平成11年6月18日

供給過剰の産業構造
変わりゆく産業構造と地域政策の課題

(株)大和総研
理事 原 耕平

 大和総研の原です。この景況調査、約1年半ぐらやらせていただいています。先ほどからよく質問していただいている加納先生と最初始めまして、ようやくここまで漕ぎ着けたかなというふうに思っています。

 今日、私がお話することは、オレンジ色の資料、この資料の真ん中程度の、ちょうどブルーの色から後半のところです。

 日本経済、いわゆる過去約100兆円ぐらいの経済対策、GDPの約5分の1、それぐらいの規模の景気対策をしたにもかかわらず、どうもいつもとリズム感が違う。最近の問題点というのはどうも需要サイドではなくして、供給のところをさわらなければいけないのではないだかろうか。公共投資よりも規制緩和とか、税制の改革とか、そういうところが問題じゃないかということが言われてきております。

 今からご説明することは、結論から言いますと、日本経済、85年の円高を受けて、産業構造、特に供給サイド、輸入というふうに考えていただいても結構ですが、輸入の大幅な上昇が見られて、特に製造業においては良いところ、悪いところが非常に鮮明となってきています。もう少し違った言い方をしますと、過去日本で需要が増えた場合に、その大半が国内の生産に結びついておったのが、いわゆる製品の輸入に取って代わるということです。どうも需要のうち相当部分が海外の方に流れて行っているといったことがあります。

 日本というのは資源小国でして、石油等そういった原材料を入れるといった意味で輸入が多いということが言われるわけなんですが、現在輸入金額で見まして、輸入総額の62パーセントが製品輸入に取って代わっているわけです。その動きが85年の円高、それから92年からのいわゆる製品輸入の上昇、この二つによって日本経済に供給サイドからの変化、いわゆる産業構造の変化が起こっていると言えるわけです。

 製品輸入というのはどういうことかと言いますと、日本でいわゆる欲しい物、その製品を海外の土地を使って、海外の人を使って、海外の機械を使って日本の需要に対応するということです。どういう意味かと言いますと、日本は国土が狭いと言いますが日本の土地は広がったということです。それから日本の我々も含めた労働者の数も増えたということです。日本における機械も増えたということです。ですから土地の値段も下がり、人も余り賃金が下がり、さらに機械も余っているということです。製品輸入比率が非常に高まった状況において、今どうも過去に比べてリズム感が弱いというところは、ここにあると思います。

 それからもう一つ大きな特徴は、日本というのは円高ということで常に付加価値を高める努力をしてきました。そういった意味で製造業は加工組立産業の方へどんどんシフトしてきました。そして円高になると益々それを克服するために合理化投資と、それから生産性の上昇ということで、大企業から中小のところまで非常なる、いわゆる苦労して頑張ってきました。一面には、それが加工組立産業を非常に強くしたという面がありますが、この資料を見ていただいてもわかりますように、円高に対抗して頑張っている間に、どうも足下の産業を弱めるような形になってきています。一番いい例が繊維産業。製品輸入比率は20パーセントで、いわゆる資源輸入である石油石炭の輸入比率10パーセントの倍です。それから日本は先ほど加工組立産業にシフトしたと言いましたが、電気、それから精密、一般とそういった加工組立産業についても製品輸入比率が非常に高まってきています。財別に見ればいわゆる消費財。これは皆さん物を買った時に日本の会社のブランド名でも日本で作っていない、アジアで作ってるということによく気付かれることでしょう。繊維などそうですね。機械についても半導体の輸入が増えてきており、それから白物の家電もそうですが、そういったものが増えてきている。
この結果、どういうことが起こっているかというと、関東、東海、近畿という大都市圏に集積している産業構造、これは加工組立に特化して頑張ってきたわけですけれど、そこの底辺のところが潰されてきているということです。今回、とくに97、98年以降の落ち込みで非常に印象的なのは関東の落ち込みです。近畿の落ち込みです。その中では東海地域はある意味では相対的にはいいんですが、いわゆる都市圏のところの産業が崩れてきているということが言えると思います。逆に東北とか九州とかそういった地域のところの加工組立産業の比率が全体的に上がってきています。この産業構造の変化を通じて雇用の確保、逆には解雇ということがおこり、この結果、地域における所得の変化というところに大きく出てきているわけです。これは取りも直さず内需のエンジンであるわけですが、そういった意味で各地域におけるいわゆる消費の弱さ、内需の弱さというものが出てきているわけです。

 もう一度繰り返しますと、日本経済というのは円高というものを頑張って乗り越えてきた結果、いわゆる輸入の増加、これは直接投資を含めまして輸入の跳ね返りから産業構造、これはいわゆる加工組立、それから地方資源型、ほとんど全ての産業においてリーク、言い換えれば、漏れが始まってきているということです。

 景気が強くなりますと金利が上昇して円高を招くという傾向、これはマンデフレミング・モデルが働くという言い方もするんですが、金融自由化が進みますとまさにその傾向がより強くなってきているわけなんです。その意味ではいわゆる公共投資、これは景気の支えとして通常はいいと思いまが、ただ最近言われているように乗数が弱い、景気浮揚効果が弱いという一つにこの漏れがあるからです。それから単なる公共投資をやって景気を立ち上げ、金利の上昇、それから円高ということになりますと、製品輸入が増え、いわゆる地方経済を助ける意味での単純的な公共投資はむしろ地場産業の衰退といいますか、それを加速するということが言えると思います。但し、大きい流れでみますと、日本経済というのは、特に製造業を中心として85年から完全に戦略転換をしておって、今ちょうど中間点にいると思います。今後、地場産業といえども国内の需要に頼っているのではなくて、いわゆる海外との取引、特にアジアとの取引の関係をやっていかないと産業構造がうまく転換していかないと思います。

 輸出と言いますと、円安にならないと輸出が伸びないということがありますが、この資料にも示しておきましたが、アジア向けの輸出は円高の過程で大幅な上昇です。日本において、90年以降、貿易相手国としてはアジアがダントツにトップで4割以上。アメリカが2割、ヨーロッパが1割。今申し上げましたように、日本は産業構造の転換においてよりアジアとの関係が大きくなってきているのです。そのアジアとの調整を通じて、いわゆる産業構造の調整をやっているわけですが、現時点においては製品輸入の増加というところが非常に強く出てきています。今後はそういった意味において加工組立型はもちろん、地場産業においても物事の発想というのを変えないと、日本経済というのは長期にわたって低迷する可能性が非常に高いということです。

 これをよりマクロ的にいいますと、景気が回復しても、輸入の増加というのは過去以上であるということです。ということは恒常的に黒字を続けてきた日本経済も、今後はどちらかというと貿易の黒字は減る方向に入るというようにみていいのだと思います。それから自由貿易、自由貿易と学者さんが言われていますが、アメリカでいえば製品輸入比率が5割を超したのが1960年代ですが、それ以降アメリカ経済は貿易が赤字に転落ということです。特に70年代から90年、95年まで約25年間それに悩んできたわけですが、日本経済も先ほど申し上げたように内需の弱さにかかわらず、製品輸入比率は62パーセントで落ちておりません。そのことを考えると。日本も、21世紀というと大げさですが、これから数年先から初めて日本の貿易黒字というのが縮小傾向に入っていく可能性があるということです。下手をすると2004年以降には貿易の黒字が赤字に転換する可能性さえあるということです。

 それで今からグラフに沿って、現実の姿をお見せいたします。その前に、国内の生産というのはどういう意味かといいますと、まず需要があるわけです。国内の需要、それから輸出の需要があります。その需要を輸入で賄う。残りが国内生産で、先ほど両先生のお話にあった生産指数というのは、国内需要と海外需要、すなわち輸出を足したものから輸入を差っ引いて、残ったものの額が国内生産ということです。

 これを見ていただくと、前回のバブルの時と今回のバブルの時とどうもモーメンタム、動きが弱い。特にバブルの時は異常だということがあるかもしれませんが、これを見ていただいても設備投資、これは非常にしっかりしているなか、耐久消費財、グラフの青いところが非常に弱い。先ほど申し上げましたように、輸入の圧力が非常に強い。取られている分が多いということです。そういった供給サイドの変化、いわゆる製品輸入の増加というのが、ここでいいますと黄色の棒グラフ、これは製造業の雇用の伸びを示したものですが、93年から落ち込んでいます。97年に一度ちょっと戻ったんですけれど、もう一段大きな調整が再度始まっています。

 日本経済の過去の動きを見ていますと、オイルショック、石油危機の時に雇用調整というのが製造業で5年でした。今回はこれを抜いて5年以上の雇用調整に入っているということです。石油ショックというのは石油が入らないという意味で供給ショックで、入らないんですから値段が上がるという意味でインフレであったわけです。今回の場合には供給が青天井だということです。いくらでも入るということですから価格が下がっているということです。ですからデフレ的な様相があるわけです。

 このデフレ的な要素の追加的なものとしては、89、90年と、いわゆる米ソのデタントといいますが、協調ですね。それから東西ドイツの合併。いわゆる社会主義国から市場資本主義国への参入という流れが起こったということがあります。大量の人が市場に入ったわけです。そういった意味での生産に従事する人が増えたわけですから、これが世界的な物価といいますか製品価格の低下を生んでいます。アメリカ経済が非常に強いわけですが、そういった平和の配当的なものがアメリカのみならず日本にも来ているということが言えると思います。そういったものも受けて、今回の雇用調整というのは、供給のところが青天井という中で、先ほど申し上げましたように雇用調整がより大きく出てきているというわけです。

 次に総需要の動きを見て頂きます。青いグラフが輸出、それから赤い色が内需であるわけで、これで見ていただいても97年から内需が急速に下がる中でも輸出は意外と頑張っておったということが言えると思います。これはヨーロッパ向けの好調というのがあります。よって、今回の落ち込みの大きいところはアジア向け輸出と内需のところと言えると思います。その内需の裏側には、製品輸入がこれだけ悪くても、製品輸入比率が下がらないという状況があると思います。

 次に国内向けの出荷という動きを見てください。国内の需要に対してどれだけ出荷に向かったかということですが、特徴的なのはいわゆる資本財といいますか、この落ち込みが非常に大きい。これがやはり設備投資が非常に弱いところを示しているわけです。先ほど申し上げましたように、過剰な設備を日本は抱えている。それは特に中小企業のところで大きいということが言えると思います。

 一方、輸出向け出荷の動きを見て頂きます。先ほど非常に頑張っていたということをお話申し上げたわけですけれど、よく見ていただきたいのは93年から95年。これは円高に向かった非常に厳しいところであったわけですけれど、ここにおいていわゆる生産財等が非常に堅調に推移していたということが一つ大きな特徴です。その後、資本財の伸びが非常に大きくなっています。耐久消費財の方は、どちらかというとむしろ為替の影響が非常に大きい動きをしているなということを少し頭に置いて頂ければよろしいかなと思います。

 需要サイドをお話しましたが、ここで先ほどお話申し上げた供給について見てみましょう。このグラフにおいては青色のところを見ていただきたい。91、92、93、94年といわゆる内需といいますか、国内の生産が落ち込む中で、この青い色、輸入を見ていただきますとプラスで推移しているということですね。本来ならば国内の生産が落ちているのならば輸入なんていうのは当然増えないということなんでしょうが、ここにみられるように輸入の増加というのが非常に顕著で、特に92年以降の動きというのは新しい動きだというふうに見てよいと思います。

 その輸入を財別といいますか、消費財だとか生産財だとか、そういうような形で見ていただきますと、前回については生産財、それから非耐久消費財、これは円高の85年以降の動きの時はそういう形であったわけですが、今回の場合特徴的なのは、生産財とそれから資本財が伸びているということです。日本が必要としているところの製品輸入が非常に高い。現状におきましてもどちらかといえば輸入を引っ張りあげているような形です。昨日、日本の貿易統計が発表されましたけれど、アジアからの半導体の輸入というのはプラスになっているというところにもお分かりかと思います。

 この観点から日本の輸出比率と輸入比率を見ますと、全体的には、この左側のグラフなんですが、輸出比率が輸入比率を上回っています。これは輸出で稼いでいるという姿は見えるわけなんですが、この黄色い線、輸入比率、この動きを見ていただくと、85年のところから、そして92年のところから上昇傾向をより鮮明にしています。また、国内で売れない場合には輸出に出すわけですが、97,98年とそういった意味で輸出比率が上がっています。国内需要が悪いにもかかわらず、黄色い線、輸入比率が、10パーセントのところで横張っているというのが現状置かれている日本経済の姿だということです。
これを財別で見ますと、右側が資本財。これにつきましても同様な傾向。全体的な動きと同様の傾向が見えます。それから建設財、これは本質的には内需型なんですが、これも85年以降輸入のほうが増えてきている。生産財、これは日本の生産の中間財的なところで非常に大事なところなんですが、これは輸出と輸入と比べると輸入のほうが多いんですが、非常にパラレル、平行に動いて、意外とうまこと代替が起こっているかなというふうに見ていい産業のグループだと思います。次、耐久消費財。これは輸出比率が右下がりで下がってきているのはいわゆる乗用車なども全部含めてだと思いますが、より堅調なのは輸入のところです。耐久消費財というのは輸出に依存するのに強いところにも関わらず、やはり海外からの輸入圧力が高まってきているといえます。非耐久消費財、これは完全に輸入のほうが上回ってきているという状況が見えます。

 今度はこれを産業別のグループ分けをしまして、加工組立型、それから基礎素材型、地方資源型、雑貨型と分けてみます。この区分けにつきましては正誤表の後ろにつけておりますが、生産で見ますと先ほど申し上げましたように、日本経済というのは加工組立型産業の方シフトしているという形がみえ、非常に堅調であるということがいえますが、問題は黄緑色といいますか、地方資源型。代表的なのは繊維ですが、その落ち込み、これは非常に強い。これも90年代に入ってほとんど伸びた時はないというぐらいの状況にあるということを頭においていただければ良いと思います。

 次、これを今度国内向け出荷についてはどうかとみますと、先ほど言いましたように設備投資等の反映といいますか、97年以降、98年に入って特にすごいんですが、このように急激な落ち込みを示しております。これはやはり国内の需要では設備投資が弱いということを示唆しております。それから基礎素材は大体材料になるわけですから、加工組立と同じような動きをしています。特徴的なのは地方資源型がより弱い、繊維が弱いというふうに言えると思います。

 需要のうち輸出。これで見てみますと先ほど申し上げましたように加工組立型、そしてもっと特徴的なのは基礎素材が輸出型に少し転換してきているというところが見えると思います。平たくもう一度全体的に輸出比率から見てみますと、加工組立型、一番上の折れ線グラフですが、このでこぼこしている動きは、内需がいい時は下がり、内需が悪いと上がるという動きは示すんですが、ほぼ一定水準の幅に動いているということです。グラフの中で下の方の2つ。雑貨型と地方資源型、これは輸出比率が非常に低い内需型です。真ん中のところの基礎素材。これは90年にかけて全体的に輸出比率は下がってきたんですが、その後上昇に転じて、現状においては過去の水準の10パーセントを上回るところにきています。これは技術、体力的に海外でも戦える状況になってきているといった明るい状況も見えるということです。

 供給のところを見ていただきますと、何度も繰り返すのはなんですが、黄緑色の地方資源型の輸入が目立って増えているということが言えますし、加工組立型、それから基礎素材というところで、輸入圧力というのが非常に強くなってきています。問題はこういったものは極論すれば、外国企業のところから買っているのではなくて、日本がアジアに進出していって、日本の企業から、そこからのものを取り戻しているということであって、企業全体としてはそう悪くはない。ただ働いている我々としてみれば、雇用のところで非常に厳しいということを頭に置いておくことは必要だと思います。

 そういった意味で輸入の方を見ていただきますと、上の赤いのがいわゆる基礎素材型。これは85年の円高等ポンと上がって横這いに推移しているわけですが、問題はその下の青色に三角の付いたグラフ。これを見ていただきますと、95年以降は基礎素材型と地方資源型というのはほぼ同等だということです。地方資源型が、いわゆる原材料の輸入と同じような位置に入ってしまったということです。それから真ん中のところを抜けてその下のグラフ、これは加工組立ですが、先ほど申し上げましたように85年、それから95年以降の大幅な製品輸入の上昇というのが示されています。雑貨型というのは国内内需型なんですが、それでも輸入比率は高まってきているということです。

 加工組立について見ますと金属製品、先ほどからいろんな話が出ましたが、85年から輸出比率が下がっている中で、輸入比率が96年から上回っている。輸入に食われているということです。一般機械、輸送機械、これは先ほど申し上げたようなだいたい同じ様な形。輸出する力は非常に強いんですが、入ってくる分が多くなってきている。より特徴的なのは精密機械。96年以降、瞬間的に輸入の方が増えてきている。消費財に近いところの精密というのは非常に輸入に殺られている。精密機械というのは都市圏に集積しているんですが、東京、近畿、この地域の落ち込みが非常に大きい。他方、東海の方は非常に頑張っているというふうにいえると思います。これも産業構造の変化が大きく示されている業種であろうということです。

 素材型でいきますと、非鉄金属、石油石炭とこれは輸入型です。それから鉄鋼、これは輸出型。これは右上がりに上がってきていますが、ようやく日本の鉄鋼も合理化、それから製品の充実ということでもう一度輸出力を少し取り戻したかなということがいえると思います。次、化学工業、これは95年までどちらかといえば輸入に押されているところがあったわけですけれど、それ以降は輸出製品として力を付けたというところで、化学工業については非常に力強い動きが見えるというふうにいって良いと思います。

 

 地方資源型では、この右側の先ほど申し上げましたように繊維、いわゆる円高、そして製品輸入の増加という92年からの煽りを受けて輸入が大幅な上昇。その結果国内の生産というのは長期にわたって右下がりという状況になっているわけです。輸出比率もそんなに高くないということは、内需を輸入がほとんど食ってきているということで、この繊維産業もいわゆる地場産業として内需型だけではなくして、他に輸出を求めなければ国内における地位というのはほぼ消滅に近いというようなところまできているということです。

 その背景には先ほど申し上げました85年からのいわゆる日本の海外投資、特にアジアへの海外投資というものが非常に大きいわけですが、このグラフを見ていただいても左側の地域別の輸出を見ていただきましても赤いグラフ、アジアが非常に強い。その右を見ていただきます。90年から青いグラフ、米国が下がり、赤いグラフ、アジア向けが上がっています。この点線で示してあるのは為替レートです。先ほど申し上げましたように円が安くないと輸出が伸びないという話ではないということです。このアジア向けの輸出は何かというと、資本財と生産財です。日本がアジアに生産機能を移した。それをサポートする輸出が円高でも出ていっているということがいえるわけです。そういった意味でも日本のいわゆる需要としての輸出構造も大幅に変化しているということがいえると思います。

 次に輸入サイドからいきますと、これも同じようで、いわゆるアジアからの輸入というのが非常に大きいということです。これは日本が自ら進んでやったことであって、決して他の企業から、外国企業から日本の内需が脅かされているということではないと思います。そういった意味でこのグラフの右側に見ていただきますように、アジアとの関係が非常に高い。85年から円高、そして直接投資、そしてその生産基盤からの戻りということで、日本とアジアとの関係が非常に強いなかで、日本の産業が加工組立型を中心として産業構造の調整を自ら行っているわけですが、その反面、裏側では繊維とかそういった地方資源型のところが殺られてきているということが大きいというふうにいって良いと思います。

 最後になりますが、今回の不況の中、産業構造の変化の中で左側のグラフなんですが、これは関東、近畿、東海とそして各地域の加工組立型の産業構成を付加価値別に書いてありますが、いわゆる都市圏型の加工組立型の落ち込みが大きい。今回は地方が大変だということがいわれますが、日本の産業構造からみますと、いわゆる都市集積型の加工組立産業の落ち込みが非常に大きい。特に関東が大きいということがいえると思います。逆に九州、東北、そういった地方のところは伸びてきています。

 いわゆる産業構造のシフト、古い体質のいわゆる大企業型、ピラミッド型、都市型できた産業が殺られている反面、飛び火的に動いた産業というのは頑張っているということが鮮明になっています。私、福井県出身ですが、北陸だけは残念ながら、地方でありながら新しい恩恵に浴さず、下がっておりますが、これはなんとかしなければいかんですが、これは逆に非常に大きな特徴です。
そういった意味で、日本経済というのは85年からの産業調整の中間点にあると思います。米国経済についてみれば、60年代末、70年代から95年までの約25年間の調整があったわけです。日本経済はそれでも若干強いとしても、少なくとも2005年頃というところまでこの産業構造の調整は続くと考えておく必要があるのではないでしょうか。その間、貿易の黒字は減っていくという可能性が高いということも考えておかなくちゃいけないとみております。以上です。


質問
 産業構造につきましてご説明をいただきましたけれど、アジアとの結びつきが非常に強くなったというお話でございましたが、バブル期に住み分けとか、国際分業とかいう言葉がずいぶん出まして、私どもそういう認識を持ったわけですけれど、今日のご説明を聞きますとそういう住み分けとか国際分業よりも市場原理に基づいてどんどん変化していくというように聞いたんですけれど、そのへんいかがでしょう。

回答(原)
 住み分けという点では例えば精密機械なんかというのはきれいな棲み分けができていると思います。それから消費財のところでもきれいな住み分けができていると思います。そういった意味で本質的には技術の移転というのは徐々に進んで、ゆっくりだったはずなんです、始めは。それがやはり92年以降逆に、最新のMDでもマレーシアに行ってしまうようなことであって、相当な経済原則といいますか、そういったところのバランスシート上の問題も含めましてそれが加速しているというのが本当だと思います。住み分けは起こるということを決めたのはやはり240円から85年のプラザ合意の時ですね、120円に行った時に、本質的に日本の製造業は決心したんだろうと思っています。それが92年以降出てきているわけで、これに非製造業のところが調整を迫られている。これが流通問題であり、コンピュータによってある意味ではホワイトカラーのところが調整されてきているというのが日本全体の動きであって、産業からいけば本当に10何年前に日本経済というのは住み分け等含めてやってしまって、そして今の経済要因というのが追加的に出てきてそれが加速されているというのが現状だと思います。

質問
 そうしますと今のお話の中で、資本財の段階はかなり長期間にわたって住み分けが進んでいくと。消費財は時間とともに薄れていくと言いますか。

回答
 消費財の場合はどちらかというと価格のところで非常に大きく影響を受けるということですね。ですから円安になれば止まる方向は見えますね。ただし産業構造の変化という意味で生産財と資本財のところはこれは大きなうねりとして動きだしているということですね。止まらないということです。