う。これによりグレードの高い対面販売の百貨店、グレードの低いセルフサービスのスーパーという構図がある。
- JR高島屋の名古屋進出の影響は、少なからずあるものと思われるが、当社の顧客は名古屋までの往復1,000円ちょっとが気になる層なので、顧客ターゲットに合ったきめ細かい戦略を取ることで、生き残る道を模索していきたい。
8 木材・木工業
- 当社プレカット工場は前年より2割から3割多い状況だ。ただ問題は地場の工務店が力を落とし始めていることだ。
- 住宅産業というのは無駄の垂れ流しをしている産業ではないか。すなわち、まだまだコストダウンが可能だと思う。
- 大手の住宅設備機器メーカーでさえ、大手ハウスメーカーの系列下に入らざるを得ない時代に入ってきているように思われる。
9 観光産業・サービス業
- 全国で55,000件ほどガソリンスタンドがあるがこれからは淘汰され減っていく。今のSS(ガソリンスタンド)は供給過多の状態にある。日本においてはセルフ化の問題がある。セルフ化戦略には日本の消防法などの問題があり、最低2,500万の費用が必要。
- 安房トンネル開通効果により4〜7月は前年比10%以上のアップをみた。8〜10月は天候不順等により振るわなかったが11月は16%増と大幅に伸びるなど月によって差がある。12月はオフシーズンで例年とも伸びない。99年の見通しは98年春先の増加の反動もあり、決して明るくはない。
- 景気や海外旅行市場の低迷、価格競争の激化等により大手エージェントの収益性が悪く、リストラや手数料率のアップがなされている。6千軒ほどの旅館とつきあっていたのを3千件くらいに減らすためセレクトしてくる。品質、満足度、単価、手数料等の条件をクリアしなければ大手エージェンシーとつきあえないため旅館業界も苦しくなっている。
10 地方公共団体
- 地域の経済情勢としては、東海北陸自動車道の名神直結や長期的に東海環状自動車道の整備等があり、当地域にとっては追い風であるが、全般的には工業、非工業とも景気低迷している。
- 特に、金属加工、紙等の地場産業の低迷が著しい。紙業界は特殊紙と家庭紙に大きく分けられるが、その中でもトイレットペーパー等の家庭紙の低迷が大きい。このため業界としても、例えばビューティーモールドのような環境・リサイクル商品への転換も視野に入れていかなければならない。
- 小売店の販売額は伸びているが、中心市街地の小売店は低迷している。このため、「うだつがあがる街」として交流人口の活性化をやっていきたい。具体的には、若い人に来てもらえるような遊びや文化、芸術を活かした商店街を目指したい。
- このため「紙の芸術村作品展」「街あかりのアート展」等の和紙を使用した各種文化的事業を行っており、これにより高山のように全国から人が寄りつくような状況をつくり出したいと思っている。ただ市の財政状況は大変厳しいので、新規投資には選別と優先順位をつけて特徴のある街づくりを目指すとともに、支出カット等合理化を同時に進めていかなければならない。
- 行政としては、これらの文化的事業等を通して、街のイメージ向上を図り、将来的には美濃にふさわしい小規模でも高付加価値、知的な産業を誘致していきたい。また、今後は街の活性化のために積極的に女性の活用を検討していきたい。
- 当市(東濃地方の市)の製造業はそこそこ頑張っている。雇用環境はとくに中高年に厳しい。
- 2003年に一部が待ち開きする新都市と現市街地との機能分担が課題。とくに、土岐プラズマリサーチパーク内に約5ヘクタールの商業集積地が出来る予定であり、中心市街地との関係を考慮する必要がある。
- 消費、小売はみんなのやる気次第。街にその効果が広がる。市はそれを支援していく。今後の地域整備は、市域の3割、1000万坪の市有地を活用した結節機能の充実、先端技術や新産業の取り込みが課題。
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