座談会 |
インターネットと企業経営
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座 長 杉井 鏡生 (インフォメーション コーディネーター) 委 員 松尾 健司 (オンダ国際特許事務所 情報サービス室) 市川 淳 (河合石灰工業(株) KLシステム開発室主任) 篠岡 良尚 ((株)水明館 営業企画室長) 浅井 俊文 (大日本土木(株) 理事 情報システム部長) 原 善一郎 (太平洋工業(株) 総合企画部課長) 若村 浩昭 (ワカムラ電機(株) 取締役) 司 会 渡邊 東 ((財)岐阜県産業経済研究センター 副理事長) |
渡邊(司会)
本日は、皆様お忙しいところ御出席いただきありがとうございます。さて、現在インターネットの利用が急速に進んでおり、企業経営にとってインターネットは電話やファックスと同じくらい必要不可欠なものとして、それへの取り組みは待ったなしの事態になっております。そこで本日は、県内でインターネットを先進的かつ積極的に利用しておられる企業の皆様をお招きし、インターネットと企業経営というテーマでご議論をいただきます。それでは、最初にインフォメーション コーディネーターの杉井様から口火を切っていただきたいと存じます。 |
インターネットでビジネス環境がどう変わるか |
杉井
私からは、インターネットによって我々のビジネス環境がどういう方向に変わっていくかを話したいと思います。インターネットが普及して、世の中ではEC(電子商取引)が注目されています。アメリカでは、一昨年が電子商取引元年、昨年はそれが爆発した年だといわれています。オンラインでの取引がさらに急拡大するとの予測も出されています。電子商取引関連の企業が上場するとすごい株価がついてしまう現象も起きました。いわゆるインターネット株バブルです。しかし、私は必ずしもネットワーク上の取引だけがECではないと感じています。 私は、先日インターネットの「旅の窓口」というサイトにアクセスし、大分で泊まるホテルを探しました。このサイトは会員になれば予約も出来ますが、私は会員ではなかったので、ホテルに電話をかけて予約をしました。その意味で、狭義の電子商取引はしませんでしたが、こうした利用の仕方をする人が結構多いのです。これが情報化時代の消費者行動です。そうすると、自分の会社がオンライン上で取り引きするかどうかにかかわらず、インターネットの中にその企業がなければ、初めから選択の枠から洩れてしまうわけです。こうした情報の使われ方が広がってくる時代です。 またこれからの時代は、従来の系列だけで仕事が出来る時代ではありません。色々な企業と提携しながら仕事をやっていかなければならない。全く知らないところとの提携も必要になります。しかし、ネットワーク上で多様な企業が出会えれば柔軟な組合せが可能になるといっても、全く知らない企業との取引はリスクが高いわけです。そこで、企業の信用情報を提供するビジネスが成り立つわけです。そうなると、企業の信用情報データベースで自分の会社が80点だ60点だと格付けされるのは気に入らないと言っているのでは話が進まない。信用情報データベースに入ってなければ、はじめから除外されてしまいます。そのため、信用情報の会社に対して、企業が自ら情報を出さざるを得なくなるわけです。また、インターネットの中でメーリングリストや電子掲示板を使って、様々なグループがコミュニケーションをしています。その中に出てきた製品の評判だとか、企業の評判というものが、瞬く間に広がり、その結果が企業にそっくり返ってくる時代になっています。 そういう意味では企業にとって情報が業務の中で直接使われるだけでなく、その他の場面でも非常に大きな意味を持ちつつあるのです。企業にとってネットで直接的にどれだけ儲けるかというだけでなく、企業のブランディング、まさに企業価値をどう高めていくかが非常に重要なポイントになってくるような気がします。 それからもうひとつ大きなポイントは、企業のビジネスモデルそのものが変わってくることだと思います。しかも、そのビジネスモデルが変わる時に、例えばセブンイレブンが銀行を始めるというように、今までのような特定の業種に縛られなくなっています。また、ビジネスモデルを考えるときには、自分たちのやっている仕事自体をもう一回定義し直す必要も出てきます。自社のコアになる、一番得意な領域をきちんと把握し、そこから時代に合わせて定義し直すことにより、新しいビジネスが生まれてくるかもしれない。そう考えることで、どこでどうやって儲けていくかということ自体が変わってくるのです。 ちょうど去年の今頃、情報通信機器メーカーの立地調査をしましたが、大手のパソコンメーカーを取材すると、ほとんどの企業が「もう我々は物を売るビジネスから変わっていかなければいけない」と言うのです。物を作るメーカーが物を売るビジネスから変わりたいと言い出した。「我々はこれからサービスを売っていくようにならなければいけない」と言うわけです。場合によっては、物はサービスに付随するものになるかもしれない。例えばインターネットを利用すればパソコンが付いてきます、というようなビジネスモデルです。人はパソコン自体が欲しくてパソコンを買うわけではないのです。パソコンはインターネットを使うために買うのだとしたら、インターネットに付随するビジネスが登場してもおかしくないのです。 ネットワーク社会に対応してビジネスモデルを考える上で企業に求められる最も重要なポイントは、顧客指向をどれだけ徹底出来るかということでしょう。それから、顧客指向に対応して、いかに意思決定を早くするかということも大事です。今までのような縦型のラインだけで全てを動かすのではなく、全ての社員が戦力になるために情報共有を進めることも必要になります。また、今まではピラミッド型の非常にがっちりした組織で成り立ってきましたが、それは方向付けをあまり変えないで済む時代だったからです。ところが非常に変動が激しい時代には、柔軟かつ速やかに方向を変えられる組織に変わる必要があり、それに適した情報流通の仕組みが求められます。 そういう中で新しいビジネスを常に展開していかなければいけない。しかも仕事自体も、今までの枠組みにとらわれず、例えば出版社なら本を作る産業だと思っていたのを情報産業と捉え直すように、自社の事業を定義し直す必要があります。そうすると違う展開が見えてくるわけです。それが大きな流れだと思います。 その一方で、理屈ではインターネットに対応してビジネスモデルを変える必要性がわかったけれど、いざ始めようとするとうまく進まない、変革出来ないという壁にぶつかります。その要因は色々なケースがあります。例えば技術的な阻害要因から新しい技術や手法が取り入れられないケースもあるでしょう。技術の問題ではなくて、社内意識の問題やトップの取り組む姿勢が阻害要因となることも多いでしょう。そうした中でうまくやっていくにはどうしたらいいのか、企業の中で情報化を広めるにはどうしたらいいのかといった点、それともうひとつは、インターネットがどんどん普及していくと、ネットワークは便利なのですけれど、便利であるがゆえに障害になってくるものも当然あるわけです。例えばセキュリティの問題などもそうです。最近やたらと悪質なハッカーなどが活躍して驚かされるわけですが、そうしたセキュリティ対策に関しても、技術の問題だけじゃない取り組みが求められています。 それから、企業だけが努力してもなかなかうまくいかない社会環境の問題があります。例えば電子政府が話題になっていますが、我々は電子政府のあり方に関しても色々言うべきことがありそうです。 さらに大きな問題は、電子政府を実現しようとする時に、通信ネットワークの使用料金がまだまだ日本では高いということです。企業にとっても、消費者にとってもより使いやすくするために、利用者側から提言することが何かあるのじゃないかと考えています。 また、低価格のインターネット接続サービスが急速に普及して来ていますが、こうした新しいサービスは市場原理でやると言われています。地域によっては早くから利用出来るところも利用が遅れるところも出てくるかもしれない。その結果、情報化が進めば進むほど利用環境の整った地域では経済力が高まる一方で、利用環境が整わず使えない地域との間に経済格差が生じてしまう恐れがあります。そういう問題にどう対処したらいいのかということも議論出来ればと思います。 |
渡邊
それでは、ただ今の御発言に関連して、最初に皆様が内部でインターネットを進めていく上でどんなところが障害になって、それをどう克服してきたか、例えばネックになっている社長をどう説得したかといった点についてお話し下さい。 |
情報化をどう進めたか:トップの説得と社内教育 |
原
トップの理解は情報化、インターネットを進めるのに、本当にキーになることで、これをうまくやればあとは金次第と思うのです。そこで、社長をいかにして説得したか。基本的には「ゲリラ戦法」と申しあげるのが判りやすいでしょう。最初はとにかくやらなきゃいけないなということで、事務所の何人かにパソコンを配って、いろんなことが出来ることを体験させて、そこでよかったことばかりを集めて、まとめて報告していく。期が熟したら、「社長、これがだめなので遅れているのですよ」「これがなかったら会社は潰れます」というふうに言った。そうすると「じゃあやってみようか」ということになりまして、社長室にパソコンを置いてしまいました。その後に専務取締役に「社長のところにも置きました」と伝えたのです。そういうことで感覚的にはゲリラ戦です。1人ずつ仲間を作って、そこから広めることにより、いくつかの拠点を作って、ある程度の受け皿の準備をします。そのあと本番をどんと進めて、最後に、落穂拾いをやります。 また普及という点では、経営トップをいかに引き込むかということとともに、情報リテラシーの問題が非常に大きいと思います。情報リテラシーをどのように持つかということですが、私どもの会社では国家試験の初級システム・アドミニストレーター(情報処理技術者)の受験と合格を薦めております。現時点で事務所では16パーセントの人が初級システム・アドミニストレーターに合格しております。ひょっとすると多くのソフトハウスよりたくさんの合格者がいるかもしれません。したがいまして、情報システムそのものの面倒くささに対して、その人たちが技術でカバーしてくれています。コンピュータの能力でカバーしているところもありますが、個人の技術力でカバーしてくれているところがすごく大きいと見ています。 |
若村
当社の場合は、親会社の方から受発注の業務をしたり、図面の送れる環境にしてくれという要請が出てきたわけですが、それじゃインターネットを使ってみようということになったのです。協力会社の会がありますが、二代目はやっているけれど、やっぱり親父さんはなかなかそういう方へは意識が行かない。変な話ですが、今まで親会社にくっついて生きてきたから、今後もそうすれば生きていけるというのが強くて、危機感を感じている二代目とは大きな意識格差があるわけです。インターネットで資材調達をするメーカーがたくさんありますし、親会社もそれをやり始めたものですから、これはまずい、放っとくわけにはいかない。自社の経営基盤にも影響してくるという現実に直面し、嫌がおうでもやらなきゃいけないということで、親父さんをいちいち説得している暇はないから放っといて、こっちで勝手に進めるよということで、取り組んでいるというのが実情です。 |
浅井
私ども、最初にネットワークを作る時にちょっと苦労しました。それは300何十カ所ある現場にパソコンを置いて始めたのですが、このネットワークの何たるかがわからない。一応パソコン通信網を作ってメールや会議室から始めたのですが、メールの打ち方ももちろんわからない。そこで教育を徹底してやりました。これはどうしてもやらなければいけないと思いますね。もうひとつは標語を決めたことです。どういう標語かというと、パソコン通信ネット、当社はDNネットという名前をつけたのですが、「DNネットは会社と個人、個人と個人をつなぐコミュニケーション・ツールです」、こういう標語を決めまして、いろんな機会にこの標語をPRして、出す文書には全部それが書いてあるというような形でそれを覚えさせ、そういうツールなのだということを理解させたら、それから結構使いだしました。 それから、現場ではパソコンで業務用のプログラムを使いますが、そのプログラムの自動メンテナンスをDNネットにのせたということですね。ライブラリから自動的にダウンロードすれば、いちいちフロッピーで送る必要がありませんし、これが結構情報化のコストダウンにつながって、それをトップのほうは評価をしたという経緯があります。 今、パソコンで使っている業務用のソフトは、600ユーザーぐらい社内にありますが、このメンテナンス方法は大きな効果を上げています。それともうひとつは副社長が海外に行くときに、ネットが使えるようにパソコンを持っていってもらって、アクセスしてもらっています。その当時はまだインターネットはなかったものですから、日本語の変換が出来ないところからは、ローマ字のままで打ち込み、それをそのまま会議室に流したこともあります。結構みんな面白がって見ていました。特に海外の辺鄙な現場での起工式の様子のアップは好評でした。最近副社長が、これからは自分のところのアポイントは全部メールでいくぞと、言い出したものですから、営業部長クラスはみんなパソコンがないと副社長のアポイントがとれない、アポイントがとれないと営業に回れないと、こういうトップダウンが結構効果を上げております。 もうひとつは例の阪神大震災の時です。あの時はネットワークがものすごく活躍しまして、社内の役員クラスがこのシステムを見直したという経緯があります。それから会議室のアクセスがぼんと増えました。現地で閉じこめられた人間がパソコンから今震度いくつだなんてことを、どんどん会議室に送ってくるわけです。本当に分刻みで載っています。それをみんなが見る、生の状況を全国の社員が知るということがあって、今の状況につながっているという感じがします。 |
松尾
私どもはトップ自身が非常に情報化に積極的で、最近では「うちの事務所でなにかIT革命となるようなことを出来ないものか」と意見を求めるほどです。そういった関係で、普及に苦労したということはなかったのですが、普及が進んだ大きな要因として内部システムエンジニアの存在があげられると思います。 現在120人のスタッフに対し、4人のSEが存在しています。中小企業の場合は、システムエンジニアの仕事は直接売り上げにつながらないので、内部に備えるのは難しいと思いますが、当社で情報化が進んだ理由は内部SEの存在が大きかったと思います。 特に我々のトップは、「まず、やれ!やりながら考えろ!」というところがあって、業務を行うためのソフトについても、外部のソフトウエアハウスに頼んで、仕様決めをして、打ち合わせをして、とやっているとスピードについていけません。そんな中で社内にSEがいて、これやって、あれやって、という要望に対して木目細やかにソフトの改変を行ってくれていることが普及を促進させている理由だと思います。 |
杉井
教育については、従業員が数名しかいなくて、一人当たりの教育コストが高くなってしまうような場合には、公的な機関や業界の団体などの支援が受けられるとありがたいでしょう。しかもその場合は、地域ということが重要なポイントになってきます。講習会などが東京で開かれたのでは容易に行けません。講習会が地元で行われ、その後の相談も気軽に出来るような場所での支援というのが大事ではないかと思います。そこに情報化支援における地域ならではの役割があります。例えば産研センターのような公的機関が教育を請け負うような社会的な仕組みも必要だろうと思います。 もうひとつは、そうは言っても本人にやる気がない限り、教育システムもうまく行きません。その点で非常にうまくいった例として、アサヒビールがあります。そこには、社内のネットワーク利用を進めて本まで出版された総務の宮本さんという方がいます。年輩の方で、パソコンについては全く素人の方でした。わざわざそういう方を担当者に任命して社内の普及を図ったのです。なぜそれが良かったかと言うと、いまさら電子メールなんてオレはいやだよという年輩の社員に、バリバリの若手でパソコンを簡単に扱うような人をあてがったのでは、とてもじゃないけれどやる気がなくなる。そこで、あの人でも出来るなら、オレだって出来そうだという人を推進者に任命したわけです。 定年間近な人にパソコンを憶えてもらうための説得材料も見つけました。我々の平均寿命が延びてくると、会社をやめた後の人生はずいぶん長いです。その時、インターネットを使えると色々なことが出来るというのを説得の切り札にしたのですね。ライオンでは、会社にいた時にパソコンを憶えたおかげで、今の生活が楽しく友達が増えてホームページまで作っています、というような定年退職者の話を集めて社内報に載せたのが功を奏したと言われていました。 それからもうひとつ、組織での情報共有を進める時に大きな問題があります。従来のサラリーマンの性なのかもしれませんが、なるべく自分の情報は出さないことが、自分の価値を維持すると思っていることです。そのために情報の交流が進まないことが多いのです。これを何とかしなければいけないと思います。その時、大事なことは、情報は出せば出すほど自分の所により重要な情報が集まってくることを理解してもらうことです。 ただそうは言っても、言葉だけではなかなか納得してくれないです。そこでもうひと工夫します。これもやはり担当者をうまく当てることです。サンスターが電子メールによる営業部門の情報化を進めたときがその例です。営業部門というのは、どの企業でも情報化が遅れがちです。営業関連の方はオレ流で、いままでの経験と勘とやる気で顧客を獲得してくるものだと思っているわけです。実績主義ですから、部外者の理屈だけでは動かないのです。そこでサンスターでは、わざわざ営業で一番成績がよくて人望が高い課長を電子メールの普及推進担当に任命したのです。いかにもコンピュータが好きそうな人や情報部門の人がやると、営業では、「オレたちが稼いでいるのに、なんであんな奴の言うことを聞かなきゃならないのだ」となりがちです。会社にとっては一番成績のいい人を回すわけですから大きな負担になりますが、一定の期間は専任の形で、その人に全国の営業所を回ってもらったそうです。これが成功のひとつの要因であったといいます。 また、情報共有を進めるためには、企業自体もなるべく情報をオープンにしていくという姿勢がないとうまくいかないです。うまく進めた例としては、レンタルのニッケンという会社があります。この会社は、全ての情報を公開するということを原則にしています。この会社がすごいのは、社員個々の席すら決めてないのです。出社した時に自分が適当なパソコンの前に座って、そこに自分の名札を置く。そこがその日の席になります。自分のIDを打ち込むと社内電話も自動的に番号が切り替わって、その人の電話番号になるのです。固定した机を持たせないから机の中に情報をしまい込むこともなくなります。各個人用には、書類箱程度のケースがあって、それが棚に積んであります。それが個人で持つ物理的な情報の全てです。あとはコンピュータの中に全ての情報がある。そのことによって自分の情報を抱え込むことが無くなり、みんなで情報を共有出来るシステムを作っています。 こうしたことを通じて、今まで情報を溜め込むこと自体に価値があると思い込んでいたものが少しずつ変わってくると思います。情報を抱え込んで出さないことの本当の理由は、持っている情報がガラクタであることがばれるのが怖いだけじゃないでしょうか。サラリーマンは、自分の持っている情報に価値があると信じ込んでいるだけです。実は情報を出してみると、それならもっとこういうやり方がありますよ、と他の人がアイディアを出してくれて膨らむ。それによってはじめて情報に価値が出てくるわけです。 そういう工夫によって情報化を進めるとともに、一方で、本来自分がやるべきことに関してはなるべく人間が直接かかわっていかないとやはりだめなのですね。ネットワークでオンラインショッピングが出来るからと言っても、うまく成功しているところはサービスのいいところなのです。情報システムの出来がいいから売れるというほど世の中は甘くない。買ってくれたお客さんにこまめにメールを出して、例えば少し配達が遅れそうになったら遅れますということをきちんと連絡する。そういうところが本当に売れるわけです。今までは人にしか出来ないそういうところだけに手をかけるわけにいかなかった。サラリーマンの使っている時間の20何パーセントは実は情報を探している時間だという統計があるそうです。情報を探す手間は電子化によって大幅に削減出来ます。そういう機械化の出来る無駄な時間を無くすように情報化をうまく使っていくことが必要でしょう。 |
インターネットの利用可能性と効果 |
渡邊
当センターの調査によると、インターネットの利用状況については、まだまだ情報を受けるとか情報を出すといった利用がほとんどですが、普及してくるに従って利用の仕方も相当変わってくる気がします。皆様の中で、既に情報を受ける、情報を出す以外の取り組みをされている方がおられると思いますが、現在の取組状況や今後の利用の仕方についてお話願いたいと思います。 |
篠岡
インターネットで予約を受けているのですが、去年の9月から12月までで198件の予約成立があります。問い合わせはその10倍ほどですが、どうしてもピーク時に集中するので客室がないということが起こります。 私どもはサービス業ですので顧客管理ということで、現在会員組織は水明クラブ会員とクレジットカード会員と、合わせて5,000人ほどいます。ホームページを開設したときにネットの会員さんを募集したところ最初は一万件ほど申し込みが来たのですが、重複した人を整理して6千人ほどの会員にInet(アイネット)ニュースというメールを送付しています。「○○さんこんにちは〜」ということで、直接会員の手元に流させていただき、配信をいらない方はおっしゃってくださいと書いております。メールはとにかく短く、端的にして、あとはホームページを開いて詳しく見ていただくようにしています。だけど会員になった限りはホームページにないものを知らせていきたいので、そういう情報を流しております。 |
原
インターネットにはいろんなジャンルがあり、その中でホームページと言われているウェブサイトがあります。私どもの会社は部品製造が主力でしたので、B to Bのビジネスが基本でございます。したがってホームページなんか、関係ないだろうというのが従来の考え方でしたが、今では大きく考えが変わっています。現在更新中のものは、5つのターゲットのお客さん、つまり、ターゲット・オーディエンスを決めています。「株主」「顧客」「部品購入先」「就職応募者」「グループ企業の従業員」です。内容もB to Bであったり、B to Cであったり、その中間体であったりしています。ホームページをうまく利用することが必要だと感じています。 |
浅井
私どものホームページは最初、採用、企業PR中心だったのですが、社内でその他にホームページを使う手はないかと今考えているのです。部署別のホームページとかですが、建設CALSになりますと、現場ごとにみんなホームページを開いてPRしているんです。そういう時に会社でひとつのホームページだけでなく、社内の情報の共有化みたいなところで、工事部なら工事部のホームページ、営業部なら営業部のホームページ、管理部なら管理部のホームページがあると、いいんのゃないかと思っています。 |
市川
ホームページで面白い話が入って来たのは、私どもは環境関係もやっていますので、その関係であるメーカーさんの研究室の方からこんなことをやっているけれどおたくの製品を使ってみたいという話がありました。また面白いのは、石灰を扱っていますので、高校の先生から化石ありませんかというのが来ましたね。学生に化石を見せたいので、化石のサンプルがあったら少し分けてくださいということでした。意外なところから問い合わせが来ますので、面白いものやビジネスのネタになるものが結構あります。普通でしたらそんなところから絶対情報は来ないのですが、たまたまホームページを立ち上げていることで探されて問い合わせをされるので、情報を広く取るという意味ではインターネットはいいツールだと思っています。 |
杉井
浅井さんの各部署ごとのサーバーというお話は面白いです。ぜひやられたらと思います。事例としては、NTT東日本があります。そこでは全員に自分のホームページを作らせています。それが情報リテラシーにつながるということと、最近はやりのナレッジマネジメントにつながるということがあります。知の共有を図って組織としての新しい知の創造をしていこうという時に役立ちます。また自分をどうやって売り込むかということの訓練にもなるし、他人がどんな人であるかを知ることで相互の人間関係が作られてきます。部署ごとですとか、個人ごとにホームページをつくるというのは新しい組織のあり方で面白いと思います。 |
若村
ナレッジマネジメントということですと、某会社が今度専門家のデータベースを構築することになりました。例えばある部分の加工方法など専門分野の技術者をDB化することにより、業務の効率化を促すという事ですね。今までは各部署ごと、部門ごとで、技術的な横のつながりは、実はあまりなかったのですが、そういう整備をしていくという動きがあるのですね。我々のような下請けや特定の技術しか持っていないところは、新しい仕事が来た時には非常にありがたい。また、全然今まで付き合っていない事業所から、おまえのところ、そういえばあれやっているから、こんなこと出来ないかというように受注につながる可能性もありますね。 |
杉井
フェイス・ツゥ・フェイスでの通常の仕事ですと、例えば○○電機なら○○電機、△△電気なら△△電気の、ある特定部署の特定の人としか付き合えないのが普通です。それが、ホームページを作ったために、○○電機や△△電気の普段付き合っているのとは別の部署の人からメールの問い合わせがきて、新しい付き合いの窓口が広がったという話も聞きます。そういう効果もホームページを作ったおかげで出てくるのですね。 |
外部への対応をどうするか |
若村
我々がやっているのは大したことはないと思っていても、メーカーとの取引関係上、本当に出しちゃいけない技術もあるでしょう。そこら辺のガイドラインを明確にして、本当にオープン化することが、日本の企業風土の中で出来るのかという問題があります。 |
杉井
大企業でもそうなのですが、ホームページを開設したとき、外からの問い合わせをどこで受け止めるかということが、結構重要なテーマです。対外的なコミュニケーションのリテラシーがない人に直接メールが行ってしまうと困ります。ここでいうリテラシーというのは、基礎的な社会コミュニケーションの技術です。例えばお客さんから電話が来ても、自分の部署のことじゃないとわかりませんと切ってしまう人と、丁寧に当該部署に回してくれる人の違いみたいなものがある。それを無視してやるとかえってお客さんに対して失礼になるわけです。 これは企業によってもやり方が違います。例えば東芝の場合はホームページから当該部署にダイレクトにメールが行くようになっています。先端企業でも花王の場合は、エコーシステムという消費者相談窓口のシステムを持っていて、その経験から、外部からの問い合わせはきちんとそれを管理するところが当たった方がいいと考えているようです。担当部署がいったん受け取って当該部署に回し、それがちゃんと返事されたかどうか確認しているそうです。 これはどちらが正しいかじゃなくて組織のコミュニケーション文化の問題で、最終的にはその組織において、どちらがお客さんに素早くきちんと対応出来るかどうかの問題です。ダイレクトにやった方がいい場合もあれば、そうでない場合もあります。ただいずれにしても、世界中の人との双方向型のコミュニケーションが可能となり、ダイレクトにメールが来てしまう時代になったのです。どの社員が答えたとしても、外側から見るとその会社そのものなのですから、インターネット時代の社会的なコミュニケーション環境にどう対応していくかは企業にとって重要な課題だといえます。 |
原
我々も普通ではわからないホームページの使い方をやっていますからご紹介しますと、海外の会社と連携する場合、わざわざウェブサイトを作っています。それは軽いですがセキュリティをかけたサイトです。この仕事が終わったらそのサイトを壊してしまいます。プロジェクト・サイトということでやっております。 |
浅井
私の会社で取り組んでいる建設CALS/ECも、基本的にはウェブサイトですね。今、実験しておりますが、ライブカメラを施工現場に何カ所か備えておきましてね、ここで鉄筋の組立をやったり、コンクリートを打ったりの進捗状況をそのカメラでとらえて、それが本省や本社でもダイレクトに見られるというウェブサイトを作っています。社内で見せたら、インターネットの技術ってこんなに進んでいるのかとびっくりした社員がたくさんいます。先ほどオープン化という話があったのですが、やがてはこれがホームページに入り、この現場はこんな状況なのだよということが、社内はもちろんですが、市民の皆さんもどうぞご覧くださいというような時代になるのかなと思っています。 |
ホームページを見てもらう工夫等 |
渡邊
ところで、企業が折角ホームページを作っても、それを見てもらえなければ意味がありませんね。そこで、ホームページを見てもらうための工夫ですとか、これからホームページを作ってみようと思う企業がどんなことをやったら利用してもらえるかといったアドバイスをうかがいたいと思います。 |
杉井
一般にホームページを見てもらうのに、ターゲットを絞るというやり方と、広めるというやり方をうまく使い分けているように思います。インターネットというと幅広く世界中にというイメージがつい浮かぶのですが、意外とターゲットを絞ることに成功している例があります。 |
原
私達がホームページを作る時に相談している会社は、シリコンバレーにあるベンチャー企業です。そこは10数年来、マルチメディアという名前が出てくる前からそういうことについてやっている会社です。そこのアドバイスによると、基本的にはターゲットが明確でないものは見てもらえないそうです。それを聞いて、実際に私が他のホームページやカタログを見ていますと、確かに誰に読んでもらいたいのかが明解でないものはだめだと感じます。したがって自分が誰に読んでもらいたいかを明解にして、その人の思考(嗜好)パターンや生活パターンに基づいてやっていくというのが必要だと思います。 近年はやりの、データウエアハウス、データマイニング、OLAPなどという考え方も、そのポイントを探すことが目的ですので、「ターゲット・オーディエンスの明確化」ということは非常に大切な事でしょう。 |
松尾
インターネットは全世界へ!不特定多数へというイメージがありますが、逆に特定の集まりが存在しているというのも事実だと思います。そういったことを実感した事例として、事務所で翻訳スタッフを急遽たくさん募集する必要が生じた時のことです。まず、ホームページの求人コーナーに翻訳者募集という形で掲載したのですが、それとともに、翻訳者が集まるいくつかのメーリングリストに「オンダ特許が翻訳者を募集しています」という投稿をしたところ、その日のうちに30人ぐらいの応募が来たのです。それも、本当に特許翻訳を専門にやっている質の高い人からの応募が大量に来たということを体験して、メーリングリストの威力を実感しました。 |
杉井
そういう意味では、まさに一番視聴率の高いところに出せば効果的なのではなくて、うまく絞られたところに出すことの方が効果的といえますね。おそらくインターネットが世界に広がっているというのは、そういう多種多様なグループが沢山層になって重なっていることに価値があるので、全体の単なる量ではないのでしょうね。 |
篠岡
私どもがマーケティング戦略をやるときに、点の広告戦略より、例えば岐阜県とか中部でという面の観光で打ち込んだ方が強いと思うのです。だから、これからはインターネット市場の中で販売戦略をする時に、県の産業セクションが先取りしてそういう面の打ち方をすれば、見る側にすれば観光や温泉、宿などが整理されており、他の地方との競争に効果があると思います。各企業の小さなお金でたくさんのホームページの中へ打ち込むのは難しく、またおそらく野放し状態の競争の中へ突入していくのじゃないだろうか。それをうまくまとめていける協会とか、第三セクター的なところが検索ページやホームページを運営して、そこへ協力するというのがこれから大事じゃないかという気がするのです。 |
市川
私達は、ホームページを作ろうという時に、ちょうど近くの昼飯町という所で前方後円墳の発掘がありましたので、どうせなら地域の情報を載せようかということで、市の文化事業団から古墳の航空写真をご提供いただいたり、商工会議所から資料をいただきましたので、今は本社のある周りの史跡を紹介しています。企業のイメージとは関係ないんですが、会社があるこの地域を紹介してゆくことでホームページを見てもらえたらと思っています。 |
セキュリティをどう確保するか |
渡邊
どうもありがとうございます。それでは、次にセキュリティの問題に移らせていただきます。最近、東芝の話やハッカーの話がマスコミで大きく取り上げられておりますが、セキュリティの問題はどう考えていったらいいのか。あるいは実際どういう点で困っておられるのか。これらの点についてご発言をいただきたいと思います。 |
原
セキュリティについての基本的考え方についてお話をします。「カギはなぜかけるかというと、開けるためにかける」のです。つまり、「完全なセキュリティを維持しながら、自由にアクセスする」ということは出来ません。セキュリティというものはセキュリティホールがあるものが役に立つわけです。したがって、その点がまずそもそもの矛盾であります。それでは、どうしたら良いかというと、「隣よりもうちの方が入りにくいぞ」というのがセキュリティシステムの基本です。そうしないと、コストが莫大になり、非効率になります。本当にセキュリティを守りたければ、その情報をコンピュータに入れないことです。たとえば、役員人事などは、オーナーの頭の中でやるのが良さそうです。一番ゆるいセキュリティは、思い違いをしたら見る事が出来ないという程度の物で考えれば良いでしょう。 |
市川
社長からは大丈夫かとよく聞かれますが、物理的にはどうにでも出来ますよと。がんじがらめでお金をかけて一所懸命やれば出来ますが、誰かがそれをフロッピーで持っていってしまったら終わりですよ。結局使う側の意識というかモラルをきちんとさせないとセキュリティなんて守れませんよと説明しています。 |
杉井
例えばウィルスのチェックを全員にやらせているか、パスワードはディスプレイに貼らないといったことは徹底しているかといったことも大事です。 |
渡邊
そういうのが結構ありますからね。 |
原
情報の秘密性は項目だけではなく、集合体になっているかどうかでも関係します。単価情報は、B to Bの世界では秘密情報です。ただし、一枚の伝票上に書いて有る単価情報の秘密性と、単価台帳にまとまって書いてある場合との秘密性は大きく異なります。したがって、「まとまりで有るかどうか」もセキュリティのレベルを決めるときには大切な考慮点となります。また、「モラル」の問題も大切です。インターネットに直接接続されている場合は、不特定多数が受手になりますので、今までの手法だけでは不足します。 |
渡邊
先日ある人が、インターネットというのは自動車と似たようなシステムだと言っておられました。その方はシステムの類似性を指摘されたのですが、私はそれを聞いて危険性と便益との関係における類似性を思いました。つまり、自動車は時々事故が起きますが、それを恐れて自動車に乗らないで仕事が出来るか、生活が出来るかというと、それは出来ないのでインターネットも自動車と同じように事故があるからと言って使わないのではなく、事故を抑える工夫をしながら活用していくことが必要なツールではないかということです。 |
杉井
そうだと思います。自動車もそのためのいろんな仕組みが作られているわけですね。例えばルールを作る。人は右、車は左というようなルールがあったり、ここには停めてはいけませんよというルールがある。自動車の場合は、運転するために練習して免許をとりなさいというルールまであるわけです。電子メールには免許まで必要ないですが、使っていく中でこういうことが不都合だという時にルールだとか、マナーだとか、そういうものが少しずつ作られていく必要はあるのだろうということですね。自動車と一緒で、危険はあるけれど、その危険をうまく飼い慣らしていくことも必要なのでしょう。 管理ばかりを徹底してやっていったら何も使えなくなってしまうし、セキュリティだって技術的に相当高度にかけられますが、そのことで、ものすごく時間がかかり過ぎたり、不便になって使わなくなっては意味がないのです。自分たちがやっていること、例えば特に経済活動であれば、それによって被る損失とのバランスを考えながらやることも必要です。それから最後のところでは、保険制度みたいなものがうまく導入される必要もあります。ようやく最近、保険会社がコンピュータ関係の損失に保険をかけられる商品を考えています。もちろん予防は大事ですが、起きてしまった時にどうするかということが、日本のリスク管理の一番弱い部分でもあります。起きないような管理はよくやるのですが、起きてしまった時に、もうどうにもならなくなるということが多すぎます。そこのところも含めてセキュリティ対策を考えなければいけないでしょう。 |
情報インフラの整備について |
渡邊
次に、インターネットの料金を含めて情報インフラの整備という点ではいかがでしょうか。 |
杉井
情報インフラといえば、コンピュータや通信回線などハードの整備がひとつの問題ですが、それと同時に、電子政府の問題、例えば申請とか届出を、中央・地方の政府がもっとやってくれないと、企業が情報化を進めても効果が現れないということもあるのではないでしょうか。ようやく電子帳簿法が2年前に施行されました。今まで経理システムを全部デジタル化しても最終的には帳簿を印刷しておかないとだめだったという問題が、少し改善されたわけです。そうした問題や、通信料金の問題ですとか、少し企業の外部環境に対して注文があるのではないでしょうか。 |
浅井
注文ではないのですが、建設省の建設CALS/EC、先ほどからお話しているシステムです。資格申請という、私どもはこういう資格がございますので申請を受け付けてくださいと言って建設省に届ける書類があります。これは関連の9公団にも全部持って行くのですが、これが電子メールに変わり、一昨年からそれでやっております。 昔は各出先に全部社員が持っていったのですが、今は省力化されました。だから会社印や社長印などのハンコはないのです。向こうが確かに受け付けましたというものを受理票という形で返してくれます。これが確かに受け取ったという証拠書類になります。建設CALS/ECでは、ある認証機関がこの資格申請、電子メールは当社のものであると認証しているわけですが、このような認証制度が今後は普及していくと思われます。 今は資格申請のレベルですが、これからは入札制度にも電子入札システムが取り入れられてきますので、ハンコはどんどん無くなっていく方向で進んでいます。反面、支払請求書などの認証はどうなるのか、まだまだハンコなしでいけるまでには、時間がかかるものと思われます。建設省の目標は2004年までに全直轄工事に適用するということになっていますが、認証のレベルには色々な段階があるし、規制緩和やルールの標準化を含め、考え方を変えていく必要があると思われます。 |
杉井
電子化が進んでも、社内でやっぱり判子が必要だとなると、笑っちゃいますね。先日、ある情報先進企業と言われる企業の方と話をしていて、情報化の大きな間違いのひとつは、コンピュータ化すること自体が目的化していることだというのですね。今の決裁制度を何とかコンピュータで処理しようとしたときに、例えば電子印鑑というものを作って、電子印鑑を押せばいいようなシステムに作るという考え方がある。これはおかしいとその方は言うわけです。そもそも印鑑をたくさん並べる必要なんてないのじゃないかと。もともと無駄な作業をそのままコンピュータ化することまで情報化だというのは間違いであって、本来我々が作業をやるために一番効率的にやるにはどうしたらいいか、一番正確に出来て間違いがないのは何かを考えるべきだというのです。業務そのものを改革していくという意志がないと、非常に非効率な業務のあり方がそのまま電子的にシステム化されてしまう恐れがあります。 |
浅井
現在進めている実証実験の中では、例えばナマコンを例にとっても納品伝票の枚数が多いのですが、ハンコは無しで処理しています。最初の伝票と最後の伝票だけ、これはスキャナでとってちゃんと電子化して入れるのですが、それで合計何立方メートルありますということで済むようになってきています。 |
行政への期待 |
杉井
地域に根ざした問題についてはどうでしょう。岐阜という地域の中でインターネットの利用を進めていこうとする時に、こういう点をうまく活かした方がいいとか、逆に地域としては、こういう点がもう少し改善されるといいじゃないかということがありますか。 |
市川
大垣市は、下水道システムに光ファイバーをほぼ全市内的にやっていますが、それは下水道の監視をするために作ったのだそうです。中に入る情報量はそんなに無いと思うのですが、そのためだけに使っている。だから道路を造ると同じ感覚で、税金を使ってそういうネットワークを作って、それをうまく市民の人に開放してくれれば、NTTは大変でしょうが情報化も進むのではないかと思います。 情報ネットも道路と同じように共有財産という考え方でやっていただかないと、NTTさんの独占では困るという気がします。 |
原
情報リテラシーをあげるための行政を希望します。岐阜県で出来ることをお願いします。例えば、岐阜県立の高校や大学の推薦条件の中に、通産省の初級システム・アドミニストレーター試験合格者を推薦で合格するという手法です。これは非常に行政コストは安いはずですよ。しかも、社会が大学入試を頂点としたピラミッド構造の中にあるので、ものすごくインパクトが強いはずなのですよ。たかだか2〜3人のことですから、ぜひやっていただきたい。 |
篠岡
インターネットのホームページの集約も大切です。岐阜県が資料を充実してきれいにしたら、もっともっと広がるのじゃないかなと思います。特にホームページの場合はリンク出来るでしょう。 観光というのは、おそらくどの産業も観光につながると思います。工業でも研修旅行の視察など、いろんな面で工業、商業、芸術など全て有るこの岐阜県というのは、すばらしい土地だと思うのです。だからそれを早く協力して一枚のホームページから全てネットワークしたPRをしないと、もしかしたら他の県が協調して強力に情報をPRしたときは、遅れてしまうと思うのです。 |
浅井
建設業のEDIという世界は、まだまだ遅れているのですよ。ある統計では、普及率30数パーセントになっています。電子メールでやっているのは非常に少ない。それで岐阜県は2007年を目標に、建設に対する受発注システムを構築するということを、先日新聞発表しました。私どもの建設業界は非常に古い体質が残っており、小さなところもあるものですから、そこの間で受発注システムをやらなければならない。これはもうプログラムが絡んでくるわけですよ。そうなってくると岐阜県が考えて受発注システムの骨格や仕様はこうだよというものを早く決めていただけると、下の方はものすごく作業がやりやすくなるんです。まだ先の話ですが、それを全業者が使うわけですから、出来れば統一したものが一番良いわけです。個々のゼネコンが持っているシステムをそのままポンと各協力業者にやるというわけにはいかないと思うんですね。標準化は時代の流れですから、中央の方は中央の方で、色々な業界でもって、だいたい標準ソフトが出来てきて、それを下の方に流していく段階に入っているんですが。やっぱりそういうものは、フォーマットとか、色々早めに決めて流していただけるとありがたいですね。 |
杉井
建設で利用するEDIのプラットフォームとでも言えるようなものを決めてくれると、ソフト自体はそれに従って色々個々に開発することが可能になりますね。その時肝心なのは、最終的にグローバルに通用するものにしておかないと、自分たちにとっては都合いいけれど、将来、外部との取引が出来なくなってしまう恐れがあります。 |
若村
電機工業界の取り組みは、デファクトスタンダード化が進んできましたが、反面ついて来られない企業や職人技を淘汰してしまう業種も出てきたと聞きますので、これでいいのかなというところはありますね。やっていく以上はついていかなければいけないけれど、出来ないところはひどい場合廃業に追い込まれてしまうという非常にドライな部分、それが疎外要件になるというと、行政は社会格差を無くさない様にする義務があるので、この部分はまあ泣いてもらおうかという判断はどうしても出来ないです。そのへんの底上げはやっぱり行政に委ねる必要があるし、それと行政の対処のスピードがいかにも遅い。いかにもお役所仕事という、1年に、7年進んでいるというドックイヤーと言われているところに、年度予算の組み方というのは、どうしても経済社会の速度との整合性がとれてこないですね。そんなところを改善していかなければいけないと思います。 |
原
政府は護送船団方式からフロントランナー方式に切り替えましたと公言していますからフロントランナーになれるように早いところプラットフォームを作って欲しいと思います。 IT革命と言われていますが、まだまだ入り口にたどり着いただけです。インターネットで変わったのは、商業のやり方だけです。まだまだ甘い。 もうすぐ、産業構造の大革命、つまり新産業革命が起きるでしょう。そのときには、「道具としてITを使いこなせるかどうか」ということが個人も企業も生き残るためのキーワードになるに間違い有りません。私も、ぜひ、がんばりたいと思います。 |
渡邊
それでは、これをもちまして座談会を終わらせていただきたいと思います。皆様には長時間本当にありがとうございました。 |
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