「それは、ありません」
「それは、できません」
と言わない店にしていくため・・・
マナ板の鯉
小森 裕作
株式会社ヒマラヤ取締役社長
料理人
藤掛庄市
岐阜大学教育学部教授

 

 「岐阜を考える」は、各分野の第一線で活躍されている方に登場していただき、その話題が社業繁栄の一助になればということで設けています。
今回は、昨年株式公開し、大型店の全国展開を目指す『ヒマラヤ』の小森 裕作氏を岐阜大学の藤掛教授に料理していただきます。


藤掛教授

小森社長

ウィンター・イメージから脱却し全国へ。


藤掛 店の名前の「ヒマラヤ」は、私には山とか、スキーのイメージが強いのですが、総合的にスポーツ用品を扱っているうえで支障などありませんか。
小森 創業の時はスキー専門店でスタートしましたから、この店名でよかったのですが、先生のおっしゃるようにイメージされるかもしれませんね。かといって新たに変える考えはありません。すっかり馴染んでいただいているわけですから。山のヒマラヤはラの文字がLAなんです。当社は、ローマ字読みのRAで、山とは違うのですがね。
藤掛 そういえば、確かにそうですね。
小森 3、4年前まではウィンター用品が95パーセントを占めていましたが、3年前ですかね、大規模小売店法の緩和措置がとられたのは。それに合わせて当社でも大きな店をだすようになってから、ウィンター用品から脱却する政策をとっているんです。通年型を指向して、冬でも春物の売り場を設置しています。いまではウィンター用品は75パーセントまで下がっているんです。
ことしの春からは、アウトドア用品を一層充実させますから「ヒマラヤ」が変わったと思われるようになるでしょう。今後は積極的な全国展開を目指していますし、3ヶ年計画でウィンター用品は60パーセントくらいにしたいと思っています。
藤掛 アウトドアはいいですね。気晴らしができる。第一、スポーツという英語の語源は気晴らしをするという意味なんです。ですからアウトドアは立派なスポーツですし、スポーツショップの領域ですね。
ところで、最近は、主婦の層がプレイするスポーツに参加するようになり、用具やウェアはかなりファッション性が強くなりましたね。
そうなると流行的な側面が意識されて、この流行のとらえ方がむずかしくなるのではありませんか。
小森 その点は安心なんです。当社のお客様は、16歳から28歳までの年齢層の方々が圧倒的に多いんですね。ですから、みなさん情報が早いうえに変化も大きいですから品揃えにも大きく影響してくるのは事実です。
対して、当社ではマーチャンダイザー(MD)は若い人材が揃っているんです。お客さまと同世代のMDが活躍していますから情報が早いですよ。例えば、スノーボードはブームになる前から商品の充実を徹底させました。他の店からは、そこまでやったら危ないよ、と言われましたね。でも、私は当社のMDを信じていました。ですから品揃えも万全。ブームになるとたちまち全国でも高いシェアを誇るようになりました。水着についても、白が流行すると読んだのも当社は早かったですね。そして、白が一斉にメインになった。
藤掛 これからは、コンパクトスキーではないですか。
小森 先生も早いですね。そうなんです。来シーズンのスキー板は7割はコンパクトと言いますか、ショートタイプに変わるだろうと見られています。
藤掛 最近の大学では、1つのスポーツに打ち込むサークルよりも、季節によっていろいろなスポーツを楽しむサークルの方が人気があります。
小森 若い人は、冬はスキー、春はテニスやゴルフ、夏はスイミング、フィッシングと1年中スポーツを楽しんでいます。ひとつの種目に集中しないんですね。どの種目も一通りできる。しかし、選手になるわけではないから、そこそこできて、カッコよさが大切なんです。すると、従来のスキーのようにそれなりに滑れるようになるのに3年かかるというのでは、嫌われてしまうんです。だから、ちょっと練習しただけで、誰にでも楽しめるスノーボードが爆発的にブームになったわけです。長いスキー板をかついで、というのはカッコ良くないし、ショートタイプは簡単にあやつれて上手に滑れるんですから当然コンパクトな方がメインになるというわけです。

 

団塊の世代には、提案を。若い世代とは、イメージの一致を。


藤掛 私はテニスをするんですが、スポーツには健康との関連も重要ですね。
小森 健康マーケットも見逃せません。
藤掛 人工的に大きな割合を占める団塊の世代が、60歳を過ぎると若さと健康ということでいろいろなスポーツを始めるでしょうし、若い人だけが対象ではなくなってきますねぇ。
小森 私も団塊の世代ですから、よくわかります。まさに息抜きとかリラックスした気分を求めて健康指向が強まるでしょうね。
そうなると、やはりアウトドアではないでしょうか。昔は、テントをもってキャンプ場へ行くだけでよかったのですが、団塊の世代はそうはいきません。そこで私たちは、テントを拠点に、山歩き、フィッシング、自転車・・・などなどを提案し、プラス品揃えでお客さまのご要望にお答えしていきます。
藤掛 となると、団塊世代と若い世代といいますか団塊ジュニア世代との二極化ですね。
小森 しかし、若い人への提案はむずかしいですよ。ある意味では必要ないかもしれない。遊び方を知っていますし、情報もある。要は、イメージや感覚をつかまえた品揃えを充実させることでしょうね。
今後、全国的な店舗展開を視野に入れていくとなると特定のターゲットだけの絞り込みはできません。若い人は少子化で減少傾向ですし、高齢化も進みます。アピールの方法を考えていきませんとね。

 

ボーダーレスでの、仕切りの問題


藤掛 現代は、さまざまな分野でボーダーレスの様相をなして、スポーツとレジャー、スポーツとエコロジーといった具合に、スポーツ用品というくくりでは商品の特定はできませんよね。そうはいっても、どこかで仕切らないと品揃えはどこまでも広がって採算の面で負担となってくる。こうした点でのお考えはいかがですか。
小森 矛盾する課題ですが、採算では仕切りたくないですね。採算はあわなくても”何でもある「ヒマラヤ」”という安心感が大切だとMDには言っているんです。ですから国体選手の用具もありますよ。
用具を買って旅行に行くというお客さまには旅行センターをご用意しています。保険も扱っています。関連の情報雑誌も置いてあります。なんの目的もなしにブラリとご来店いただいても何か発見があり、遊びの楽しさがある店でないといけないと思っています。
藤掛 物を売るだけでなく、発見を売る「ヒマラヤ」というわけですね。
小森 「それは、ありません」「それは、できません。」と言わない店にしていくことが今後の将来を語るうえでのキーワードでしょうね。
藤掛 その点からすると、プライベートブランド(PB)とか、ハウスブランド(HB)などによる戦略もひとつとして考えられませんか。
小森 従来のPBには安かろう、悪かろうというイメージがありますよね。これを払拭するのが大変でしょうね。
藤掛 ワインですとハウスワインというのがありますし、スノーボード関連のウェアでPB・HBを開発されてはいかがでしょう。岐阜にはアパレルのバックボーンがありますし、可能性はありませんか。
小森 全国展開をしていくとなると、その地にあったエリア・マーケティングというとらえ方が重要でしょう。地域のことを知っている専門店としての特徴を明確にする。その意味では、岐阜のアパレルと共同開発した当店オリジナルのPBというのは考えられなくもないのですが、まずは、基礎づくりです。総合スポーツの「ヒマラヤ」というイメージをつくりあげることですね。「ヒマラヤ」がスキー用品の店というイメージをもたれないようにすることです。
沖縄店には、もちろんスキー板はなく「スポーツ用品のイメージが確保されていますから、全国的に総合スポーツという基礎づくりが先決だと思います。しかし、PBは魅力ですね。

 

一口データ

■ 総合スポーツ用品専門店チェーン株式会社ヒマラヤ
■ 住所 岐阜市江添1丁目1番1号
■ 設立 1976年 (有)岐阜ヒマラヤ設立
  1991年 (株)ヒマラヤに改組
■ 最近の話題(1996年)
*4月、釣り部門に進出
*9月、店頭市場に株式を公開
*11月に自己破産したオリンピックスポーツの急店舗を改装し新たに出店、従業員の受け入れを決定。
*年4、5店ペースで大型店を全国展開