未来の耐火物ニーズに応える

耐火レンガ製造
多治見耐火工業(多治見市小泉町)
関谷社長


 

 昭和12年9月20日、多治見窯業として発足して以来、多治見耐火工業の歴史は来年9月でちょうど60年になる。設立目的は美濃焼の伝統的な技術と多治見地域で豊富にとれる木節粘土や、美濃焼の製造過程で出る廃棄物の再利用を結びつけて耐火物の製造を行う、としている。

 現在、同社が製造する耐火レンガは月産で平均すると約600トン。種類は高炉・電気炉その他鋳鋼・鋳造用ライニング材として幅広く使用されている取鍋レンガが約200トン。特殊鋼用湯通として利用される湯通レンガが約200トン。加熱炉などに使われる並形レンガ約200トンという割合である。その他、タンディッシュ、異形、不定形、棚板、耐酸など種類は多彩である。

 製造工程の特徴は地元原料による定盤レンガはもとより、輸入原料による高品質レンガに至るまで品種別生産ラインが組まれている。

 「製造工程そのものは昔とあまり変わりはありませんが、工場別に粉砕から製品検査まで一貫したシステムをとり、原料、造形、コスト、管理などあらゆる視点から検討し、それぞれのユーザーに適した良質な製品をお届けしていますね。コンピュータによる工程管理を行い、短い納期と低コストで安定した製品を提供させていただいております」と関谷久社長。

 多治見耐火工業は、長い歴史と経験の中で、耐火物の本質を知り、巧みに対処する能力を養い続けてきた。それは、多品種少量生産を効率的に行う「マンマシンシステム」や高効率な工場ラインに現われている。さらに、同社の約60年近い実績は一流の鉄鋼、石油関連メーカーの顧客リストをみればわかることだ。

 「しかし鉄鋼メーカーが不景気だと、その影響をもろに受けるのが私たちの業界ですからね。安閑とはしておられない実情です」(関谷社長)。

 鉄鋼メーカーとの取り引きが60%以上を占める同社にとって、鉄鋼メーカー以外の販路を見いだすことは容易ではない。「私たちが生きる道は耐火物の新たニーズを的確に把握し、より高品質なものを追っていくしかありませんね。そのための研究開発にも力を入れていきたい」という。