1人当たりGDP10,000ドルを突破した韓国


 

 韓国は、1961年以降の第一次及び第二次経済開発5カ年計画によ1961年以降の第一次及び第二次経済開発5り工業化を開始した。そして化宣言」の発1973年には「重化学工業表、82年の「経済社会発展5カ年計画」等によりアジア四小龍の一つといわれるまでに成長し、現在では95年に1人当たりGDPが10,000ドルを突破し、96年末までのOECD正式加盟に向けて、資本取引や為替制度などの規制緩和に積極的に取り組んでいる。景気について見てみると、92年に経済成長率が5.1%と一時的には落ち込んだが、輸出と設備投資の大幅な増加や消費の堅調な増加により、92年以降5.8%、8.6%、9.0%と回復基調にあり、高い経済成長率を続けている。しかし、鉱工業生産については重工業部門を中心に94年11.1%増、95年11.7%増と高い伸びを示している反面、軽工業を中心とした業種が伸び悩んでおり、業況の好調な大企業と低調な中小企業という両極化現象がおきている。

 95年後半に入ると景気の拡大は鈍化傾向で、輸出の半導体市況の悪化や円安・ウォン高により、景気の牽引役であった設備投資の伸びが鈍化したのが要因と考えられる。事実、96年7月の輸出(通関基準)を見ても前年同月比マイナスに落ち込む等回復の兆しは見せておらず、企業は設備投資に一段と慎重になっている。
個別商談会

 韓国の中小企業(5人以上300人未満)は7万3千社余で、日本(同42万社余)、台湾(同15万社余)に比して低い水準にある。これは韓国経済が財閥を中心にして重化学工業化(70年代半ば)され、集中的な投資や事業の多角化により経済力(シェア、付加価値等)が財閥企業に集中してしまい、中小企業がうまく育たなかったためである。現在も韓国では資本財や中間財の多くを依然として日本等外国からの輸入に頼らざるを得ず、輸出が増えても輸入も増えるという悪循環がある。このため、政府としても96年2月に中小企業の育成を強化するため中小企業庁を発足させるとともに、財閥に対し協力依頼をする等その育成に努めている。

 このような中、岐阜県中小企業振興公社主催の「日韓産業協力促進会議」が去る平成8年9月2日、岐阜市内で開催された。この会議は、韓国の企業が機械加工・金型・電子部品等の分野において、県内企業と合弁投資・技術提携・取引・研修生受入等のビジネス交流を深めることを目的としたものである。今回の会議は、韓国企業12社と県内企業11社とによる懇談会、個別商談会を主な内容としており、従来は視察中心であったが今回初めて企業間取引や技術交換等のための商談の場が設けられた。

 この会議には、韓国中小企業振興公団日本事務所長の孟京鎬(メンギョンホ)氏が参加されたが、この公団は、1979年に中小企業振興事業の効率的な推進を図り、国民経済の均衡的な発展に資することを目的に設立され(1979年、東京に日本事務所開設)、創業支援や情報化支援、国際化支援等様々な業務を行っている。

 孟所長は、今回の初の試みである個別商談会に対し、「韓国の中小企業は他国の中小企業にも劣らない機動性を有している。今後の商談に期待が持てる。」と評していた。


韓国中小企業振興
公団東京事務所長
孟京鎬 氏
 今回の会議に参加したある県内の金型企業経営者は韓国企業に対し「納期はしっかり守ってくれるし、速い(日本の半分以下)。ただ、トータル的に見ると金型の技術は日本の方が少し進んでおり、コストも物流を考えると高い。」という。また、岐阜県は全国でも一番多く韓国からの技術研修生を受け入れているが、実際に受け入れた企業経営者は「韓国の研修生は真面目で勉強家である。受入れに対して最初はどう対処したらよいか戸惑ったが、2回目以降はスムーズに受け入れている。」という。そして「研修期間は2ヶ月とか5ヶ月程度だから、完全に技術を習得するには短く、基礎技術だけでも習得できればよい。研修では日本とはどんな国なのか理解し、日本企業の雰囲気や管理体制を学べばよく、その後これを契機として企業間での交流が進み、取引きを始めとしての技術交流ができるようになればよい。」と話している。しかし、研修生に対しては、帰国後派遣した企業を退職せず、その企業に技術を残すよう指導しているが、中には日本での研修をメリットとして転職する場合もあるようである。

 また、孟所長は「岐阜の企業は非常に友好的であり、実際岐阜で勉強した研修生は本国でも評判がよい。今後も更なる親交を深めていきたい。また、韓国の中小企業は、例えば半導体の場合、組立関係は大丈夫だが基盤関係が弱く、ICはほとんど日本から輸入している。工作機械の場合でも重要な部品は日本から輸入している等やはり日本との技術格差がある。公団としても両国の経済発展のために支援と協力を惜しまない。」と話していたが、この技術格差解消や貿易不均衡の是正の一つとして技術移転のための研修生派遣、技術者受入等、韓国中小企業に対しての支援策が講じられている。

 なお、岐阜県中小企業振興公社は平成2年より韓国中小企業振興公団と交流を行っているが、今回の会議は、岐阜県と韓国の大きな架け橋となるであろう。

 

<問い合わせ先>

韓国中小企業振興公団 日本事務所
東京都港区虎ノ門2-8-10 虎ノ門15森ビル9階
Tel:03-3508-0673 Fax:03-3508-0675
財団法人岐阜県中小企業振興公社 下請振興課 海外交流対策室
岐阜市薮田南5丁目14番53号 岐阜県県民ふれあい会館10階
Tel:058-277-1092 Fax:058-277-1095

 

<出典>

大韓民国商工資源部「新しくなった韓国の投資環境」
経済企画庁調査局編「アジア経済1996」
韓国中小企業振興公団「中小企業振興公団の国際協力及び投資支援事業ごあんあい」
岐阜新聞(1996年9月3日朝刊)
日本経済新聞(1996年8月28日朝刊)

 

<参考>県内企業の韓国への進出状況

企 業 名 拠点所在地 業 態   事 業 概 要
(株)イマオコーポレーション ソウル 支店 販売拠点
(有)加藤製作所 仁川 工場 調理器具・部品、ガス器具・部品、金型・金属部品の製造販売
清川(株) ソウル 支店 服飾資材の販売・輸出、衣料品生産管理
城山産業(株) 慶北達城郡 工場 モーター、トランス用鉄芯の製造
(株)スギヤマメカレトロ 慶尚北道 工場 工作機械・専用機械等の設計、製作、修理、
大同メタル工業(株) 忠清北道永同郡 工場 内燃機用平軸受
太平洋工業(株) 釜山 工場 タイヤバルブ及び関連製品の製造販売
(株)日健総本社 ソウル 支店 販売
(株)藤吉鉄工所 烏山 工場 各種ロールの製作及び販売
未来工業(株) ソウル 販売 電線管の製造販売
吉岡(株) ソウル 工場