ターゲットの年代は……… 50歳前後の女性層! |
マナ板の鯉 |
和田 浅治 株式会社HAテレコム代表取締役社長 |
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料理人 | |
藤掛庄市 岐阜大学教育学部教授 |
「岐阜を考える」は、第一線で活躍されている方に登場していただき、掲載内容が読者の社業発展の一助になれば、と設けたものです。
今回は岐阜県で最初にインターネットのプロバイダー(接続業者)を開設された(株)HAテレコムの和田浅治社長を、岐阜大学の藤掛庄市教授に料理していただきます。
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藤掛教授 | 和田社長 |
世界中にネットを組み会話を通じて情報収集
藤掛 | インターネットが騒がれだしたのは、2年ぐらい前から、それまでの文字中心のものから、画像や音声を扱えるウェッブが中心的になり、ネットスケープなどのブラウザーと呼ばれるウェブサイトを閲覧できるソフトが供給されるようになってからですね。一般的にインターネットは、ワールドワイドウェブ(WWW)を指しますが、和田さんが県内でプロバイダーを始められたのは、どんな経緯からですか。 |
和田 | それまでパソコン通信をやってきたのですが、情報のやりとりが国内だけに限られていました。その点、インターネットは、世界中の人達とネットワークを組み、メールで情報交換ができるというので、ネットを開いて、この地域の多くの人達に利用してもらおうと思い始めたことからスタートしています。 パソコン通信でアメリカと交流するには、コンピュサーブへ入ればよいのですが、個人で国際回線を使ってアクセスすることは大変なことです。インターネットはそうした苦労を一挙に解決してくれました。岐阜市内であれば、市内料金でアメリカのコンピュサーブとつながるなど、通信面で大きなメリットがあります。最近は画像や文字、音声まで一緒に送ってくるという大変な時代になりましたね。 |
藤掛 | インターネットは、先ず大学で研究者や学生が使うようになって、それから会社関係に普及し、順次一般家庭に入ってきていますね。ただ日本人の場合は、ウェブサイトを覗くという受信的な感覚が強く、インターネットをチャットなど、発信する場として捕らえる感覚がないですね。アメリカではインターネットが始まった時から、パブリッシュする場と位置付けており、見る場ではなかったのですね。 |
和田 | 確かにそうです。講習会をやっていても会話が少ないですよ。アメリカはチャットでコンピュータコミュニケーションを始め、それがEメールに代わり、Eメールで交流するようになりました。日本はチャットやEメールの世界を飛び越えて、いきなりウェブが入ってきたものだから、見るだけしかできないのです。テレビ会議などでは外国人は盛んに会話しているが、日本人は単なる傍観者といった場面に出会います。語学が大きなネックとなっていますね。 |
藤掛 | 日本のテレビ的発想からすれば、顔が見え、声が聞けた方がいいと思っていますが、チャットの場では、かえって顔や声がない方が、自分を見せなくてもよいので、一種の変身願望がかなえられて良いという発想もありますね。これには、負の面も当然ありますが。 ところで、これから日本のウェブサイトはどのような方向に進むと思いますか。 |
もっと英会話を習って家族でホームページを
和田 | チャットができるという点では、バーチャルコミュニティの方向に進化していくのが理想的だと思います。ただ、歴史的な背景からみると、主催しても集まってくれるか難しいですね。インターネットを始める前は、掲示板システムをやっていましたが、書く人は決まってきます。そういった意味では、参加してもらう意識を高めることが大切ではないでしょうか。 |
藤掛 | サイバーシティーという概念があります。人々がインターネット上で作る仮想の都市ですね。この都市の住民がどんどん増えてくると、中心都市の周りにサバーブ(郊外)をどんどん作って、興味や関心の共通する人々が移り住んで、インターネット上でコミュニティを作るというのが、アメリカを中心に盛んです。サイバーシティーには、国境とか国籍とか関係ありませんので、日本人でも、そこの住民に簡単になれます。ただ、英語ができないといけませんがね。 |
和田 | ウェブサイトでそういう方向にいくため、現在、準備を進めています。そうすれば、ウェブサイトからインターネットのお客さんがフォーラムに入ることができ、そこで書き込みができます。 |
藤掛 | 最近になって、誰でも出版できるようになりました。フランスでは出版社といっても、個人の書店で、自分の本だけを販売している所もあります。日本でも作家の村上龍氏が有料で自分のホームページをつくり、作品を英訳して販売すると発言していますが、段々そうなってくるのでしょうね。 |
和田 | 日本でウェブサイトをつくるとなると、どうしても上段に構えますね。しかし、そうした世界も境界がなくなって、みんなが自分でつくる時代がやってくるでしょう。現在はホームページが先行していますが、本来は個人やグループでウェブサイトをつくらなければダメで、家族全員がホームページをつくり会話できるのが理想的ですね。 |
藤掛 | 家庭では、自分の家の電話につなぎっぱなしということになるので、インフラをどうするかという問題が出てきます。その点、有線放送を使ったらと思うのですが、どうでしょうか。月々2,500円で、何処にでも引けるので、非常に便利なのです。しかし、未だに議論されていないのは、何故でしょうか。それに各家庭でインターネットをやろうとすると、チャットが簡単にできるソフトが必要になってきますね。 |
和田 | コミュニケーションづくりには、チャットを欠くことはできません。 |
藤掛 | それに、みんなでチャットをやろうとすると、語学の問題が起きてきます。シンガポールやタイ、マレーシア、台湾などのアジア諸国は英語圏なので、チャットに参加することは容易なのですが、その点、英語ができない日本は、バーチャルコミュニティに参加できないというハンディがありますよね。 |
和田 | 日本にはモラルの問題など色々あるので、アメリカのようにはいきませんが、場所を提供するものとして、私達の立場は非常に重要だと思います。コミュニティの場を少しでも多くつくって、皆さんにおしゃべりしてもらう機会をどんどん提供していきたいと思っています。 |
藤掛 | ただ、世界に情報発信をしていくのは英語なので、これを機会に英語を勉強しようという人がでてくると思います。英語でホームページを開いたら、世界からアクセスがありますから、励みにもなりますしね。 |
和田 | 企業からホームページの作成を依頼されることが多いのですが、インターネットに対する日本企業の意識が低いのです。現に、ほとんどの企業が日本語のホームページをつくるだけで、英語のホームページは作らない。コミュニケーションは日本だけと思っており、それ以上の発想がないのです。これからは海外に向けて情報を発信しなければならず、それも日本語を単に英訳するだけでなく、海外を意識した内容にしないといけないのです。 当社では、英語でもリクルートのページを設けており、アメリカやカナダ、ベルギーなど色々な国から応募がきています。 |
通信インフラを整備し、低価格のマシンを提供
藤掛 | マシンの初期投資が高いという問題があります。アメリカでは500ドルパソコンや1000ドルパソコンがありますが、日本ではこのようなパソコンは普及するでしょうか。 |
和田 | 日本は通信インフラが遅れているし、専用回線費も高い。それに混み合うとなかなかつながらないなど難しい問題がありますね。やはり最低でもCD−ROMかMOディスクは必要なので、直ぐにというわけにはいきませんが、将来的にはコンパクトなパソコンが1000ドル程度で買える時代がくるでしょうね。 |
藤掛 | 最後に残るのが英語の問題ですね。今後、インターネットのターゲット層として、どの辺を狙っていきますか。 |
和田 | 若い人は学校で英語を習ったばかりですが、少子化の時代では大きな需要は望めません。やはり絶対数が多い昭和20年代前半に生まれた女性層ですね。 |
藤掛 | 40歳後半から50歳代ですね。この世代の女性は高学歴だし、お金もある。それに子供は大学に在学中か、卒業しています。インターネットで世界に友達ができるとあれば、こうした女性の間で普及していくのではないでしょうか。 |
和田 | それに今後、当社では企業が英語のホームページをつくる場合、英語の翻訳を手伝ってもらうことも考えています。在宅勤務なので、主婦をしながら働けるとあって大勢が参画してくれると思います。恐らく在宅勤務のはしりとなるでは…。インターネットの普及のカギを握っているのは、こうした女性層といっても過言ではなさそうですね。 |
藤掛 | こうした年齢層は競争が激しい中を生き抜いてきた人達だから、たくましくて、一番元気があります。国際ネットワークをつくって、世界の人達とインターネットを通じて交流していけば、世界がより平和になることが期待できますよね。 |
〔用語解説〕
★ | ワールドワイドウェブ(WWW)=ウェブというのは、蜘蛛の網のことで、世界中(ワールドワイド)に張り巡らされた蜘蛛の網という意味である。だれもがインターネット上に蜘蛛のように網を張ることで、自分の情報を公開し、そこに他の人が引っかかるのを待つわけである。 |
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★ | コンピュサーブ=世界最大のパソコン通信サービス会社。 |
★ | チャット=ネットワークのオンライン上で複数の相手と文字による会話をすること。 |
★ | モザイク=91年に米・イリノイ大学で開発されたWWWプラウザ。これにより、グラフィックやサウンドが扱えるようになった。 |
★ | ウェブサイト=ワールドワイドウェブ上にはってある蜘蛛の網のある場所のこと。それぞれ独自の名前(ドメイン名という)を持ち、その名前によってアクセスすることができる。 |
一口データ ■インターネットプロバイダー (株)HAテレコム |