岐阜県型福祉の創設

石原 美智子
(株)新生メディカル代表取締役社長


 

 20数年前に福祉と出会ったころ、福祉はまだ社会の日陰の存在であった。世の高度経済成長という荒々しく活気のある時代の波から取り残されて、そこだけゆったりとした流れの中にあった。

 その柔らかい雰囲気の中で、私たちは「良質の介護」という新しいソフト作りに立ち向かっていた。良質の介護とは、「介護を受ける人の立場に立った理論と実践」のことである。言葉を変えて言うなら、オムツを付けて排泄してみてその気持ち悪さを知り、安易にオムツを使用しない介護や、オムツを外させないように「抑制服(つなぎ)」を着せるのではなく、排泄表を使用して常に汚れないように気配りをするなどということである。

 高齢社会の到来で、ゴールドプラン、公的介護保険などが言われるようになり、福祉が日の目を浴び、大きなお金が動くという時代が到来した。福祉界はお金の動きとともに慌ただしい、ある面で殺気立ったような空気が漂いだした。

 そのまさにそのとき、官僚と業者の癒着が社会問題化した。あの事件が示すように、福祉の本質を理解しないまま、金儲けだけを目的にして福祉に群がる人々の作る福祉事業は、当然、福祉を受ける人々の方には目や心が向いておらず、福祉サービスの量は増加しても、良質の介護を手に入れる可能性は低くなる。

 「良質の介護」という目には見えにくい、しかし、自分が介護を受けるときに最も必要とするものを理解し、見抜く力が要求される地代になって来たのである。そして介護の善し悪しを見分けることはそんなに困難なことではない。数日間、その現場に入ってみれば。大抵分かることである。その手間を掛けるか否かだけである。

 そして良質の介護を作り出すためには正しい人選をし、正しい教育をし、厳しいチェックをする。どこに資金をかけ、何を大切にするかをしっかりと理解することである。

 岐阜県は、幸か不幸か保守的で家族との同居率も高く、そのために福祉施策が遅れ気味であったから、此の際、量の整備だけに迫われるのではなく、福祉の本質を捕らえた事業を展開すれば、岐阜県から全国に本物の福祉を発信することができ、そこから発生する果実は必ず良質の地域を育て、金銭だけではない豊かさが必ず手に入ると信じている。