超高温材料研究センター・研究所(多治見市)
■岐阜に芽生える超高温材料の夢
超高温材料研究センター(職員18名)及びその附属研究部門である超高温材料研究所(職員19名)は、「東濃研究学園都市」の一角にあり、核融合科学研究所、日本無重量総合研究所と共に中核研究施設として期待されている。 | ![]() |
* * * * *
センター及び研究所は、平成2年3月に「産業技術に関する研究開発体制の整備に関する法律(昭和63年10月)」に基づき設立された(本社は山口県宇部市)。設立の目的は、航空宇宙・エネルギー・環境を始めとする先端技術分野で実現が強く望まれている超高温材料の研究開発を進めること。
センター及び研究所は、山口(宇部市)と岐阜(多治見市)にあるが、山口は、素材試作、基礎特性評価や構造解析といった素材創製研究機能を、岐阜は、材料利用特性評価や耐環境性評価といった実用化特性評価機能をそれぞれ分担している。天野博文岐阜センター(研究所)長は、「素材を創る研究を行っている山口よりも有効利用を推進するための実用的な試験評価を行う岐阜の方がその利用度は大きい。」と強調する。
* * * * *
超高温材料は、約1000度〜2000度の範囲で、長時間の使用に耐える材料のことだが、岐阜研究所では民間企業や研究機関からの依頼により、航空宇宙用(ロケット)、高効率発電用(高温ガスタービン)として、主にセラミックスの複合材料や炭素複合材料の評価・分析試験が行われている。ここでの評価・分析試験は産学官で標準化した方法により行われている。
なお、以上の実験の多くはいわゆる「重工」企業のものとなっている。このため、常々岐阜研究所では何か地域に貢献することはできないかと考えており、その一つとしてこの地域の研究所や行政機関等をメンバーとする「東濃研究学園都市推進連絡協議会」を通じて、毎年、岐阜県陶磁器試験場等と共同で研究を行っている。
また、毎年、時代を先取りした研究基盤施設活用型先導的基礎研究調査事業に係る委託調査(通産省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託)も行っており、年に2〜3テーマを取り上げている。今年度のテーマの1つに「ごみ焼却炉用耐食セラミックス材料の開発に関する研究(研究スタッフ…元島栖二岐阜大学工学部教授等)」がある。この研究は産学官共同で研究を行い、ごみ焼却炉の構造材料、特に炉の内壁用高温耐食材料を開発することを目的としている。天野センター(研究所)長は「セラミックは21世紀の工業材料。地元東濃地域の地場産業である陶磁器産業に貢献する意味も含めこの研究を進めていきたい。また、この研究では将来行われるであろう“ごみ発電”のことも視野にいれている。」と、その思い入れの程が伺える。
実験や研究のほかに、先進的なシーズ・ニーズや研究動向などに関する共同調査・情報提供を行ったり、広範な人材ネットワークを活用した研究交流事業も行っている。例えば、「超高温材料国際シンポジウム」の開催である。今年度で7回目の開催となるが、「廃棄物処理炉/廃棄物発電に対する課題と材料技術面からの取り組み(耐熱・耐食性材料開発へのニーズ)」と題して、平成9年11月27・28日の両日、多治見市で開催される。このシンポジウムは国内外からトップレベルの研究者を集め、講演や交流会を行い、国際レベルの人的ネットワークの構築に役立っている。
* * * * *
会社設立以来7年が過ぎた。天野センター(研究所)長は、「このセンター・研究所は、開発された新素材の超高温域での有効利用の技術を開発するところ。国・民間・大学の研究所と交流しながら、@環境保全・エネルギーAネットワーク(産官学交流・国際化)B新産業おこしをキーワードに、21世紀に向けて新しいステップを探し、そして踏み出していきたい。」と意欲を燃やしていた。