コンピュータを使う側 つくる側の面白トーク |
マナ板の鯉 |
大道 等 株式会社テクノア取締役 |
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料理人 | |
藤掛庄市 岐阜大学教育学部教授 |
−「岐阜を考える」のこの欄は様々な分野で活躍していらしゃる方に登場していただき、社業繁栄の一助になればということで設けております。今回はコンピュータをうまく自分の仕事に生かしていらしゃる岐阜大学教育学部の藤掛教授と、マナ板の”鯉”となる業務用ソフトウェアの開発等に全力投球する(株)テクノアの大道社長の登場です。
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ふじかけ・しょういち 1936年、愛知県生まれ。県日米協会事務局長、県国際交流団体協議会副会長、県ハンガリー協会監事、岐阜市友好姉妹都市推進協議会副会長、同国際交流基金監事。タバコは吸わず、コーヒーは飲まない。オペラやジャズ音楽の鑑賞が趣味。ふくろうの人形のコレクターとして有名。 |
おおみち・ひとし 1949年、滋賀県生まれ。高校時代は硬式野球の選手として活躍。現在は暇を見つけては古寺や仏像を観に出かけている。(株)アルミック、(株)岩田製作所、岐阜ドローイング(株)、(株)希望社、ゼンフク(株)、(株)プロスパーとともに「れんげ草クラブ」をつくる。中小企業家同好会会員。 |
大道 | 岐阜でコンピュータのビジネスを始めまして15年になります。バブル期を頂点としまして、私たちのような会社でも岐阜という地元だけを見ていたら新たな伸展はないと感じていまして、4、5年前から全国指向で来たわけです。全国の新しいマーケットに出て、新しいユーザーとの出会いもある反面、ビジネスの厳しさを痛感しているところですね。 |
藤掛 | 最近は全国から海外にも営業のエリアを広げていらしゃるんですね。 |
大道 | 海外といいましても、今は昔のような遠いイメージはありませんよね。例えば、岐阜から鹿児島まで行くのと、台湾まで行くのとどれだけ時間が違うのかと。鹿児島まで1時間半内で行けますし、台湾までなら3時間で着いちゃう。大阪の人が新幹線で東京に出張するのと同じ時間だという感じで、海を超えた近いところに様々なビジネスチャンスがあるんですね。私たちの商品も英語バーションをつくったり色々とチャレンジしています。ただ、英語のバーションをつくるのも、もとのソフトをつくるのも人間がやるわけで、当然英語のバージョンをつくる時は英語圏出身者の方が適任だと言う訳でワシントンDC出身の青年にその仕事を担当してもらっています。そういう意味でいえば、先生が力を入れていらしゃる国際交流、つまり普段着の国際化に少しでも貢献しているのではないかと思っていますし、国内にとどまらず、身近な海外でビジネスすることに、これからの中小も含めた企業の伸びる道があるのではないかと、そんなことを感じています。 |
藤掛 | いまや、インターネットによるマルチメディア時代に入って、これを利用すれば資本力のない個人でも、インターネット上で世界を相手にビジネスができるようになっています。問題はやはり言葉ですね。買う側の時は日本語でもいいが、売る側になれば、これは英語でしかない。とくにコンピュータソフトは英語でなければ世界に売れません。英語国だけでなく、アジア圏諸国に対してもそうです。大道さんのところでは英語バージョンのソフトを作っていらしゃるのはさすがですね。今、アメリカでもヨーロッパでも昔と違って商売が非常に積極的になっています。日本語のカタログをつくったりしてね。彼らのメッセージに有名なのがあって、「We are only fax away from you」。 つまり、距離的には遠い日本の消費者とでも、こと商品の注文に関しては、ファックスを出せばすぐ届く距離だというわけです。しかも、日本語でも結構です、というメールオーダーの会社が増えていますね。ビジネスチャンスは世界中にあるということで、大道さんにもがっんばってほしいですね。 |
コンピュータマニュアル表示はわかりやすく
大道 | 先生はコンピュータのことをよくご存じで、とくに先生のように使う側から、問題提起をしていただいて、私たちはそれを参考にしたいんです。 |
藤掛 | 日本のと比べて、外国のコンピュータ・マニュアルは非常に使いやすいんです。とくにアメリカの場合はマニュアルを書く手順が定まって簡単明快ですね。英語のコンピュータ用語は、日常語が比喩的に使われているだけなんです。 Eraseとかfindとかね。それが日本語化されると、消去とか検索とか難しい漢語になってしまう。一番ばからしいのは、英語では、 YesとNoになっているところが、日本語化されると、「了解」「取り消し」となっていてね。これでは日本語化ではなくて、漢語化、つまり中国語化ですね。わざわざ中国語化するくらいなら、英語のままにしておいていた方がいいわけです。 |
大道 | 例えば確かにコンピュータ業界の中だけで通用するコンピュータ用語というのがありますね。しかし、今は末端の一般の家庭にまでコンピュータは普及していますから、一般ユーザーにもわかりやすいものにしていく必要がありますね。 |
藤掛 | 色んな分野の人がコンピュータを使えるようになって、私の学生たちも私以上にコンピュータを使いこなしていますね。多摩美大は非常にコンピュータが盛んなんです。エンジニアを芸術家にすることは難しいことですが、芸術家にコンピュータを教えることは意外に簡単なんですよ。 |
大道 | 少し話はそれますが、芸術家と称する人をにわかに多く輩出するということは難しいと思うんです。既存の網を破っていく人を受け入れる基盤ができていませんね。日本はバブルの時、たくさん利益を出した会社が株式や土地に投資しました。そして多くの企業が今猛反省していますが、新しい投資の対象については未発見の状態です。日本の企業に大切なのはソフトの部分、つまり、網を破るような若者たちを自由にさせる環境を与えることにもっと投資すべきだと思いますね。先程、先生がおっしゃたように、技術屋にアーチィスティックなことをやらすのは確かに難しいことです。私たちの場合でも、優秀なプログラマーがシステムエンジニアとして能力を発揮できる保障はありません。ところが、この業界では今だにプログラマーを何年かやると、出世魚のように、次はシステムエンジニアになっていくんだろうという幻想があるんです。やはり、仕事としてプログラムを組むことと、システムをデザインするということは質が違うわけです。こうした基本的なところを明確に識別して仕事に取り組まなければうまくいきません。 |
藤掛 | コンピュータの仕事に携わっていらしゃる大道さんに、コンピューターを使う側から言っておきたいことは、マーシャル・マクルーハンの言を借りれば、「すべのメディアは人間の機能の延長である」ということから言って、コンピュータは人間の脳の機能の延長であるというとです。 とくに computingと記憶力の延長ですね。 computingというのは、単なる計算力ではなくて、あの人は計算高いといわれるような、ものごとを総合的に考える力のことです。で、われわれがコンピュータを使うのは、それ自体が目的でなく、それを道具として、脳の延長として使っているわけです。その時に大事なのは、コンピュータに何ができるか、また何ができないかを理解していて、それで何をさせたら人間以上に上手に、より早くできるかということです。コンピュータが好きだから、コンピュータをせっかく買ったから何でもコンピュータにやらせようというのは、コンピュータの専門家の仕事であって、われわれユーザーはコンピュータを使えば、より簡単に、しかも安上がりにできることにコンピュータを使えばいいわけです。そのためには、コンピュータは、もっともっと使いやすいものにならねばなりませんね。とくにソフト面、そこが大道さんの会社の仕事ですね。 |
「What」の発想を持ち続けるということ
大道 | そうですね。私の会社でも今まではやることが決まっていたんですよ。例えば地元の企業や農協などの事務部門をコンピュータ化することが仕事の対象でした。それが一応、ある意味で一巡しまして、今はマルチメディアとか、インターネットだと。商売のソフト的な、またハード的な道具が沢山押し寄せてきていますが、問題はその道具を使って何をやるかということですね。新しい「What」を見つけて事業に結び付けていかなくてはいけません。「what」の発見や創造次第では、大手とか中堅とかいう域を超えて、私ども中小企業でも伸びていけるチャンスがあると思います。そのために、「what」をみつけてくれる人がほしいわけで、「What」が出てくれば、あとは、ハードやソフトといった道具を使ってやっていけばいいと考えますね。私どものようなソフト会社の今後は、どういう商品がメインですか、どういう関係のところを得意としていますかという問いに対して、きちっと答えられなければいけませんし、今はこれが目玉商品で、次はこういう企画をもっておりますと3ついえるか、5ついえるか、そんなところが勝負になってくると思っています。 |
一口データ ■株式会社テクノア
五年前に発足した「れんげ草くらぶ」の会員企業として、演劇、音楽、落語、フラメンコ、邦楽等の公演を重ねている。公演は招待で無料を原則としている。 |