(株)船井総合研究所会長 船井 幸雄


 

 10月に私は「エゴからエヴァへ」という63冊目の本を出版しました。去年2月に出版した62冊目の著書「未来への分水嶺」<PHP研究所刊>(岐阜県高鷲村の分水嶺にちなんで命名しました)以来の久しぶりの書き下ろしになります。(共著や編集を入れますと100冊目くらいになるでしょう)。
 去年3月の「未来へのヒント」<サンマーク出版刊>では私の知っていることの30%、そして「未来への分水嶺」では50%を発表しましたが、それ以外の著書では10%程しか書いていません。なぜなら私自身では充分に理解し納得していることでも、現代科学が認めていないことなどは、それが正しくても誤解されることをおそれたからです。
 ただ私の直感では昨年からは、論理的に納得できることは率直にそれなりに理解してくださる人々が急増しているようです。誤解される人も少なからずいらしゃるようですが、あきらかに世の中は変わり、人々はすなおになってきているように思います。
 その意味で「エゴからエヴァへ」では私の立場で発表してよいことにしぼりますがともかくは内容的には知っていることの80%くらいは書いたつもりです。
 今回はこの本で言いたかったことのなかの一部を取り上げながら、最近感じることをまとめてみたいと思います。

 

1、「エゴ」から「エヴァ」へ

(1)「エゴ」と「エヴァ」の意味

 私の友人に足立郁朗さんという建築家がいます。(彼のことは私の著書「直感力の研究」<平成5年、PHP研究所刊>のなかで詳しく述べています)その彼が宇宙のすぐれた知的存在から教えられたコトバです・・・と私に伝えてくれたのが、この「エゴ」と「エヴァ」という言葉なのです。
 彼によるとエヴァ(EVAH)ちは人々が「愛」「調和」「互恵」を生き方の基調としている社会のことで、その反対のエゴ(EGOH)とは「エゴ」「対立」「競争」をベースとしている社会のことということです。この足立郁朗さんが今年の7月に私宛にあるレポートをプレゼントしてくれました。ここではそのレポートの内容については詳しく触れないことにしますが、ともかく全体としてはすばらしい情報でした。私の知識でも充分に理解でき、大半は納得できます。
 私が「エゴからエヴァへ」を記したくなった大きな理由の一つは、今年の7月18日にこのレポートを足立郁朗さんから特別にもらったからです。それをきっかけに私には「エゴからエヴァへ」の原稿を書きはじめたのです。

(2)「エヴァ」の時代がくる

 この題名をつけたのには次の意味があります。一つは、このまま進んでいっても、いやおうなく地球や、われわれ地球人の社会は「エヴァ」になるだろうというわたしの見通しです。
 そして二つ目はいまの「エゴ」的社会から脱皮し、「エヴァ」的社会にならないと、人類の将来はないだろうという危機感です。今はまちがいなくエヴァの時代がくると言っておきますが手放しでは来ないでしょう。私たちが、それぞれ「エヴァの時代」を迎える努力をすることが必要です。
 そしてなによりもこのコトバのもつ響きや考え方、生き方の中に、愉しい明るい、すばらしい21世紀を創るヒントがあるように思えるのです。

 

2、われわれは、かなりまちがっていたようだ

(1)つぎつぎとくつがえされる今までの常識

 私は、大学で近代科学を学び、近代的思考法の洗練を受けた、現在人としてはかなり常識的人間だと思います。ですから常識に反するようなことが起きたり、非常識なことを体験するとびっくりします。しかし、生来好奇心が旺盛なうえ、職業柄いろいろな「びっくり現象」に遭遇しましたので、最近ではちょっとした「非常識現象」くらいは経験しましても「びっくり」しなくなりました。しかし、ここ2、30年、「われわれは、かなり考え方、生き方がまちがっていたようだ」と認識せずにはいられないような出来事がつぎつぎとおこり、われわれが正しいと思っていた近代常識が次々とくつがえされているのです。
 なかでも私が最近もっともびっくりしたことを紹介します。

(2)高木善之さんから受けたショック

 さる7月27日のことです。高知で船井総研主宰の「船井流経営研究所」四国大会が開かれていました。四国四県の「フナイクラブ」会員を中心とした経営者の人々と私が直接会いながら経営の研究をする1年に1回の楽しい会合で、この日も数百人の経営者や経営幹部などが参加してくれました。
 当日はとても暑い日でした。私は講演の前に、外の駐車場に回送されていたフロン回収車見ていて大汗をかいたので、会場の控室でネクタイを外しクーラーの出口に座り込んで汗をふいていました。そこへ講演を終えた高木善之さんが入ってきたのです。高木さんは松下電気の社員ですが、環境運動の第一人者でもあり、この会合の特別講師に招いておりました。「暑い、暑い」といって大汗を出している私を見て彼は次にようにいい出しました。「船井先生、カッターシャツは毎日クリーニングされるんですか?」と。「ええ」と返事をすると「私は1週間に1回でいいいのです。よごれないのです」ということなのです。事実、数日も着ているという彼のカッターシャツのえりなどは、本当にきれいなものでした。ここでびっくりした私はしばらくの間高木さんから、具体的に彼の日常生活について話を聞きました、その時の話に大ショックを受けたのです。彼は平均して1日に1食、それもパン1個とか、そば一皿くらいしか食事をしないといいます。大便、小便も1日に1回ですませることが普通で、夏でも週に1回くらいシャワーを浴びるだけでよいとのことです。彼は松下電気の社員である上に環境運動の第一線で走り回り、連日講演をしています。そのため毎日朝3時頃に眠り、3時間くらいしか睡眠時間がとれないような日々を送っています。このような生活を10年以上も続けているようですが、体調は快調、病気もしないで激務を完全にまっとうしているもようなのです。それに私の見たところ毎年若返っているようにすら見え、もうすぐ50の彼が最近では30歳代に見えることすらあります。彼の口からこのような話を聞き、私はショックを受けました。
 1日に数百カロリーぐらいの食事しかせず、大便小便とも極端に少なく、汗もかかず、カラダが汚れず、1日に3時間くらいしか眠らないでも十分である・・・。以上のような医学的にも常識的にも理解できない生き方をしていながら毎日超激務を遂行し、超健康で、体力的には若返っているといってよいくらいで外見からは年令よりも毎年若くなっているように見えるのです。彼は15年くらい前、交通事故にあい、瀕死の重傷をおいました。「一度あの世に行ってきたが、また生き返ったのです」とその時のことを言っていましたが、それから1年くらいの病院生活で、多くの勉強をし、いろいろなことを知ったようです。その結果として「環境を良くすること」を使命にしようと決心したようです。私は彼の実行力には常に敬服しています。そのような活動のうちに、少ない食事で生きて行けるだけでなく、体力を維持し、眠る時間をへらし、大活躍をしても若返れるような生き方を知ったもようです。

(3)エヴァの時代の生き方

 ともかく高木さんの生き方はショックでした。それと同時に、そのことで私は一つの大きな前向きの確信を得ました。そして、まちがいなく私の人生観、人間観が大きく変わりはじめました。地球観が変わりはじめた・・・というより漠然と考えていたことが正しかったように思います。その意味で彼と私の共著「地球村に生きる」<ビジネス社刊>と、彼の最新の書き下ろし「地球大予測」<総合法令刊>をぜひ、ご一読ください。おねがいいたします。(今年の8月の岐阜県主催のセミナーでは、船井総研のコーディネートで高木さんが講演されたようです。)

 

3、正しい生き方、本物の生き方

(1)人間の特性と役割

 それではエヴァの時代を迎えるためには具体的にどのように考え、どのように生きていけばよいのでしょうか。
 人間がどう生きるのが正しいか、人間の特性を見ればもっともよく分かります。
 人間には他の動物や食物にない人間だけが持っている三つの特性があります。一つは、使えば使うだけ『良くなるアタマ』を持っているいることです。そして二つめは、理性的な働きをする脳をもっていることです。三つめは、『思い、考えることを実現させられる能力』を持っていることです。以上は、人として「正しい生き方」ですが、本当に正しい生き方をすれば、人は「運」がつき、「幸せ」になり、「本物の人」になれます。人相がよくなり、明るくなります。
 その具体的な方法についてこれからアドバイスします。ぜひ実行してください。

(2)正しい生き方、本物の生き方

 人間は至高存在の意にあった正しい生き方をすれば、運がつき、明るくなり、人相が良くなり、健康に生きられるように仕組まれているようです。逆にまちがった生き方をすれば運が落ち、暗くなり、人相が悪くなり、病気になるように、人をとりまく世の中はできているようです。したがって、まず「運」を良くしましょう。それは人相が良くなり、明るくなり、プラス発想型の生き方をすることですが、これは至高存在の意味にかなった生き方で経営法です。まず、その方法を感嘆にお伝えしましょう。

  1.  長所伸展法・・・長所を見つけ、つくり、伸ばすよう力を入れる方法です。会社なら売れている商品、延びている商品、強い部門、自信のある技術、すばらしい人材などすべて長所です。また「運を良くするためには、ついているものとつきあうとよい」といいます。長所は自分の中の運の良いもの、ついているものです。

  2.  良心法・・・現在の自分の会社の業務の中で、良心に反することはやめ、良心にあうことしかしないという方法でする。われわれの良心とは、われわれの魂の気持ちや心のことで、良心に従うのは至高存在の意にそった正しい生き方といえるのです。当然「運」はついてき、私の周辺には実例が何百例もあります。

  3.  親身法・・・これは、親が子に対するような気持ちになってすべてに対処するという方法です。このポイントは、心の底から親が子に対するような気持ちとか態度になれることです。まず好きな人、利害関係の深い人から相手の立場にたってなにがその人のために親身の付き合いになるかを考えできる範囲で付き合ってみてください。

 以上の「長所伸展法」「良心法」「親身法」のうち、やりやすいことから私の顧問先企業に実行してもらっています。効果は抜群です。まず「運」をつけ、人相を良くし、明るくなり、プラス発想型になってください。会社ならまず業績をあげてください。期待しています。

 

4、最近感じること

(1)今、ポイントは「びっくり」「本物」「癒し」「明るさ」そして「良心」

 日本では小売店の店頭を見れば、一番よく時流がわかります。政治や文化や科学よりも「時流」ということに関していえば、経済が一番自由で制約が無い分、日本のような先進国ではそういえると思うのです。ここ2、3ヶ月小売店の店頭を見ていて気づいたことですが、まず、『びっくり』『本物』『癒し』『明るさ』の4つが今、ひとつのポイントのような感じがします。そして二つ目の重要なポイントが『良心』。そしてこの2つの比率がだんだん増えているような気がします。これはすべてのことにいえると思います。

(2)世の中のためになることは必ず儲かる

 10月13日と27日に大阪と東京で「フナイミーティング」というセミナーを開催しました。今年も大好評を博し、8000人の人が集まって勉強してくださいました。
 その時講師にお呼びした映画監督の龍村仁さんの話で、経営者として私が非常に心を打たれたことがあります。彼は映画「ガイアシンフォニー」をつくるとき、スポンサーから「龍村さん、世の中のためになるものなら絶対に儲かります。だから儲かるものをつくってください。」といわれたそうです。その時は「難しいことをいわれるなあ」と思っていたそうですが、この映画はマスコミではまったく宣伝をしないにもかかわらず、あっと言う間に全国に口コミで伝わり、結果20万人という人を動員したのです。はじめはプロが口をそろえてこれはあたらないといったものが、世の中のためになる良心に従った作品を創れば、現実に「ガイアシンフォニー」は儲かりだした。
 世の中は確実に変わってきているのです。
 私の意見としては、儲かると言うことは世の中のためになることと堂々と考えてよいかと思います。だからもうからないことはやってはならない時代が来たのです。ですから、例えば公の機関だからもうからないことをしてもよい、採算を度外視してもよいとうのはまちがいといえるのです。

(3)未来から考えよう

 来年3月2日には、岐阜グランドホテルで開催される「岐阜県ルネッサンス」に招かれています。岐阜県からも「エヴァ」の時代をつくっていこうという動きがあることを、私は本当に嬉しく思います。下の写真のような開催主旨が私の手元に届いています。今年は『水、生命、健康』をテーマに開催しましたが、次回は『オリベイズム』をテーマにして、岐阜ファッションをとりあげるようです。政治・行政の演出家である梶原知事と、ファッションの演出家で私とは旧知の石津謙介さん、そしてすばらしいコーディネーター、野中ともよさんとご一緒します。今から楽しみにしています。
 このように岐阜県にも素晴らしい文化遺産があるのですから上手につかって欲しいと思います。これまでに述べたようなことを踏まえ、それぞれの素晴らしい長所を見つけ、大いに伸ばし、未来から考えることが、今一番大切だと感じています。

船井総合研究所
船井幸雄
岐阜県知事
梶原拓
ジャーナリスト
野中ともよ
ファッションプロデューサー
石津謙介