(2) 第4回岐阜県景況調査説明会議事録(未定稿)
平成11年2月15日
(財)岐阜県産業経済研究センター
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日時
平成10年12月18日(金) 13:30〜15:30
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場所
県民文化ホール 未来会館 大会議室(岐阜市学園町3丁目42番地)
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テーマ
「岐阜県をとりまく景気展望」
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出席者
[エコノミスト等 50音順]
原 耕平 氏 ((株)大和総研 理事)
宮川 努 氏 (日本開発銀行 名古屋支店 企画調査課長)
横山 昭雄 氏 ((株)岐阜銀行 頭取)
[調査結果報告・司会]
高津 定弘 ((財)岐阜県産業経済研究センター副理事長)
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議事内容(要約、発表順)
高津
98年10〜12月期の産研センターの「岐阜県景況調査」による景況DI(全業種)は▲56.9となり、実績が見通しを大きく上回ったのが特徴で「9月以降底打ちの兆し示す大幅な景況変化」との判断を下した。
判断の根拠の第1番目は、調査期間(12月上旬)前後に経営者の景況感のマインドを好転させるような出来事が多かったこと。具体的には11月16日の緊急経済対策23.9兆円の発表、24日の堺屋経済企画庁長官の「胎動」発言、30日の国会での総理の来年度プラス成長に対する決意表明、12月8日の月例経済報告での「変化の胎動」という文言、16日の税調での9.3兆円減税決定等々である。
第2番目の根拠は、当センターの景況ヒアリングにおいて、前回と異なり景気がこれ以上悪くなるという話をされた経営者がほとんどいなかったこと。経営理念、技術、生産システムの革新に注力している県内の2割くらいの企業が経済、社会全体の牽引力となってきていることが背景に、景況DIも改善されているのではないか。
当センターの「計量分析研究会」において試作した岐阜県版のCI(コンポジットインデックス)によれば、先行指数は98年5月が82.0で底であり、その後反転増加し8月が84.6となっている。もし、先行指数が数ヵ月先行すると仮定すれば、98年秋頃に岐阜県の景気が底打ちした可能性も否定できない。
経済指標の上でも多少明るさが出てきている。具体的には金属製品、機械3業種(電気・輸送・一般機械)における鉱工業生産指数、有効求人倍率、企業倒産件数、金融機関の貸出残高、新設住宅着工戸数の持家分、公共工事の動き等が回復基調にあることである。
そのほか、売上高は17.9ポイントの大幅な改善で「下落基調に歯止めかかる」、生産量・受注量は「1年半ぶりに[増加]に転じる製造業」、設備投資は「環境悪化傾向止まるものの踊り場に」、資金繰り・借入難易度は「依然として厳しいものの予想以上の改善示す」、雇用は「1年振りに改善」等の判断を下した。
宮川
全国の景気は97年の3月をピークにそれ以降下降局面に入ったが、東海地域(愛知、岐阜、三重、静岡の4県)は少し遅れて97年の夏頃をピークに秋以降下降局面に入ったと考えている。この要因は、主力産業である自動車産業が円安の恩恵を受けて夏頃まで生産が好調だったことや、製造業の設備投資が開銀のアンケート調査では7.2%増と相応の伸びをしていたことである。
東海地域は97年秋以降急速に景気が落ち込み、98年に入っても低迷が続いている。特に消費税率引き上げ以降、自動車販売が前年比マイナスを続けており、反動増の当てが外れた状況。円安の修正も好材料とはいえない。98年秋の軽自動車の販売好調や99年にトヨタが販売予定のベーシックカーの売れ行きに期待がかかる。
家計調査からみた民間消費は97年第2四半期から低迷。98年第2四半期は反動により若干プラスになるも第3四半期は前年比マイナス。
百貨店販売額は低迷。スーパー販売額は、東海地域では特に静岡県内での新規出店の影響により増加。
設備投資は下落傾向。工作機械は、依然海外受注はプラスなるも急速に国内受注が減少し受注総額はマイナス。開銀による設備投資アンケート(8月)をみると、製造業が1.1%増、非製造業が1.9%増、全産業では1.4%増と、製造業の牽引力がなくなっている。非製造業の伸びは名古屋市内での都市基盤整備(駅前ビル等)によるもの。
岐阜県は97年度実績は、製造業、非製造業とも2桁の伸びをみせ、全産業では28.7%増と大幅な伸び記録したが、98年度計画では反動減により全産業ではマイナス28.3%。
日銀短観でみると東海地区は全国平均に比べ2%くらい利益率が高い。収益部分に余裕があるので落ち込み方が緩やかであるともいえる。
住宅投資は、住宅金融公庫金利の低下(2%)により融資申込み件数が増加(98年第1・2四半期がプラス)。持家に下げ止まりの兆し、貸家、分譲は依然低迷。
公共投資は財政構造改革の影響により97年度から98年度前半まで低迷が持続。98年4月の総合経済対策の効果が9月以降あらわれてきており、公共工事請負金額は前年比2桁増の伸び。今後もかなり効果が出てくるものと思われる。
今回の不況・景気後退の最大の原因は景気循環ではなく、金融システムの機能不全。ただ岐阜県や東海地区での信用金庫まで含めた貸出残高は辛うじてプラスの伸びを維持しており、地元の地銀、信金からは資金が供給されている。開銀に設置している中堅企業支援センターの貸し渋り関係の相談件数をみても名古屋支店は他地域と比べ少ない方である。ただ98年10月以降急激に増加はしている。
雇用は97年秋以降、景気の悪化に伴なって急速に悪化。有効求人倍率や失業率も全国ほどではないにしても時系列的にみれば最悪の水準。
今後の見通しは、よほど強い勢いが出ない限りプラス成長は難しいが、不況の源である金融不安の解消が早ければ、在庫調整は今一歩のところまで来ていることもあり、早めの反転も期待できるかも知れない。公的資金導入に対する各金融機関の対応をみると横並び意識が多少少なくなったような印象を受けるが、こうした動きを市場が評価すれば、金融不安が解消されると考える。
堺屋太一経済企画庁長官の「胎動」発言もあったが、一部指標が好転したといっても従来ならば問題にされないほどのレベルの話であり、設備投資が全国的にみて下降局面にあることから、各指標が相殺しあって底ばいのような状況になるだろう。
東海地区の見通しは、生産面では自動車販売の落ち込みが激しいことから低迷が長引くとみられる。消費の落ち込みは他地区ほど厳しくはないが、生産の落ち込みが所得の落ち込みにつながることから回復には時間がかかると思われる。設備投資は、輸出を中心とする業者の含み収益や中部国際空港のようなビッグ・プロジェクトの下支え効果により急速に落ち込むとは考えにくい。全体的には緩やかな下降局面がしばらく持続するとみられる。
横山
日本の景気低迷には、長・中・短期の3つの要因がある。
第1の長期的な要因としては、東西冷戦体制崩壊後に世界がメガ・コンペティション(大競争)時代に突入したことにより、日本が戦後の高度経済成長後の「高原状態」を維持するのが困難になったことである。
第2の中期的な要因としては、14、5年ほど前から始まったバブルの生成が崩壊・収束過程にあること。
第3の短期的な要因としては、2年ほど前から始まった政府の「6大構造改革」による様々な措置である。具体的には消費税率の引き上げ、特別減税の廃止、医療費負担増による9兆円にものぼる国民負担増や、早期是正措置の導入等である。政府が日本経済の現況を見誤ったことが不況の原因である。
これら3つの要因が重なって日本経済がひどい状態になっているが、すべてに金融という問題が絡んでおり、金融という「血液」が「血行障害」を起こしているためである。
以上3つの要因はそれぞれ理由が異なっているため、性格別に対策をたてることが必要である。
短期的な要因に対しては自己資本比率指導や早期是正措置のタイミングが悪かったといっても引っ込めるわけにはいかないので、公共事業や減税によって需要をつける以外にないであろう。
中期的な要因であるバブル崩壊に対しては、あえて甘受する以外にないが、なるべく痛みを伴なわないような形で調整することがポイントになる。
長期的な要因であるメガ・コンペティションに対しては、技術革新により他ではまねのできないものだけを作るように産業構造を転換していくことが、唯一の生き残りの道である。
最近の経済学は需要面に重点を置き過ぎているが、付加価値を生むことの方が本質的にいって大事ではないか。
技術革新とそれを支援するシステムづくりや金融システムの再生が地方政府を含めた政府の役割であり、最も有効な景気振興策である。
日本石油と三菱石油が提携するなどの合従連衡の動きや、トヨタのプリウスなどの環境を考えた新商品開発の動きを、本格的な胎動の兆しとみている。
原
世界のマーケットで売られる製品の供給力が3倍、4倍になり、競争激化によって淘汰されている状況。
日本では92年〜95年まで卸売物価がマイナスとなり、95年から半導体を中心とした情報関連設備投資が始まった。それを支えたのが円安、低金利であった。
97年以降の米国の実質金利の異常な高さによって、アジアにおける資金が引き上げられ、97年夏場以降のタイの通貨不安、アジア不況につながった。
世界の40億のマーケットなかで、いわゆるものを作っている国がデフレに入り、ものとお金のバランスが大きく崩れているなかで境のお金をどこに割り振るかという問題が、ここ数年起こっている。
ここのところ、デリバティブ的なものを受けて、アメリカの実質金利やアングロサクソン系の金利が低下し、円安修正的な動きが出ている。99年についてみればヨーロッパ通貨の進展により米国ドル債に対する若干の割り振りの変化によりドル安が、また、アングロサクソン系の実質金利の低下からポンドの下落が起こり、円は1〜3月期にかけて相当強いポジションにいく。
日本は実質金利の高さをどう調整するかが問題であるが、公共投資、政府機関等の迂回的な融資、住宅投資等により実質金利が低下し、日本経済は春から夏場にかけて底を打つだろう。
アジア経済は若干の安定、イギリスはポンドの大幅な下落、アメリカは家計需要中心に堅調であり、2%を切るかもしれないが急激な屈折はないとみている。
日本における設備投資のモーメントは潜在的にはあり、資金の動きが活発化すれば回復は予想以上に早いのではないか。特にデジタル通信に代表される情報通信分野が牽引役になるとみられる。公共投資もよいがやはり民間の力で動き出すべきである。
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