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物流に想う 加藤 晃(岐阜大学名誉教授) |
戦後50年の間に物流の姿も様変わりに変化してきた。物資の大量輸送は貨物列車でというのが常識であったのが昭和30年代までの年代。それからは大型トラックによる貨物輸送がだんだんと比重を増してゆく中で一つの転機があった。昭和49年の国鉄労組の大ストライキによる輸送停滞という労組側の脅かし作戦が、トラック輸送によって産業や国民生活に決定的な混乱を起こさせなかったことである。これが逆にトラック輸送の信頼性を高め、鉄道からトラックへと切り替わっていったことが思い出される。今、物流はロジスティックス(戦略)と呼ばれているが、このストライキなどは明らかに労組側の戦略ミスで、見通しの甘さが招いた失敗であり、国鉄民営化への引き金であったと思う。
現在大変便利に使われている宅配便も、その出発は、先発事業者があるデパートの地域配達を差し止められたことから始められたと聞く。それまでのトラック輸送は産業用の貨物が中心で、個人の扱う小型の荷物発送は、鉄道の手小荷物扱いか郵便局の小包しかなかった。この企業は小口荷物の輸送に目をつけて、利用者が末端の取扱い店まで持ってきてくれれば、後はターミナルで大型車に積み替えて効率的な輸送で翌日には届け先に着くという体制をとって利用者を引きつけた。これは明らかに、鉄道の手小荷物や郵便小包よりもはるかにサービスの良い物流システムであった。
この宅配便は日本から始まり、今や世界各国で応用されている。現在は宅配輸送も大口の貨物輸送もコンピュータによって貨物流動が効率的にしかも正確に管理されている。次世代の物流はどう変わってゆくのか興味のある問題である。この物流のことを英語でロジスティックス(物資補給の戦略)と呼ぶのは多分に暗示的である。
物流である以上、貨物を合理的に確実に安全に動かすことが中心であるが、その貨物を的確に掘り起こす戦略がまずは大切である。そのためには言い古された言葉であるが、人、物、金、情報の動きを早く的確に把んで行動に移ることが大切である。ここでいう人とは単なる人口でもなければ企業人だけでもない。人がどんな生活スタイルをしているのか、また変化していくのかを、労働、憩い、遊びまでを含めて人の活動すべてを把握し、それがロジスティックスにどう係わるかを検討しておくことを指している。遊びが物流と関係があるかと思われる方は、スキーやゴルフに行く人や海外旅行の女の子が宅配便で荷物を運んでいる思い出していただきたい。
物・金は経済に直接かかわる部分であるから物流とは正に直接関係するわけである。ただ単純に産業、物資、貨物という理解ではなくて、ビジネス環境がどうなっているかという具合に幅広く経済の周辺部分までを考えていくのが勝者への道であろう。私はかつて電子産業のトップの方になぜ岐阜県には電子産業の立地が少ないのかを聞いたことがある。その時の返答は、情報、学術、研究、それに交通の整備などビジネス環境が十分でないということであった。この点は現在は随分改善されてきたと思う。要するに単体的な物、金ではなくて幅広いビジネス関連の機能を高めていくことが物流戦略には欠かせないと思う。
情報については改めていうまでもない。どこで誰が何をやっているのか。それがビジネスなのか、個人の私的な活動なのか、それらを掘りおこしていくことが情報戦略としては大切である。すでに実行されていることであるが、地域の名産品を消費者に直接配達したり中継したりすることも拡大された物流の範囲である。これまでは小口の貨物は国内流動が中心であったが、これからは量は少ないかも知れないがグローバルに世界中を相手に動く時代に入ってきている。
さて、物流にとっては、道路、鉄道、空港などの社会基盤の整備が必要なことはいうまでもない。岐阜県は海のない県なので、港や空港へのアクセス整備は非常に重要である。この点では東海北陸道が延伸し、東海環状道路の整備が始まったことは強力な支援となる。 また、関市の物流拠点として計画されていた候補地が、平成六年に道路一体型物流拠点整備のモデル事業として指定されたことも新しい魅力である。これを機会にロジスティックスの拠点とはかくあるべしという模範となるモデルを構築してほしいと想うことしきりである。
物流は単に貨物の流れだけではない。社会基盤の整備からビジネス環境までを含んでいる。今回は県が中心になったので、公共もからんだ物流拠点の構成である。ハード、ソフト両面にわたって柔軟な組織で、従来の行政の枠組みをこえて新事業を推進していただきたい。