介護保険制度下で保険者(市町村)に求められる役割について
仁 科  幸 一
((株)富士総合研究所 経済・福祉研究部主任研究員)


1.介護保険制度創設の特徴と意義
2.介護保険制度の現実 3.保険者機能をどう考えるべきか
 
 
*1社会保険である介護保険は、民間保険会社の保険とは異なり、財源は被保険者の保険料(高齢者と40〜64歳の被保険者)と公費(国、都道府県、市町村)とで構成される。高齢者から徴収する保険料分は、保険事業費の17%程度(高齢者の年齢構成等で地域ごとに一定の調整が加えられる)である。
*2このため、老人福祉制度から給付されていたサービスについては、低所得層にとっては負担増となる一方で、中堅所得層にとっては負担減になる。
*3現時点で厚生省が示している案では、最も要介護度の低い要支援で月額6.4万円で、以下、要介護1は17.0万円、要介護2は20.1万円、要介護3は27.4万円、要介護4は31.3万円、要介護5は36.8万円となっている。なお、入所介護サービスについては、これとは別に、施設種類、要介護度ごとに介護報酬が定められている。
*4厚生省では、介護に関する相談やサービスコーディネートを行う機関として、在宅介護支援センターの整備をすすめてきた。この事業の主体は市町村であるが、業務は社会福祉法人等に委託されることが多い。現実にはコーディネートの範囲が委託法人の事業に限定されることが多く、事業を委託する市町村自体が相談やサービスのコーディネートの必要性に関する認識を欠いたまま整備をすすめてきたため、一部の先進的な自治体を除けば、当初のねらい通りに機能しているとはいいがたい状況にある。
*5前述のように利用者負担は10%であるので、介護型ホームヘルプが402円、訪問看護は830円ということになる。
*6経済学の教えるところによれば、自由競争市場の下で需要と供給の均衡が崩れたとき、価格メカニズムが機能して需給ギャップが調整される。ところが介護保険制度では、介護サービスの価格が公定価格であるためにこれが需給に応じて変動することはなく、価格が上昇して需要を抑制することも供給を促進することもない。その結果、社会主義諸国でみられたように、待ち行列(待ち時間という形でコストを支払う)が発生するだけではなく、ヤミ市場(公定価格以外の費用負担−例えば寄付の強要など)が形成されるおそれも否定できない。
*7ケアマネージャーが属する事業者のサービスを優先的にコーディネートすることは、申し送りなどが円滑に行われるなどの利点もないわけではない。問題は、事業者の稼働状況にあわせてケアプランが作成されたり、その事業者が持たないサービスへの利用者のアクセスが制約される場合である。
*8読売新聞1999年10月18日夕刊及び1999年10月22日朝刊(いずれも東京本社版)
 
 


情報誌「岐阜を考える」2000年
岐阜県産業経済研究センター


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