船井 幸雄(株) 船井総合研究所

 

 全号では私が永年経営者兼第一線の経営コンサルタントとして培ってきた経験を通して現状の分析をしてきました。今回はこれからの時代は何がポイントになるかについてお伝えいたします。

 

1、岐阜県が素晴らしい21世紀を迎えるためには

(1)岐阜県版「長所伸展方」

 以前に船井流経営法の一つ、「長所伸展方」をご紹介しました。良いところを見つけ、伸ばしていく方法です。やはり岐阜県でも何よりも長所を伸ばすこと。これが一番いいと思います。私は岐阜県の長所というと、ちょっと工場誘致だとか観光開発に遅れてしまったところではないかと思います。そして、遅れた方がよかったのではないかと。岐阜というのはなかなか来にくいところです。新幹線の名古屋駅からも時間がかかるし、岐阜羽島駅で降りても時間がかかる。昨年8月に高鷲村で開かれた「分水峰サミット」へ出席した時も、本当によくまあこんな田舎が残っているなというくらい田舎だと感じました。ただし、高鷲村へ行く途中も着いてからも、本当にきれいで空気もいいし緑もある。ですから私は岐阜県がそういった恵まれた自然環境を活かしていくのが最もいいと思うのです。これからも観光立県は多分難しいだろうし、工業立県いうのもちょっとおかしい気がする。やはり、農業とか自然などが一番いいと思うのです。

(2)植物との会話で教えられたこと

 私には植物と話ができる友人が何人かいます。本来人間というのは地球上のすべての動植物のDNA・遺伝子を持っているので、それをちょっと開発すれば話せてあたりまえなのです。ただ人間の多くは自分の意識に制約を加えたり、不必要ゆえに忘れたりするので、それらの声を聞く能力を失ってしまったようなのです。いま、植物と話ができる人が木や草に話しを聞きますと、「我々が人間に一番期待するのは、触らないでほしいということ。とくに鉄筋コンクリートの建物と舗装道路はつくらないでほしい」と。これが植物や木や草が望んでいる一番のことらしい。よくわかる気がするのです。

(3)自然と人間との「調和」がポイント

 しかし現状ではいっさいの自然破壊をやめると私たち人間の生活は成り立ちません。植物の気持ちもわかりますが、人間の都合もあるから一体どうしたらよいかという問題が出てきます。そこで「調和」という一つの考え方を提示します。人間とは活動的な動物で、ほうっておいても必ず何かを始める特性を持っています。そしてその行為が自然を破壊しないまでも改変することは十分に有り得ます。それをすべて否定してしまっては人間たるものの存在価値観がなくなります。そこで、何かをやろうとするとき「調和」という生成発展と秩序維持のルールを活用するのです。全国的に見て、自然を活かした例はいくつか有ります。例えば、秋田県小坂町の十和田湖のほとりの十和田プリンスホテルというホテルでは、建物を全て木の高さよりも低くしています。とても感じがよく、多くの人がその自然を味わいに来ています。
 美というは調和ということです。「調和」というのは、目立たない。目立たないのが自然や本物の特徴だからです。そういう意味で、岐阜県は調和しているのです。周囲や自然に溶け込んでいない建物とか、目立つけれども「美」を感じないものがほとんどない。目立たないけれど存在感の有るものが本物です。そこに真・善・美が生まれます。有って美しく感じ、無くては困る存在になります。そういう意味で、美的感覚も非常にある梶原知事の下に、岐阜県の良さ、この自然の良さを充分に活かされること、つまり岐阜の持つ長所を伸ばす。そうすれば「脳内モルヒネ」が出るし、環境も自然もみな喜ぶということを絶対に忘れないように、自然を壊さないように、そしてよりよくするというのが一番ではないかと思います。

 

2、愉しみの世紀 21世紀

(1)「物」ではなく「心」の愉しみを

 今、世の中は先行きが不透明でこれまでの指針が役に立たないことが多くなっています。こういう時代に、何が起きても動じないで前向きかつ正しく生きていくためには、一個人としては人生を「愉しむ」姿勢が不可欠のように思います。「楽しむ」でなく「愉しむ」と表現したのは、「楽」という字が元々楽器という「物」を表し、それを叩いて楽しんだから「楽しい」に転じたのに対し、「愉」という字は「心」がつかえないでよく通る状態を表した文字だからです。つまり、物に頼った「楽しみ」でなく、心自体の「愉しみ」がこれからのポイントとなるはずだからです。

(2)愉しみながら生きる五つの条件

 そういった時代を「愉しみ」ながら生きるためには、生き方として以下のような五つの条件があります。
 一つ目は、「良心に従って正しく生きる」ことです。これはプライベートでの行動はもちろん、ビジネスの場でも同じです。利益優先に走りすぎて、良心を歪めるような経営は、やっていて愉しくないばかりか、社会を悪化させるだけです。これからは経営の判断の場においても「良心」が何よりも重要な価値基準になると同時に、「良心」に従った経営ほどやり甲斐のあるものはありません。「利益は社会のお礼」という考え方に立てば、社会は良心経営を歓迎し、自ずと適正な利潤をもたらしてくれるのです。
 二つ目は、「自分で決めて責任をとる」ということです。人間は自分で決めて自分で責任がとれる唯一の生命体です。他人の知識をあまねくとりいれながら自分で決めて責任をとる生き方をしていけば、勉強も面白くなりますし、人と会うのも愉しくなってきます。
 三つ目は 「世のため人のために尽くす」 ことです。これは愉しく生きる特効薬のようなものです。そしてこのポイントは、見返りを求めない、つまりギブ&ギブに徹することです。そうすれば物にとらわれる小さな自尊心が消え去り、愉しみの世界に至ることができるのです。
 四つ目は、先の三つを心がけた上で 「いやなこと、迷うこと」 はしないということです。先の三つを実行すれば、自ずと考え方や生き方がプラス志向になります。そうした上で、もし 「いやなこと、迷うこと」があればしない方がいい。エゴにとらわれない素直な気持ちで自分の心に問いかけ、いつものように前向きに考えたとしても「今回はやめとこうよ」と心の声が聞こえたらしないように決心すればいいのです。
 五つ目は、「本物を目指す」ことです。「本物」とはどのようなものでしょうか。私がこれまでの経験からつくった本物の条件とは次のようなものです。

  1. 単純・万能・即効があり、良い子とばかりで副作用がなく、制約がない。
  2. 安全・快適・ローコスト・ハイクオリティー。
  3. 自然に従い、自然を活かし、自然をより良くする。
  4. 蘇生型であり、自然状態で蘇生化しつつあるもの。

 本物であることほど愉しいものはありません。本物であれば混乱の時代に良心に従って生きる人びとがあなたを応援してくれます。では、本物を知るには一体どうしたらよいか次に述べます。

愉しみを生み出す5条件
  1. 良心に従って正しく生きる
  2. 自分で決めて責任をとる
  3. 世のため、人のために尽くす
  4. いやなこと、迷うことはしない
  5. 本物を目指す

3、本物を知る、ということ

(1)クリニックセミナー法

 本物を知る、つまりびっくり現象を知る方法の一つに「クリニックツアー法」があります。クリニックツアー法とはまず初めに意思決定する人、あるいは働く人が一緒になっていろいろな現場を見て回ります。これによって納得して自信をもって一体化して新しいことをするのです。そこで一般論として何をみればよいかというと、まず第一に「伸び続けている会社」を見るということ。第二にそのときの「話題のもの」を多く見ること。第三に「本物」を沢山見ること。そして第四に「不思議なもの」を見てくるということです。今、不思議なことがいっぱい出てきていますが本来世の中には不思議というものは存在しないのです。そして実際に見てきたらそれぞれの事柄について特別に詳しい人や超専門家といわれる人の意見を聞くということが大切です。それは会社経営において判断の方向を間違えないようにするためです。
 昨年、梶原知事と話したときに、知事から岐阜県内の経済活性化のために相談を持ちかけられました。その時私は迷わずクリニックツアー法を提案させていただきました。これは対象が「岐阜県」という行政であっても、一般企業と同じく「県」は組織体であり効果は同じだと思ったからです。即断即決で有名な梶原知事はそれをすぐに実行に移されました。
そこで岐阜県から私が会長をしている(株)船井総合研究所に業務委託の依頼があり、昨年度から岐阜県が主催し船井総研のコーディネートで毎年秋の恒例の催しとして「新技術視察ツアー」を開催しています。これは船井総研のコンサルタントが同行し、バス一台を借り切り、話題の企業、新技術、社長(人)を泊りがけでじっくりと訪問する視察ツアーです。参加者は岐阜県庁の役人の方、県研究機関の方、県内中小企業経営者が中心で大変好評だったもようです。昨年度の《関西編》では岐阜県内では電子水で有名な電子物性総合研究所を皮切りに、京都の異色薬品会社である中村菌科学研究所、マルチアークで有名な尼崎の万よう工業など独自の技術を持つ企業を見学し、そこの社長さんに話を直に聞いてまわりました。今年度も《中国・四国編》《関東編》の二つを実施の予定(10月と11月)で、岡山の林原生物化学研究所、EMで作った作物だけを扱い驚異的な売上げを誇る美土理の里などを訪問します。詳しい資料などは左記にお問い合わせください(岐阜県 研究開発財団 担当・・高橋 TEL058-276-4335)。実際に見て納得すれば自信が出て一体化できるのです。そのうえ世の中でためになることであり儲かるものであり自分に合うもの−−つまり善であって利であって体質に合うこと、しかも納得できて自信があって一体化できるものをみつけて実行すれば先が大きく開けます。

(2)フナイミーティング’95

 さらに以上のような視察ツアーには忙しくて参加できないという全国の方々のために、私の1年の総まとめの勉強の場としてフナイミーティングというセミナーを開催しています。これはその年の話題の人をお呼びし、経営者の方々に時流をつかんで、正しい判断をしていただくためでもあります。これまでは私以外にゲストの先生を2人お呼びし3人で講座をもってきました。が、ご存じの通り今年度は時流がさらに混乱の度を増してきているため私の友人で、できるだけ沢山の超専門家・本物人をお呼びしようと思っています。
 また、岐阜県でもこれをモデルとした同様の試みをされています。この8月には私と親しい発明家の政木和三さんと環境問題に詳しい『地球村』代表の高木善之さんをお呼びして、「創造性開発のための新技術考察セミナー」といセミナーを岐阜県の主催で開催されたようです。また来年の3月には今年に引き続き、官民一体のセミナー「岐阜県ルネッサンス’96」に私も出席する予定です。(詳しくは次号で述べることにします。)

フナイミーティング'95 <特別総集編>
大和への邂逅、夢薫る本物人たち《全講座》 \15,800(税別)
《1部》 参加料\12,000(税別)
10:30
〜12:00



1
1 「藤原直哉、歴史を語る」 〜黄金の国、ジパングの謎〜
(株)牛之宮 代表取締役
藤原 直哉氏(東京講演のみ)
2 「逆説の日本史」 〜縄文最大の謎、三内丸山遺跡〜
歴史作家
井沢 元彦氏
3 「2050年は江戸時代」 〜大江戸リサイクル事情〜
武蔵野美術大学講師
石川 英輔氏
4 「大和的」 〜未知の力をそなえる約束〜
大和古流21世
友常 貴仁
13:30
〜14:30




歴史討論会
「大和への邂逅」 〜自らの歴史観を持つ必要性〜
コーディネーター
藤原 直哉 氏
出演者
井沢 元彦 氏/石川 英輔 氏/友常 貴仁 氏
(講演内容)
大和とめぐりあう、大和を思い出す。本当の日本とは何か・・・藤原直哉氏が初めて歴史にスポットを当て縄文、大和、江戸時代の知恵を縦横無尽に駆使し、国際化時代の現代日本に警鐘をならす。特別歴史討論会。
14:50
〜15:50




「感動は魂への共鳴」 〜地球交響曲3 制作へむけて〜
特別講演
映画監督
龍村 仁 氏
語られる人々
ダライ・ラマ/ダフニー・シェルドリック/ジャック・マイヨール
16:00
〜17:40




「船井幸雄と夢見る本物人たち」 〜全てはうまくいっている〜
特別ゲスト
黒沢 吾耶 氏/御堂 龍児 氏/宮崎 雅敬 氏/中根 茂 氏 その他多数出演
(講演内容)
やがて夢薫る本物人たちの時代が来る--現実から逃避せず、真正面から自らの使命を自覚し、夢を現実のものとなし得てきた者--本物人たち。船井幸雄の貴重講演の中で本物人達が随所で登場し、意見を述べる初の試み。
《2部》 参加料 \8,000(税別)
18:00
〜19:10




5 THE CONPRESSION
「時間軸の圧縮」
(株)フォロ 代表取締役社長
黒沢 吾耶 氏 (東京講演のみ)
6 「高次元医学」
(株)十字の漢方 代表取締役社長
宮崎 雅敬 氏
7 「風水と精霊たちのささやき」
風水気学研究所所長
御堂 龍児 氏
8 「波動について」
(株)生命環境公学中根研究所 代表取締役
中根 滋 氏
19:30〜
2100




船井幸雄と夢薫る本物人たちとの邂逅(めぐりあい)の場
(当日特別ゲストが多数出席の予定)
(内容)
目的を同じくする友と気軽に語り合う、数多くの夢薫る本物人たちとのめぐりあいの中で再び自分自身見つめ直すために--。当日は船井幸雄と本物人を囲んでの様々なイベント、また、簡単な食事・ドリンクをご用意させていただきました。各界からも著名な特別招待ゲストも多数ご来場いただく予定です。講座よりも愉しい夕べを企画いたしました。

 

4、集団の意識が道を決める

(1)集団意識の総和がすべてを決める

 人類は今、「崩壊」か「蘇生」かを選択する分水嶺に立っています。そしてそれを決するのは、実は人類の意識のエネルギーの総和なのです。多くの人が「このままの浪費的活動を続ける」と選択すれば崩壊に向かい、 「本物の技術を採り入れ、資本主義を調整・変更する」 と決すればパラダイスへ向かいます。しかし、現在だけを見ていると、従来の破滅への道をあたかも慣性の法則に従うように選んでしまう人のほうがやはり多いように思えます。そう考えると悲観的になってしまいますが、私はそうは思いません。一人ひとりが現在の時代認識に気づき、それを意識のエネルギーという形でまとめていけば、ある日時流が急変して、人類はより良い道を進むはずです。そのポイントが次で述べる「百匹目の猿現象」ですが、この概念を導入しないまでも、悲観的見解を打ち消す最大のポイントは 「パラダイス時代のために意識と行動を変えよう」 という意識が、地球生命全体にとってプラス意識であることです。プラス志向の意識であるがゆえに、同調したときのエネルギーの力は極めて強いものとなり、人びとの意識をよりよい方向に感化していくのです。

(2)百匹目の猿現象がポイント

 そういった人びとの意識がパラダイス時代を志向し、ひいてはそれが人類全体の意識となるポイントを説明するよい例に動物学会で有名な「百匹目の猿」という話があります。40年ほど前のことです。宮崎県の東海岸に野生の猿が棲息している幸島という島があります。餌付けをする人がさつま芋を猿にやっていたところ、ある日、一匹のリーダー猿が海水で芋を洗って食べ始めました。こうして食べると泥や砂がとれるし塩味がついておいしい。それを見た他の猿が真似をし始め、ある若い一匹の猿が加わったときからその幸島の猿全員がわーとやりだした。同時に遠く離れた山の猿が、日本中のいろんな所の猿が、その時点から海の中で芋を洗って食べ始めたのです。この仲間に加わった若い一匹のキーポイントを演じた猿のことを象徴的に 「百匹目の猿」 というのです。こうした現象は人間やほ乳類でけでなく鳥類や昆虫にまであることがわかっています。これはなにを意味しているかというと人や動物たちの心が見えない部分でつながっているということです。どこかで誰かが良いことをし始めるとそれは集団内で必ず真似され、それが一定のパーセンテージに達すると遠く離れたところでもそのような現象が始まるのです。一番肝心なことは、良いと思うことを誰かが一刻も早く始めることなのです。誰かが始めないとこの現象は起きてこないのです。
 まず初めにリーダーなのです。県政というレベルで見てますと岐阜県には梶原知事というゆくゆくは百匹目の猿現象を起こしそうなリーダーがいらっしゃいます。そういうことから百匹目の猿現象を起こす可能性が岐阜にも有るのではないかと思うのです。岐阜県から今度は日本全体に、そして日本が世界に対する「百匹目の猿」を果たし、アジアもしくは世界全般に広がるのではないかと私は嬉しい予測をしています。